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[ 本格/新本格 ]
白と黒
金田一耕助シリーズ
横溝正史 出版月: 1961年01月 平均: 5.40点 書評数: 10件

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東都書房
1961年01月

講談社
1970年01月

角川書店(角川グループパブリッシング)
1974年05月

講談社
1975年01月

KADOKAWA
2002年02月

No.10 5点 文生 2021/09/27 20:58
社会派ミステリ全盛の時代に発表された作品で、その影響か舞台は古い因習が残る田舎の農村でも大富豪の屋敷でもなく、集合団地という金田一シリーズとしてはかなり珍しい作品になっています。

そうした現代的な舞台でコールタール漬けの死体が発見されたり、どんぐりころころの歌詞になぞらえた童謡殺人が起きたりするのはそれはそれで目新しい感じがして悪くありません。

ただ、話が長い割に著者の代表作と比べると盛り上がりに欠け、ミステリーとしても特筆すべき点がないので満足度は低め。

No.9 5点 ボナンザ 2021/09/26 18:32
中盤くらいまでは面白いが、後半や真相がややしょぼいのが残念。

No.8 6点 人並由真 2021/09/09 15:02
(ネタバレなし)
 昭和35年10月の東京。金田一耕助は、かつてバー「スリーX」のホステスだった「ハルミ」こと緒方順子と再会する。耕助が聞くところによると、順子は今は保険外交員の須藤達雄と結婚して、大型ニュータウンの「日の出団地」に入居したばかりだった。だが新造の団地に、最近、匿名の卑猥かつ悪質な怪文書が続発し、その流れで達雄が家出してしまった、さらには団地内で自殺未遂事件まで起きているという。そして順子の話を聞いている耕助の脇で、いきなり怪異な殺人事件が発生した。

 昭和35年11月から翌年12月まで共同通信系の新聞に連載された、原稿用紙で1000枚を超える大長編。
 たしか持っているはずの角川文庫が見つからないので、先日、古書市で250円で買いなおした同じ角川文庫版(昭和56年の28版)を読む。
 怪文書の断片らしきものに書かれたキーワード「白と黒」の意味が最後まで謎になるが、評者は少年時代に大井広介の「紙上殺人現場」の本作のレビューでネタバレをくらっていた。当時の大井いわく「こんなの誰でも知っているだろ(大意)」であった。
(ただし大井の物言いは実際には若干の幅があったと記憶しているし、このネタバレを受けても、犯人もまるでわからないが。)
 そういう意味ではやや緊張感を欠いた読書で、角川文庫で530ページ近い長大な本文を「長い、長いよ」と言いながら読み進める。
 それでもさすがに円熟期のヨコセイのこと、リーダビリティは最高で、結局はほぼ徹夜で一晩で読了した(笑・汗)。

 冒頭から『黒猫亭事件』のY・S先生が再登場。イニシャルとかプロ野球観戦好きというキャラクターからしてもちろん作者の分身ではあろうが、小説家ではなく詩人という設定は(たぶんこちらが忘れていたのだろうが)軽く驚いた。ちゃんと(タイトルは書かないものの)『黒猫亭』の話題に触れる(ネタバレではなく)のも楽しい。ただしこの辺のことがミステリ的にあまり意味がないのは、作者が何かの仕掛けを狙いながらも、力及ばずだったのか? という感じだが。

 今回の評者は前述のように、良くも悪くもキーワードの意味はある程度教えられていた、しかし犯人はわからない、という、ある意味ではややイージーモードで、フーダニットの謎解きを楽しめる立場。それゆえ多数登場する容疑者(みな日の出団地周辺の人間)のバラバラの動きが、それぞれ興味深く読める。
 なんか連載期間を延ばすため、エピソードを増やしたんじゃない? とつまらぬ勘繰りをしたくなったところもあるが、怪文書の主の捜索や、素性不明のキーパーソンの正体の探究など、話の軸は当初からぶれないで終わるので、実のところ妙な継ぎ足し感はあまり無かった。作者の構想はかなりしっかりしており、話術や細部の膨らませ方で大長編を築いたのだと思える。

 それでもさすがに後半には、長い、長い、と、またぼやきたくなるが、あとの方になると戦後の時代色を感じさせる小説的な面白さ、さらにはダメ押し的な新たな事件まで起きてサービスはなかなか。犯人も結構、スキをつかれた感じで意外性はあった。
 あとあまり書けないが、耕助シリーズというか、名探偵の連作ものとして、ちょっとオモシロイギミックが細部に用意されている。この辺も評価の対象か。

 長い、長い、の不満だけで終わるなら評点は5点(一番テンションが低い時の気分では「つまらなくはないが面白くもない」という感触)。でも最終的には、もうちょっと評価がアップ。しかしまあ7点はあげられないなあ、というところで、6点の上の方。
 耕助ファンでほかの主要な長編を読んじゃったなら、ヒマな時に手にとってみるのもいいんじゃないかとは思う。

No.7 4点 E-BANKER 2014/02/11 01:03
1961年発表の金田一耕助シリーズ長編。
岡山の山奥ではなく、東京都内の新興集合住宅という舞台設定が珍しい作品。

~平和そのものに見えた団地内に、突如怪文書が横行。プライバシーを暴露する陰険な内容に、住民たちは戦慄をおぼえる。その矢先、団地内のダスト・シュートから真っ黒なタールにまみれた女性の死体が発見された。眼前で起きた恐ろしい殺人事件に団地の人々の恐怖は頂点に達する。謎のことば「白と黒」の持つ意味とは? 団地という現代都市生活特有の複雑な人間関係の軋轢と葛藤から生じる事件に金田一耕助が挑戦する~

およそ金田一耕助シリーズとは思えないような雰囲気。
「獄門島」や「犬神家の一族」など、戦前戦後の地方の暗くて重い雰囲気漂う舞台設定・・・が本シリーズの定番だとしたら、本作ではそれに全く当て嵌らない。
その辺り、作者が方向転換というか時代性に合わせようと試みた作品なのだろう。
(ただし、それが成功しているとは言い難いのだが・・・)

事件の鍵を握るのは、紹介文のとおり『白と黒』という謎のことばで、最終章で金田一の口からこの意味が明らかにされてやっと事件の構図が鮮明になる。
逆にいうと、中盤から終盤にかけても今ひとつ事件の輪郭がはっきりしない展開が続くので、イライラさせられるかもしれない。
タールで真っ黒にされ、しかも顔を潰された死体、などというと作者お得意のトリックかなと思わされるが、その真相もちょっとなぁ・・・なにかすっきりしないのだ。

金田一の役立たず(?)振りは本作でも遺憾無く発揮されているというか、さらに酷くなっている。
真犯人の影が薄すぎるというのもいただけない。
というわけで、なにか作品のプロット自体が煮詰まってない印象を受けた作品だった。
(「社会派を意識」っていう感じもあまりしなかったなぁ・・・)

No.6 7点 2013/11/24 22:10
岡山ものでなくても旧家の屋敷等で起こる暗い事件が多い作者にしては珍しく、新築の団地を舞台として現代的(1960年当時の)な明るい雰囲気を意識したことが明らかな作品です。顔のない死体も、新棟建設用のタールをかぶせられるという凄惨ながらも現代的手法です。そのことがいわゆる「社会派」と直接結びつくとは思いませんが、時代に即したリアリティを持つことは間違いありません。ラスト近くなるまではじっくり型であり、ハウダニット要素がないことも含め、カーよりもむしろクイーンを思わせる構成になっています。『犬神家の一族』と何となく共通する事件構造ですが、本作の方が犯人は意外だと思います。
ところで、匿名の手紙に書かれた「どんぐりころころ」の歌詞が間違っているのは、手がかりなのではないかとも思ったのですが、単に作者の勘違いでした。ただし、この手紙については別の点でちょっとした意外性があります。

No.5 5点 りゅう 2011/10/02 09:26
 再読です。猟奇性はなく、サスペンス性も抑え目で横溝作品としては地味な作品。金田一耕助の鮮やかな推理で解決するのではなく、捜査の進展に伴って徐々に真相が明らかとなっていく作品で、本格ミステリというよりも社会派の側に若干シフトしたような印象です。団地内を横行する怪文書、コールタールで顔が焼けただれた死体、被害者の謎の過去、被害者を訪問したと思われる人物の失踪、容疑者とみなされる人物の逃亡、怪文書に書かれた「白と黒」の意味など、複雑な事件に見せることには成功していますが、真相を読むとうまくまとめてはいると思いますが、想定の範囲内というか、特に驚くような箇所はありません。「顔のない死体」のバリエーションとも言えますが、ストレートすぎる真相です。登場人物の過去など、人間関係をちょっとゴチャゴチャさせすぎている感じがします。捜査を進展させるために、金田一耕助がある策(いたずら)を講じているのが興味深いところです。

No.4 5点 nukkam 2011/01/25 14:49
(ネタバレなしです) 1960年発表の金田一耕助シリーズ第24作の本格派推理小説ですが当時台頭してきた社会派推理小説を意識したような作品でもあり、集合住宅とその住人たちの人間関係を重厚に描いた異色作です。金田一耕助シリーズでこのような都会風な作品が書かれるとは驚きです(都会風といっても洗練とかお洒落とかとはちょっと違いますが)。シリーズ中最も大作のボリュームですが人間関係を複雑にし過ぎて謎解きのサスペンスが少ないのが惜しまれます。

No.3 4点 spam-musubi 2009/06/23 14:21
クライマックスのないまま終わってしまったような印象。
「白と黒」という言葉にああいう意味があるというのも、
比較的常識なの?わたしは全く知らなかったので
読んでもピンと来なかったです。

No.2 6点 マニア 2009/02/03 23:27
設定は1960年、舞台は高度経済成長期の集合住宅と、当時の時勢が窺えて面白い。特に、そこで暮らす少年少女の心の葛藤の描写は面白かった。

物語はかなり緻密に構成されていて感心できるのだが、細かすぎてテンポが悪くなってしまっている感じがする。特に、最初の事件から2番目の事件が発覚するまで長すぎて、少し退屈だった・・・。

それでも、複雑に絡み合う関係者の人間関係と思惑。そして、それらを紐解いていった結果、明らかになった意外とシンプルな真相。
やはり、楽しめた!

No.1 7点 zedd 2008/11/10 03:43
長いけどその分面白い。伏線の張り方もいい。


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