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[ 短編集(分類不能) ] 鬼火 横溝正史ミステリ短編コレクション2 |
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横溝正史 | 出版月: 2018年01月 | 平均: 5.67点 | 書評数: 3件 |
柏書房 2018年01月 |
No.3 | 8点 | クリスティ再読 | 2022/03/19 16:42 |
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「本陣」やら「獄門島」やらと同じくらいに、実は評者は「蔵の中」や「かひやぐら物語」や「貝殻館綺譚」といった横溝耽美ミステリが大好きなんだけどなあ...いやなかなかそういう趣味が分かって頂きづらい世の中なのかしらん。
同じ耽美とはいえ、乱歩の耽美とは肌合いが結構、違う。乱歩のねちっこい語り口で示されるエロスに満ちた怪奇譚と比較すると、横溝の方がずっと「きれい」で「あはれ」な話だ。同じ美少年趣味でも、ゲイ風味の強い乱歩の視線よりも、横溝は女性が美少年に向ける視線に近いように感じたりもする。 するとああ、鏡の中には忽然として一個不可思議な人物が浮び出して来ました。それは男とも女ともつかぬ、世にも妖しく、また美しい面影でありましたが、争えないもので、こうして見ると私の顔は、おそろしい程亡くなった姉の小雪に似ています。しかも尚それよりも数等の美しさなのです。 「蔵の中」で主人公が女装する場面だけども、ナルシスティックなあたりが強く出るのが、乱歩との違いだろう。こんなセピア色にくすんだ「蔵の中」の世界が、評者は大好きだ...(あと、白馬の王子様な「蝋人」もいいな~) いやこの妖異耽美の世界が、まさに戦前「探偵小説」の懐の広い味わいなんだよ。(「六本木美人」、分かる人いるかしら?) 「鬼火」の湖畔アトリエ描写とか、意外に「犬神家」を連想するところが多いのは、そりゃ舞台を戦前に横溝が療養生活を送った諏訪に求めているから、なんだけども、佐清マスクとか入れ替わりとか、題材流用もしていたりする。そういえばいがみ合ういとこ同士、だってそうか(苦笑)金田一だけ読んでいると、横溝正史って作家はわからない、とも思う。 まあこの柏書房「横溝正史ミステリ短編コレクション」は、金田一・由利三津木モノを除外した短編だけで編んだアンソロ、というのもあるけども、事実上角川文庫の「鬼火・蔵の中」と「塙侯爵一家」の2冊の合本に「鬼火」の手稿版を収録した事実上の戦前短編傑作選(「真珠郎」は欲しいが...)になる。とはいえ、中編「塙侯爵」はピカレスク?となるけども腰砕け。「孔雀夫人」はミステリっぽいけども、大した作品ではない。 「横溝ミステリ」の幅の広さを、皆さんにも知ってもらいたい。 |
No.2 | 6点 | 蟷螂の斧 | 2020/03/02 21:08 |
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江戸川乱歩は「彼(横溝)は谷崎潤一郎の作品を愛することが深く、意識してか無意識にかその着想を借り来ることが屢々であるが、例えば「鬼火」と「金と銀」と、「面影双紙」と「或る少年の怯れ」と、「蔵の中」と「恐ろしき戯曲」とには、一部ではあるがその明かな類似を見るのである」とやや批判的な見解を述べています。一方、高木彬光は「鬼火」は世界に誇る最高傑作とべた褒めで、この差はどこに?(笑)。
「鬼火」と「金と銀」の共通点はライバル同士の画家が一人の女性を取り合うというものです。あえて言うならば「本歌取り」に該当するのでしょうか。 なお、「水車館の殺人」(綾辻行人)が本作「鬼火」の盗作という評がありました。筋は違うのですが、共通事項は、画家、仮面、犯人の決め手(○○)位かと思います・・・。また、ミイラを扱った作品に関し、古典でミイラ登場の作品が既にあるというだけで二番煎じ扱いされてしまうこともあるような。まあ、人によって基準がまちまちなのは致し方ないことですが・・・。(敬称略) |
No.1 | 3点 | レッドキング | 2019/03/31 08:50 |
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ミステリとは言えないだろが、妙に印象に残っている。おそらく横溝は「陰惨」で「耽美」な物語書きたかったんだろうが、そこまででもないんだな。 |