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[ 本格/新本格 ]
金田一耕助の帰還
金田一耕助シリーズ
横溝正史 出版月: 1996年05月 平均: 5.50点 書評数: 4件

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出版芸術社
1996年05月

光文社
2002年01月

No.4 5点 E-BANKER 2022/10/29 12:19
金田一を探偵役とする短編のうち、後で長編化されるなど手を加えられた作品を集め、光文社が編んだ短編集。
角川文庫など別の版元で読まれた方も多いのではないか?
本作は1996年に刊行されたもの。

①「毒の矢」=都内の新興住宅地で住人の醜聞をバラすぞという脅迫状が届く事件が頻発する。隣の奥さんとのレズ関係をバラと脅された関係者たちが集まった舞台で起こる殺人事件。しかも被害者の背中にはトランプ柄の刺青が・・・。トリックとしてはかなりラフというか大雑把なもの。脅迫状の使い方も、わざわざそんな遠回しなことしなくても・・・という気がした。
②「トランプ台上の首」=隅田川沿いのマンションの住人へ総菜を船で売りまわる男が発見した生首。被害者はストリップダンサーだった、といういかにもの時代設定。このトリックも、まぁいかにも昭和初期だなぁーというもの。都合よく腹違いの〇〇なんかが登場すると、ちょっとげんなりするよなぁ。
③「貸しボート13号」=ボートの上で発見された男女の死体。二人とも首がちぎれかかっているほか、絞殺と刺殺の両方が加えられていた。この真犯人は不憫だな、というかこの動機はなかなか首肯し難い気がするし、なぜ死体に手を加えたのかに関してもリアリティに欠ける。
④「支那扇の女」=警官の前で自殺未遂を企てた女。彼女は自身が夢遊病に犯されていると告げ、更に自分は「毒婦・八木克子」の生まれ変わりだと言った。トリックというか事件の構図としては単純なもの。金田一が告げたある齟齬については、「そりゃ分らんよ」という気がする。
⑤「壺の中の女」=都内の高級住宅地で起こった惨殺事件。事件の直前、被害者はある壺を譲り受けていた。その中には、曲芸師の女が潜んでいたのか? これもプロットは単純。曲芸を目くらましに使い、真相は単純な愛憎劇。
⑥「渦の中の女」=高島平団地を思わせる新興団地で起こった殺人事件。そしてまたも横行する暴露手紙。その内容はまたもレズ関係の告発!(①と一緒じゃん) この真相は正直つまらん。
⑦「扉の中の女」=壺。渦の次は「扉」か・・・。銀座の裏通りで発生した殺人事件。凶器はピンで首筋をブスっ! ただこれも小品かつ地味。
⑧「迷路荘の怪人」=もちろん「迷路荘の惨劇」の短編版、というか2回改稿されているということでは原型と言った方がいい。正直、原型版は何の面白味もない駄作である。ただ、片腕の男や鍾乳洞の冒険というエッセンスの萌芽は見受けられる。

以上8編。
割と著名な作品が並んでいる印象はあるけど、どれも改稿前のせいか、どうもピンボケ気味で面白味に欠ける印象が強い。
作者の「改稿癖」はやはり本物ということなんだろう。
どれも改稿を繰り返すことで、作品が熟成され、名作に昇華していく(当然しないものもあるけど)。
ということかな。
プロットとしては似たようなベクトルの作品が多く、逆に言えば「作者のくせ」というのがよく分かる。つまりは「美女には気をつけろ!」ということだ。

No.3 5点 りゅう 2011/11/01 19:06
 いずれも後に加筆されて長編ないしは中編となった8作の短編集です。長編化されたもので私が読んでいるのは、「渦の中の女(白と黒)」と「迷路荘の怪人(迷路荘の惨劇)」の2作のみですが、どちらも短編と長編では真相を若干変えています。「迷路荘の怪人」は作品の構想が雄大であり、短編よりも長編向きの作品だと感じました。短編ミステリ集としてみると、各作品とも面白いアイデアが含まれていて真相も意外ですが、ページ数の関係もあって説明不足なところがあり、謎解きとしては消化不良といった印象です。一番面白いと感じたのは「貸しボート十三号」でした。
「毒の矢」
 密告状の扱いや殺人トリックは面白いのですが、密告状に関してある人物がしたことと目的との結び付きが弱く、わざわざこんなことをするかなあと思いました。
「トランプ台上の首」
 首のない死体ならぬ、胴体のない死体です。真相を推理する上で必要なある事実が後出しですが、その事実を示すと推理が容易になってしまうので仕方がないのでしょう。
「貸しボート十三号」
 首切りを途中でやめた状態で発見された男女の死体、どうしてそうなったのかという謎解きです。
「支那扇の女」
 金田一耕助はある事実を知っていて、犯人のミスを見抜きますが、現代の読者でその事実を知っている人はまずいないでしょう。婉曲的で確実性にかける動機に基づく犯行ですが、それが意外性につながっています。
「壺の中の女」
 金田一耕助と等々力警部がテレビで観た曲芸の場面にヒントが示されています。
「扉の中の女」
 こんな勘違いをするものでしょうか。死体を移動させた理由はなかなかでした。

No.2 5点 おしょわ 2010/01/24 22:54
のちに手が加えられた作品の原作(?)集です。
特に手を加えないくてもいいような作品が多いです。

No.1 7点 シュウ 2008/12/01 01:06
後に長編化や中篇化されることになる短編ばかりを集めた作品集です。基本的に長編の方を先に読めば本書はいらないとも言えるのですが、
現在角川書店版では「白と黒」と「迷路荘の惨劇」以外は絶版ですし、古本屋で売ってる旧版はビビリの僕には
あの妖気溢れる表紙の本を買って本棚に置く勇気が無いので本書は中々重宝してたりします。
基本的に小品が多いのですが、「毒の矢」はヒロインのボンちゃんが可愛いのでお気に入りです。
「迷路荘の怪人」も長編版とは犯人が違うので新たな気分で犯人当てを楽しめますし、グロい場面も出てこないので爽やかに楽しめました。


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