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[ 短編集(分類不能) ] 殺人鬼(角川文庫版) 金田一耕助シリーズ |
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横溝正史 | 出版月: 1976年11月 | 平均: 6.50点 | 書評数: 8件 |
角川書店 1976年11月 |
KADOKAWA 2006年11月 |
No.8 | 6点 | ALFA | 2023/10/17 06:47 |
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横溝の雰囲気を軽く楽しむにはいい。
表題作はスリラーテイスト。 一方「百日紅の下にて」は本格味。典型的な過去の犯罪もので、こちらの方が出来はいい。 |
No.7 | 6点 | ことは | 2023/10/08 00:06 |
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「百日紅の下にて」が世評が高いのは納得。他3作とあきらかに雰囲気が違う。
他3作は、軽く読めるエンタメ文体で、たしかに楽しく読めるが、強い印象は残さなかった。 「百日紅の下にて」は、開始からじっくりと情景描写して雰囲気を出し、ゆるりゆるりと、昔の事件の質疑に入っていく。これは印象深い。事件の質疑もサスペンスフルで、「ジェミニー・クリケット事件」を思い出させた。(本作のほうが書かれたのは先なので、私が読んでいて思い出させられたというだけですが) ただ、ミステリ的つくりは、それほど凝っていないと感じた。それより、背景となる人間関係、特に少女を育成するところが、戦前の横溝の耽美な作品を想起させる「妖しい雰囲気」で好み。 「百日紅の下にて」で、ひとつ残念なのは、ある人物の素性を明かすタイミングがなかなか楽しいのに、今の角川文庫のパッケージングでは効果がないことかな。知らずに読んだら、おおっと思うのに。 まあ、その素性がわかっていても、最後の1行はニヤリとさせられるので、ファンへの目配せも効いた、良作です。 |
No.6 | 6点 | ボナンザ | 2021/09/20 20:17 |
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残りの三作も悪くはないが、百日紅が突出しているのは確か。 |
No.5 | 6点 | 蟷螂の斧 | 2021/04/21 17:31 |
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①殺人鬼 6点 おおよその筋は予想できる。金田一の推理もほぼ推論で終始
②黒蘭姫 4点 黒蘭姫と呼ばれる万引き常習犯が殺人? ③香水心中 6点 善人がはずみで二度も殺人を犯してはいけません(苦笑) ④百日紅の下にて 8点 前半は乱歩+谷崎潤一郎風でいい雰囲気、後半は毒入り事件を解くという展開となり、ややチグハグな感じを受けましたが真相で挽回 |
No.4 | 7点 | メルカトル | 2020/12/13 22:43 |
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ある説によると、我々の周囲には五百人に一人の割合で、未だ発見されていない殺人犯がいるという。あなたの隣人や友だちは大丈夫ですか? あの晩、私は変な男を見た。黒い帽子をかぶり黒眼鏡をかけ、黒い外套を着たその男は、片脚が義足で、歩くたびにコトコトと無気味な音をたてる。男は何故か、ある夫婦をつけ狙っていた。彼の挙動が気になった私は、その夫婦の家を見はった。だが数日後、夫の方が何者かに惨殺されてしまった! 表題作ほか三篇を収録した横溝正史傑作短篇集。
Amazon内容紹介より。 居並ぶ名作長編と比較すると見劣りするのは確か。それは短編ならではの物足りなさではなく、物語の裏に隠されたドロドロした人間関係がやや希薄であることに起因すると思います。それでも横溝らしさは随所に見られ、陰鬱たる事件の数々を中和するのが金田一耕助の存在であるのも何ら変わりはありません。『百日紅の下にて』以外はそれほどトリッキーという訳ではなく、スリラー寄りの本格ミステリではないかと感じます。 何故名作『百日紅の下にて』を表題作に持ってこなかったのか不思議でなりませんが、『殺人鬼』の方がインパクトがあるという理由だったのでしょうか。 実は一年ほど前だと思いますが、『百日紅の下にて』がBSでドラマ化されており、それを観ていた私は横溝正史がこんな作品も書いていたのかと云う衝撃を受けたものです。それを思い出してこの度この作品目当てで購入に至りました。流石に『横溝正史が語るわたしの十冊』に選ばれるだけあり、二転三転する展開と眩暈がするほどのロジックには敬意を表するしかありませんね。この作品は紛れもなく名作であると断言しても良いと思います。 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | 2011/11/03 10:40 |
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金田一耕助登場の作品集。
なかなかバラエテイに富んだ作品が並んだなぁという印象。 ①「殺人鬼」=ある推理作家の目線で事件が描かれる、という当時の作品でよくある趣向。結局、「殺人鬼は誰なのか」が大きな謎となるわけですが、まぁ「こうなるよな」という結末。 ②「黒蘭姫」=デパートに日毎現れ、貴金属を万引きする黒衣の美女。そして、突如発生した2つの殺人事件。金田一が示した解答は、いわば「不幸な偶然」っていうこと。でも、あの女性には罪はないのか? ③「香水心中」=アリバイトリックがメインだが、今読むといかにも古臭いトリック。「動機」もなぁ・・・。女性実業家一家を軸に、なかなか魅力的な設定なのですが・・・ ④「百日紅の下で」=名作と評される短編。確かに雰囲気はよい。ただ、毒殺の「くだり」は読者には推理不可能ではないか? ラストが印象的。この後、金田一は「獄門島」へ向かっていったんだねぇ・・・(へぇー) 以上4編。 やっぱり、名作長編に比べると2枚も3枚も落ちる印象。 短編らしい切れ味に欠ける作品という評価になっちゃいますね。 ④も名作と言うほどのものは感じなかった。 (どれも、戦後すぐという時代背景を感じさせる作品) |
No.2 | 8点 | りゅう | 2011/10/15 18:21 |
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再読です。合計4編の短編集ですが、「百日紅の下にて」が断然すばらしく、これ以外の3編は設定に無理があり、この3編だけだと5点ぐらいでしょうか。
「殺人鬼」 話の展開や伏線の盛り込み方はなかなかですが、ある人物が取った行動は全く理解不能で、真相はあまりすっきりとしていません。 「黒蘭姫」 偶然が重なって複雑な事件となっていますが、犯人の取った行動や心理はちょっと理解できません。 「香水心中」 複雑な真相ですが、各人の取った行動をみると、無理があると感じる部分があります。真相を知ってみると、犯人のみならず、金田一耕助や等々力警部にとってもゾッとするような状況があったことがわかります。 「百日紅の下にて」 金田一耕助が戦地で戦友から聞いた話だけをもとにして推理を組み立て、戦友の遺志に従って、ある人物に真相を伝えにいく話。誰が青酸カリを盛ったのかという謎解きですが、シンプルにして魅力的な状況設定、金田一耕助の論理的な推理(若干臆測も入っていますが)、美しくも悲しい真相と、短編推理の傑作と呼ぶにふさわしい作品です。 |
No.1 | 8点 | monya | 2010/11/22 18:35 |
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あまり話題にならないものの中々高品質な短編が揃った一冊。
本格ミステリというよりも、通俗スリラー的な要素の強い表題作、当時のデパートを舞台にした金田一もののイメージとは遠いがよく出来た黒蘭姫、等々力警部と金田一のかけあいが楽しい香水心中……となってますが、やはりは白眉は百日紅の下にてでしょう 事件自体は過去のもので、登場人物も金田一と語り手のみ。 ポツリポツリと話し出された事件の様子から真相が現れ、颯爽と去っていく金田一…… この百日紅の下にてだけでも買う価値があります |