皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
|
[ 本格 ] 火刑法廷 |
|||
|---|---|---|---|
| ジョン・ディクスン・カー | 出版月: 1955年02月 | 平均: 7.20点 | 書評数: 40件 |
![]() 早川書房 1955年02月 |
![]() 早川書房 1976年05月 |
![]() 早川書房 2011年08月 |
![]() 早川書房 2011年08月 |
| No.20 | 7点 | アイス・コーヒー | 2014/02/07 17:53 |
|---|---|---|---|
| カーの最高傑作として名高い「火刑法廷」。女毒殺魔のブランヴィリエ伯爵夫人をテーマに、不可能犯罪と怪奇的な結末を描いている。
着想は素晴らしい。全体像のつかめない恐怖に困惑する主人公の心境の変化や、極めて現実的、かつ冷酷な警察の捜査。それにしても、自分の結婚相手の過去の犯罪を疑っていくミステリは比較的多い。個人的にはクリスティの某作品が好きだが…。 肝心の二つの消失トリックは、目立ったものではなくその論理的な解決を楽しむべきだと思う。この点に関しては「不可能が可能になる」ことが醍醐味だからだ。しかし、肩すかしを感じないでもない。 そして結末。どんでん返しというよりは、純粋な演出だととらえた。それに本格としては詰めが甘い気もする。傑作であることに間違いは何のだが、読者である自分がこの本の謎に飲み込まれてしまうような奇妙な読後感だ。 結論は、本作からカーに入るべきではない、という事。作品自身の灰汁が強すぎる。そういう自分も「三つの棺」から入ったのは失敗だった気がしている。 |
|||
| No.19 | 9点 | おっさん | 2013/12/10 16:04 |
|---|---|---|---|
| カーの『火刑法廷』と言えば、筆者の世代には――
ポケミス(西田政治訳)で絶版だったものが、松田道弘氏の蠱惑的な解説つきで、昭和五十一年(1976)に待望の改訳(小倉多加志訳)で甦った、あのハヤカワ・ミステリ文庫版の印象が強いのです。 でも今回は、同文庫の、2011年の〔新訳版〕を試してみました。 ミステリアスな女性のポートレイトを描いた、陰影のあるカバー・デザインは、ムードがあって悪くありません。トール・サイズの文庫で活字が大きいのも、老いてきた目には、まあ有難い。これまでの版では省略されていた、原注(参考文献を挙げたり、謎解きに照応する該当箇所を明記したり)が読めることにも感謝します。 でも肝心の翻訳(加賀山卓朗)は―― 全体としては、読みやすくなっていると思います。しかし、ところどころ首をかしげる表現が目について・・・ 結末近く、「○○○○は膏薬を使うまで、生身の人間だった」(p.376)というあたりでは、意味をとりかねて、活字を追う目が止まってしまいました。このくだりは、じつは照合した旧・小倉訳でも、論理的にヘンな文章になっていたので、おそらく原文解釈が難しいのだとは思います。 しかしだからこそ、「新訳」は、作者の意をきちんと細部までくみ取りそれを日本語に移し替えた、決定訳であって欲しかった。 『火刑法廷』は、不死、もとい不滅の作品なのでw かりに将来、この版が絶えることがあっても、復活することは間違いありません。十年先、二十年先かもしれませんが、そのさいはまた違った訳で、解説(現行の、あらすじと感想を短くまとめたものは、業界人のゲスト・エッセイでしかありません)も差し替えて出すことを考えてみてください、早川書房様(あ、重要な舞台となるデスパード邸の、二階平面図を作って載せるようなサービスもあれば、作品理解を助けるうえで、なお良しですw)。 さて。 さきほど「不滅の作品」と書きました。好きか嫌いかと聞かれれば、正直、筆者の大好きなカー作品ではないと答えますが(カーはもっと大らかでないと。これはガチになりすぎ)、探偵小説と怪奇小説の狭間にあるトワイライト・ゾーン、そこへ読者を取り込む危険な営みは、未来永劫色あせることなく、後続の作家たちをも刺激し続けるだろうと信じるからです。 単に最後の数ページで小手先のオチをつけたのではなく、作品が一幅の騙し絵になるよう、過程のストーリーに手練手管が施されていることは、再読するとよくわかります。 通常の本格ミステリらしく、説明をつける要素(だけを見ると、本格ものとしてさほど傑作とは思えないという意見は、一理も二理もありますが、それでも地下の霊廟から遺体を消して見せる手際は、筆者にはトリックの教科書のように思えます)と、あえて説明をつけないで残す部分の匙加減。 あくまで“本格”を根底に踏まえながら、作品全体のスタイルで勝負した(ちなみに筆者のジャンル投票は「その他」です)、カーの一世一代の冒険を、評価しないわけにはいかないでしょう。 ただ。 ここまで新機軸を狙って本気モードになるなら―― 導入部で「読者や私とさして変わらないエドワード・スティーヴンズは(・・・)」とか、「スティーヴンズは、読者や私と同様(・・・)」といった、作者がしゃしゃり出て登場人物を説明するような、古風なナレーションは(「これは作り話です」と宣言しているようなもので――その意味では、原注の大半も――シリアスな本書のトーンには合わない)やめたほうがよかったですね。 とくに p.10「いまスティーヴンズ本人も、事実を述べるのは楽だと認めている。表にしたり並べ替えたりできる事柄を扱うのは安心だと」というあたりは(ちなみに、旧・小倉訳では、ここは「そして現在、スティーヴンズ自身、事実のままを述べ、分類したり整理したりできるものだけを処理する方が助かると言っているのである」)、カーの筆がすべった感があり、そのせいで、暗示的な「エピローグ」とのあいだに、若干、齟齬が生じているようにも思えます。 |
|||
| No.18 | 6点 | 空 | 2013/12/02 23:29 |
|---|---|---|---|
| miniさんの意見に賛成。miniさんは、カーに対する評価は私と近いと書かれていたことがありましたが、ホントにそうなんですね…
この評価になったのは、写真の件から始まる怪しげな雰囲気に加え、何と言ってもその雰囲気があるからこそのごく短い最終章のさりげなさが好きだからです。新聞が床に落ちてめくれ…なんて、この感覚がいいのです。この部分は、説明すればするほどバカバカしくなってしまいます。そのいい例が本作の最終章を意識したという高木彬光の某作品。 最終章がなくて、謎解き要素だけに関して言うならばその高木作品の方がむしろよくできているぐらいです。墓場からの死体消失トリック説明は、そんなものかというところでした。またもう一つの魔術的現象は、まず部屋周辺の見取図があるべきですし、カー自身が以前に書いた某作品のネタの使い回し、しかもその作品に比べて工夫が足りないとしか思えないのです。 |
|||
| No.17 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2013/04/12 11:25 |
|---|---|---|---|
| (東西ミステリーベスト10位)ラストのV評決が評価されているようですが、興ざめでしたね。オカルトチックな雰囲気と、現実的なミステリーの解決が融合されていてよかったのですが・・・。 | |||
| No.16 | 9点 | TON2 | 2013/01/16 18:34 |
|---|---|---|---|
| ハヤカワ・ミステリ文庫
探偵小説かと思えば怪奇小説、怪奇小説かと思えば探偵小説という作りになっていて、こうした作風が1930年代にすでになされていたことに敬意を表します。 最後の衝撃の恐ろしさは最高です。 |
|||
| No.15 | 7点 | ミステリ初心者 | 2012/08/16 11:21 |
|---|---|---|---|
| ネタバレあるかもしれません。
引きが最高ですね。紹介文を読んだとたんに買いましたw。 ラストについて、ミステリは本の中で成り立っているなら良いです。問題は、その結末でないと説明がつかない作品かどうか?ということ。ちょっと覚えてないです・・・再読したらまた評価しなおします。 ぶっちゃけると、おそらくは、作中作・夢オチとまったく同じです(で、いいはず)。そうでなければならない理由がすべて。 作中作・夢オチはなんでも成り立ってしまうから |
|||
| No.14 | 6点 | 虫暮部 | 2011/11/30 16:10 |
|---|---|---|---|
| 新訳版で読んだ。
やや大仰でまわりくどい感じがあり、それは作風なのだろうが、トータルで見て謎の大きさに対して話が長過ぎてバランスが良くない印象ではあった。 扉のトリックは弱い。つまり、鏡を利用したネタだという予想はすぐ付くけれど、文章では現場の細かい位置関係は把握しづらいので、説明されてもピンとこない。ああそういう設定なんですねという程度。 “毒殺魔の写真と妻がそっくりな理由” には拍手。 とはいえ全てを台無しにする(褒め言葉)ラストは面白い。 |
|||
| No.13 | 7点 | toyotama | 2011/10/13 18:02 |
|---|---|---|---|
| 読んでるあいだ、また読み終わった直後、
「なんだこの話?」 って思ったんですけど、なんか後を引くような話でしたね。 たぶん、再読すると違った感想になると思います。 |
|||
| No.12 | 7点 | E-BANKER | 2011/09/24 21:51 |
|---|---|---|---|
| 550冊目の書評は、カーの中でも1,2を争う秀作と名高い本作で。
シリーズ探偵であるフェル博士やアンリ・バンコランは登場しませんが、作者らしいオカルティズム溢れる独特の雰囲気を持つ作品。 ~広大な敷地を有するデスパード家の当主が急死した。その夜、当主の寝室で目撃されたのは古風な衣装をまとった婦人の姿だった。その婦人は壁を通り抜けて消えてしまう・・・! 伯父の死に毒殺の疑いを持ったマークは、友人の手を借りて埋葬された遺体の発掘を試みる。だが、密閉された地下の霊廟から遺体は跡形もなく消え失せていたのだ。消える人影、死体消失、毒殺魔の伝説。不気味な雰囲気を孕んで展開するミステリーの1級品~ 確かに、これは評価に迷う作品。 本筋での大きな謎は2つ。 「部屋の壁の中に消えた婦人の謎」と、「密室(霊廟)から忽然と消えた死体の謎」。 2つ目の謎の解法はなかなかのもの。細かく時間的な齟齬を読者に突いてくるあたり小憎らしい。まさに「困難は分割せよ」だね。 それに対して、1つ目の奴はねぇ。「これしかない」といえばそうなんでしょうが・・・(「薄明かり」だったというのが伏線なのは分かる) 問題の部屋の見取り図すらないというのはちょっと不親切でしょう(これは作者でなく、版元の問題?) ブランヴィリエ公爵夫人という伝説の毒殺魔の影をちらつかせるなど、得意のオカルティズムは他作品よりも濃密で、いい味出していると感じます。 そして、問題の最終章のどんでん返し。 これを「是」とするか「否」とするのか・・・それほどインパクト孕んだラスト。 個人的には「微妙」ですねぇ。ミステリー的には、なくても特に問題ないように思えますが、これがあることで、数あるカーの作品中でも別格の扱いとされてきたのでしょうし、それを思えば「価値」を認めない訳にはいかないでしょう。 というわけで、トータルの評価としては、読む価値は十分認められる「佳作」ということでいいのでは。 (実にカーらしい作品なのは間違いなし) |
|||
| No.11 | 6点 | mini | 2011/08/25 09:52 |
|---|---|---|---|
| 本日25日に早川文庫から「火刑法廷 新訳版」が刊行される
訳が古かった他のカー作品も新訳に切り替えられるのだろうか さて「火刑法廷」と言えばカーの代表作みたいに語られてきた と同時に賛否両論好き嫌いが分かれる作だろうともよく言われてきた 何故好き嫌いが分かれるのか?、もちろんそれはあのラストを容認出来るかどうかにかかっているからと考える人が多数だろう あのどんでん返しのラストが気にならない読者は高く評価するし、気に入らない読者は低めの評価がこれまでなされてきた 曖昧な終わり方に対し”そういうのも有りだ”と寛容な人は高めの評価、何事も100%全部説明されないと気が済まない性格の人は低めの評価なんだろうね さて私はと言うと全く別の観点での考え方を持っているのである 私は全てが解明されないと気が済まないタイプの読者では無くて、『異色作家短篇集』なども愛読しているように曖昧な終わり方など気にならないし全く平気 そこで他の書評者から疑問が出てこよう、即ち、”じゃあ、何でお前の採点は低いんだ?、あのラストが許容出来るのなら評価が高くてもいいじゃないか?”と・・ はいごもっとも、私はあのラストは好きだし全然平気、じゃあ何故点数が低いのか? 私の採点が低いのは、あのラストが気に入らないのが理由じゃなくて、それまでの普通の本格としての部分があまり大した作品とは思えないからなのだ バレバレの死体消失トリック然り、ラスト以外の部分に何か特筆するべき要素があまり感じられない ただしラストのどんでん返しに関するテクニックは流石はカーと言える高水準で、あのラストだけなら8点、普通の本格としての部分が4点、で両者の間を取って6点とした次第 |
|||
| No.10 | 5点 | あびびび | 2011/05/18 10:22 |
|---|---|---|---|
| 最後のどんでん返しが問題になりそう。確かにくどいほど伏線が張られているが、それまでの明快な推理は一体何だったのか?
これが映画、テレビだったら衝撃的でゾクッときそうだが、いかんせん書物の中ではさらに現実味がなく、あきれ果てるだけ。ただし、その文化、伝習がある国ならうーんと唸るかも知れない。 |
|||
| No.9 | 5点 | nukkam | 2011/01/07 18:29 |
|---|---|---|---|
| (ネタバレなしです) 1937年発表の本書(シリーズ探偵は登場しません)は評価が大きく分かれている本格派推理小説で、なぜ賛否両論なのかは最終章のどんでん返しによるものです。このどんでん返しは意表を突かれることは間違いないのですが非常に型破りなため受け入れられない読者がいるのもごもっともで、少なくとも万人受けはしないでしょう。逆にマニア系や評論家からは絶賛されることが多いでしょう。マニア読者レベルに程遠い私はわかる人にはわかるよりは誰にでも受け入れられる方を好むので6点評価になりました。カーを初めて読む人には本書以外から始めることを勧めます。 | |||
| No.8 | 7点 | kanamori | 2010/07/02 00:25 |
|---|---|---|---|
| 怪奇趣向が最大限に発揮されたノンシリーズの問題作。
カーの代表作の一つに挙げられることが多い傑作には間違いありませんが、「三つの棺」同様に最初に読むべきカー作品とは言えないでしょう。(その理由は「三つの棺」と全く別ですが) ある程度カーを読んだ人でも、評価が別れる問題作であるといえます。 |
|||
| No.7 | 6点 | りゅう | 2010/03/24 19:29 |
|---|---|---|---|
| カーの最高傑作と言われているので、ずっと読みたいと思っていた作品。しかし、期待ほどではなかった。
犯行やそれを隠蔽する行為の合理性に疑問を感じた。犯人消失や死体消失のトリックは許容範囲だが、やや肩すかしをくらった感じ。不思議な謎を次から次と提示してくる作者のストーリーテラーぶりはさすがだ。 最後のどんでん返しには呆気にとられたが、個人的にはこのラストはあまり評価できない。 |
|||
| No.6 | 10点 | okutetsu | 2009/09/24 21:05 |
|---|---|---|---|
| 頭をかち割られたような衝撃と恐ろしさを覚えました。
確かにすばらしいトリックですが8点くらいかなぁなどと読んでいたところへの最後の大どんでん返し。 読後はちょっと頭がついていかなくて混乱してしまいました。 ミステリーとホラーをこれほどまでにうまく融合させてる(というか並列させてる?)作品は他に知りません。 賛否両論ある作品だと思いますが個人的には最高でした。 |
|||
| No.5 | 6点 | 測量ボ-イ | 2009/05/27 20:15 |
|---|---|---|---|
| カーの最大傑作との呼び声高いので、つい半年程前に読みま
したが、期待はずれでした。 何が悪いのか、といっても具体的に指摘できませんが・・・ 死体消失のトリックも強引ですが、これでケチつけていたら、 カーの作品は読めませんしね(笑)。 でもやはり、カーの作品なら「ユダの窓」「皇帝の嗅ぎ煙草 入れ」「白い僧院の殺人」あたりの方が上だと思います。 |
|||
| No.4 | 9点 | Tetchy | 2008/12/14 17:19 |
|---|---|---|---|
| カーの作品で何から最初に読もうかと人に面白い本を訊いてみると、恐らくいくつか挙げられる作品の中にこの作品が挙げられると思う。
その時点で読んでも、確かに面白いが、本作はやはりいくつかカーを読んだ後で読む方が断然面白い。 この作品は怪奇・オカルト趣向の本格ミステリを書くカーがこういう作品を書いたという事に最大の驚きがあるからだ。 しかし本作はカーらしからぬ、実に細やかな構成が成されており、後で読んでみても、本格ミステリともホラー両方とも読めるのだ。 で、逆にカーはそれがために多少強引な解釈も入れており、しかも全てを合理的に解決するわけでなく、あえて曖昧に残している記述も見られる。 逆にこれが最後のサプライズに説得力を持たせてくれるわけだ。 ポーを開祖とする本格ミステリ、つまり今まで怪奇現象だと思われていた不可解な出来事が、最後に実に論理的に解明される小説を敢えて本格ミステリの意匠をまとって、再び怪奇の世界に戻すカーのこの傑作はポーに対する敬意を表した返歌であるのかもしれない。 |
|||
| No.3 | 9点 | 薬 | 2008/10/22 17:12 |
|---|---|---|---|
| カーならではのトリックもあるが、ラストの何とも言えない《どんでん返し》もこれまた凄い。読まないのは損である。 | |||
| No.2 | 6点 | あい | 2008/03/25 15:24 |
|---|---|---|---|
| たしかに雰囲気はカー独特のものだが、最後の終わり方がカーらしくないかなと思った。かなり好き嫌いが分かれる作品だと思う。自分としては残念ながら体質に合わなかった。
|
|||
| No.1 | 9点 | ぷねうま | 2008/03/22 14:33 |
|---|---|---|---|
| 個人的にカーの最高傑作。捉えようによってはホラーにもとれる不思議な余韻を残すラストが素晴らしい。 | |||