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[ 本格/新本格 ]
暗色コメディ
連城三紀彦 出版月: 1979年06月 平均: 6.84点 書評数: 19件

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幻影城
1979年06月

新潮社
1985年06月

文藝春秋
2003年06月

双葉社
2021年04月

No.19 6点 みりん 2023/10/07 17:57
連城作品で、ここまで論理的で高度な謎解きには正直ビックリです。

No.18 8点 猫サーカス 2023/05/31 18:11
冒頭で提示される四つの謎が強烈。人妻の古谷洋子は出かけたデパートで、夫が同姓同名の女性と逢引きしているのを目撃。画家の碧川宏は、自殺するつもりでトラックに飛びこむが、なぜかそのトラックが消失した。葬儀屋の鞍田惣吉は、妻から「あんたはこの前の晩、死んだのよ。新宿の交差点で乗用車にひかれて」と言われ死者扱いされる。外科医の高橋充宏は、自分の妻が別人になっていると確信する。次々と描かれる四つの謎だけで、ページをめくる手が止まらない。さらに精神科の病院では都内でも一、二を争う藤堂病院だが、物語の重要な舞台として登場。幾人かの登場人物の動向が判明するのだが、さらに奇妙な謎と事件が増殖していき、物語の行方がさっぱりわからない。作者の手練主管によって、迷宮を夢中になって歩いていると、やがて驚くべき真相が明らかになる。幻想的な謎が、全て合理的に解かれる。しかも全体の構成が精緻極まりない。その一方で、人の心の不可思議さに複雑な思いを抱いてしまう。これもまた本書の大きな魅力となっている。

No.17 7点 ぷちレコード 2022/12/08 22:09
冒頭から連続して描かれる四つの奇妙な事件。カットバックで描かれた四つの事件はいずれも幻想的で薄気味悪いが、とりわけ葬儀屋の主人が気の抜けた声で言った言葉は、最高に滑稽でグロテスク。
こんな突拍子もない謎の数々に、作者は本当に論理的な答えを用意してくれるのだろうかと、眩暈に襲われながら次第に不安になっていく。
第二部に至って謎はある部分で拡大しながらも、次第に現実に向かいだす。が、最後に待っているのは、奇妙な事態。心理的なサスペンス、狂気や妄想や真相の異様さが楽しめる。

No.16 6点 まさむね 2021/10/24 22:43
 ①もう一人の自分を目撃したという人妻、②消失狂の画家、③「今日はあんたの初七日じゃないの」と妻に言われる葬儀屋、④妻が別人にすり替わっていると悩む外科医…。謎は魅力的だし、精緻に組み立てられているし、筆致も流麗だし、流石だなと思わせてくれます。
 でも何だろう、何かストンと落ちないような複雑な心境。精神的な病を組み合わせると、ご都合主義とまでは言わないけれども、色々とできてしまいますからねぇ。雰囲気も陰鬱になるし。
 ちなみに、上記③は、自分に置き換えて考えてみると相当に怖い状況。旦那さんが可哀想すぎです。

No.15 6点 クリスティ再読 2021/05/16 18:07
評者異常心理モノは苦手だ。とくにそれがパズラー的な解決がある、となるとね....その理由はやはり、描写の中で何が現実で、何が妄想なのかが、作者のさじ加減で決まってしまう、という部分があるあたりだと思うんだ。
本作はまあ、よく頑張ってるとは思うんだけど、一番不可能興味の強い人間消失でも、解き明かされると爽快に「だまされた!」感がないように思う。いろいろ盛り込みすぎて、ごちゃごちゃし過ぎた印象もあるし。
とはいえ、妻に自分が「死んでいる」妄想をぶつけられて戸惑う夫の話とか、イイな。妻が「死んでいる夫」に、自分のカラダに写経を要求するシーンなど、「暗色コメディ」というタイトルそのままのブラックなおかしみがある。これは加点要因。あそうか、このエピソードがこの作品のベストの「妄想」なこともあって、他のエピソードがこれのバリエーションに見えてしまうのは、ミスディレクションかもしれないが、小説的にはクドくなる原因かもね。

No.14 7点 じきる 2021/05/08 01:38
幻想的な筆致と、丁寧に練られた構成から紡ぎ出される真相がお見事。

No.13 8点 2020/05/18 05:04
 クリスマス間近の都心のデパート内で呼び出しを受けた妻は、〈もう一人の自分〉に微笑みかける夫を目撃する。一方、酷暑にあえぐ新宿の目抜き通りでは霊柩車が都心の雑踏に迷いこみ、大袈裟な読経と経文を撒き散らした。車を運転していた妻は帰宅し、畳に寝そべる夫に告げる。「今日はあんたの初七日じゃないの」
 初秋の気配の感じられるようになった公団住宅の一室では、ある医者が闇に彫られた暗い輪郭を見つめながら思う。――この女は、妻ではない、と。
 そして自分の体があらゆるものを吸い込む暗い異次元だと確信した男は彼らの一人を消し去ると、自らもどことも知れぬ夜の隅に消えた。互いに絡み合う四つの狂気から、やがて巧緻に織りなされたタペストリーが浮かび上がってくる。幻想とも見紛う異様な犯罪を描く、連城三紀彦の処女長編。
 1979年6月刊行。この前後には松本清張に代表される社会派全盛から、本格ミステリー回帰への揺り戻し現象が起きており、1976年には角川文庫の横溝作品が累計1,000万部を突破、続いて石坂浩二主演による市川昆監督「犬神家の一族」が10月公開、翌1977年4月には古谷一行主演の〈横溝正史シリーズ〉第Ⅰ期がTBS系スタートと、一般にも広くでろでろ趣味が浸透した華々しい時期でした。
 その流れを読んで台湾出身の編集者・島崎博(=傅金泉:フージンチュアン)が雑誌「幻影城」を創刊。泡坂妻夫『11枚のとらんぷ(1976年10月)』『乱れからくり(1977年12月)』竹本健治『匣の中の失楽(1978年01月)』等、惜しみなく趣向を凝らしトリックをブチ込んだ数々の力作群は、ルーティーンワークの社会派に飽き足らぬミステリマニア達に深い感慨を与えます。
 彼らに影響された連城が〈幻影城ムーブメント〉の一人として「よしいっちょ俺もやったるか」と、満を持して発表したのが本作品。トラックを皮切りに始まる碧川宏の消失幻想の数々は、普通の作家だとイチから書き直すでしょう。これを大マジでやりながらなおかつ合理的に成立させ、ミステリのパーツとして組み込んだのが凄い。著者には珍しくコストパフォーマンス無視の大仕事。少々インチキ臭くもありますが、その志は高く評価できます。
 ただその結果あちこちにムリが来てるのはどうしようもない。最後の事件での血液運搬とかは、完全に逃げてます。またどちらが犯人にせよ碧川は殺してないようですが、人間一人を生かしたまま隠蔽し続けるのは余りにもリスクが大きい。イヤリング一つで全てが裏返る鮮やかさには感嘆しましたが。
 とにかく色々な意味で惜しい作品。それでもかつてない構想を実現させた幻惑ミステリとして、8点を付ける資格は十二分にあります。

No.12 6点 ボナンザ 2020/02/16 19:10
連城らしい構築力と描写力が映える佳作。
最後の真相はややインパクト弱し。

No.11 6点 パメル 2018/10/10 01:25
叙情性豊かな美しい文体で、読者を虜にする作者の長編デビュー作で、真実と狂気が混然とした幻想的な世界を見事に描いている。(とにかく読者を惑わせてやろうという思いがひしひしと伝わってくる)
男女4人の奇妙な4つのエピソードが、それぞれの視点で語られ、真実なのか妄想なのかと混沌とした雰囲気の中、不安を募らせる心理描写も丁寧で好印象。
やがて、4つのエピソードが1つの物語に収束していく過程も巧み。
ただ、合理的な結末にするために偶然の要素を多く取り入れている点は不満。

No.10 6点 itokin 2016/11/24 20:20
複雑な狂気の世界4編をどう結末付けるのかの興味だけで最後まで読んだが、こうゆう物語はどうも苦手で集中できず鮮やかなと思われる謎解きも理解不十分だった。ただ、蓮城さんの世界と情景描写は独特で深さを感じた。

No.9 7点 斎藤警部 2016/09/15 00:01
よくもまァ。。。。。ァクションペインティングされた巨大な壁紙をランダムに切り崩しているのかと思ったらしっかりジグソーパズルが構成されていた!(ピースのサイズはまちまちだ!!) そこまでして連城君は一体何を爆発させたかったんだ!!!  短い最終章の前、見えない「読書への挑戦」を手渡されたのはゾクゾク来たゼ。

きちがい幻想タペストリーの取っ散らかりに現実的トリックや伏線がいちいち嵌ったりして凄く面白いし感心もするんダけド、、 終盤追い上げのドタバタがちょっとなあ、美しさを微妙に損なうよ。惜しくモ7.4八。

しかし本作に「本格/新本格」のジャンルを一票投じる事になるなんてね、読み始めのあたりじゃまさかまったく思いも寄らなかったわけでね、落とし前なら俺に任せろってか、やっぱり凄い作者ですよね。

No.8 8点 メルカトル 2013/11/28 22:18
4つの異なる異常なエピソードが並走し、最後に収束するという、いかにも私好みの連城三紀彦氏初期の傑作。どの物語も現実味の薄い、どう考えてもまともな解決とは程遠いものだけに、それらの謎が論理的に解明されるカタルシスは有り余るほど濃く味わい深い。特に自分をひき殺したはずのトラックが体を通り抜けて消えてしまう謎は、多少無理があるがなるほどと思った。
全体的にタイトルが示す通り、雰囲気は暗くコメディというにはあまりに陰鬱だが、その後の氏の作品と比較すると、実はこの作品が最も本格ミステリに近い形態を備えていると言えるだろう。
個人的には氏の代表作とされる『戻り川心中』よりもこちらのほうが好きだ。初めて読んだのもこの作品だったので、この路線で他の作品も行ってくれるのかと期待していたが、残念ながら少し違った方向へ走ってしまったようだ。だが、他の諸作品も決して悪くはないと思っている。特に『敗北への凱旋』や『夜よ鼠たちのために』などは独特の雰囲気がいいし、連城氏にしか書けない作品だと思う。

No.7 8点 E-BANKER 2011/05/22 20:13
作者の長編第1作目。
何とも表現できないような独特の世界観が味わえる作品。
~もう1人の自分を目撃してしまった主婦。自分を轢き殺したはずのトラックが消滅した画家。妻に「あんたは1週間前に死んだ」と告げられた葬儀屋。知らぬまに妻が別人にすり替わっていた外科医。4つの狂気が織り成す幻想のタペストリーから、やがて浮かび上がる真犯人の狡知!~

いやぁ・・・正直これは驚いた!
「序章」から「第一部」までは、どう読んでも推理小説的ロジックやリアリティーのかけらも感じられない展開・・・何か、精神疾患の患者を主人公にした幻想小説を読まされているようにしか思えない・・・
これがどう転んだら、「本格ミステリー」として収束させられるのか? 興味津々といった感じで「第二部」へ突入。
まさに、1つ1つ糸が解かれていくように、「幻想」というハリボテがはがされていきます。そして残ったのは現実感のある解決と狡知な真犯人!
連城マジックを見せられた思いです。
敢えて言えば、やはりロジックの無理矢理感はありますし、現実と仮想の「ギリギリ」感は好みが分かれるのかもしれませんが・・・
ただ、それを押しても、読む価値十分という作品で間違いなし。
(直線道路とエレベーターのトリック?はかなり無理があるように思う。あと、外科医のキャラは相当コワイ・・・)

No.6 6点 T・ランタ 2010/01/14 17:16
掴みは充分だったと思います。
不可解な謎が幾つも出てきて困惑させる展開に非常に興味をそそられました。

しかしその中に本当に精神の病による錯覚(?)があったりで少し残念でした。

『私という名の変奏曲』より先に読んでたらもう少し好評価だったかも知れません。

No.5 7点 nukkam 2009/07/29 10:58
(ネタバレなしです) 純文学の分野でも活躍する一方、技巧を凝らした異色の本格派推理小説で高い評価を得ている連城三紀彦(1948-2013)が1979年に発表した長編ミステリーのデビュー作です。冒頭のトラック消失だけでも十分衝撃的な謎ですが、狂人の妄想ではと思わせるほど不思議な謎が次々に提出されます。犯罪性がはっきりしないためか読者の謎解き挑戦意欲が湧くかはやや疑問ですし心理サスペンス風な展開は好き嫌いも分かれるかもしれません。決め手の手掛かりが終盤になって唐突に提示されるなど本格派推理小説としては弱いところもありますが、これだけの「混乱」を合理的に収拾する手腕は「技巧派」と評価されるにふさわしいと思います。後年の傑作「白光」(2002年)に通じるような雰囲気も併せ持っています。

No.4 6点 dei 2009/05/02 21:00
狂った世界にあまりのめりこめなかった・・・
解決が弱いのもマイナス点。

No.3 7点 なの 2008/11/25 17:46
流石の巧さ、面白さ・・・ですが、
幻想的であり、正常・異常の判別の付かなくなって来る前半の魅力に対して、
それを論理的に解明していく終盤が、なんつーか無粋な感じだったり
真犯人も正直途中で割れます

No.2 7点 こう 2008/06/11 23:01
 連城三紀彦第一長編です。裏表紙に書いてある通りもう一人の自分を目撃してしまった主婦、自分を轢き殺したはずのトラックが消滅した画家、妻にあんたは一週間前に死んだと告げられた葬儀屋、知らぬ間に妻がすり替わっていた外科医。という4つのストーリーが平行して進んでゆき最後にまとまる作品で第一長編からいかにも連城三紀彦らしい作風に仕上がっています。
 一つ一つの真相については説得力に弱いものもありますし、精神疾患患者を利用しているのもあまり気に入りませんがストーリー自体は気に入っています。また男女の心情の筆致はうまいです。個人的には謎解きとは関連が薄いので興味は薄いですがそれもひっくるめての連城作品だと思います。

No.1 8点 ギザじゅう 2004/03/02 13:10
『暗色コメディ』 新潮文庫

超絶技巧・・・いや、狂絶技巧かな


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