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[ サスペンス ]
白光
連城三紀彦 出版月: 2002年02月 平均: 6.32点 書評数: 19件

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朝日新聞社
2002年02月

光文社
2008年08月

No.19 8点 みりん 2023/06/08 21:20
ドロドロした人間関係で起こる一つの幼女殺人事件。ラストに畳み掛けるような当事者の独白には一文一文読み逃さないように、そして噛み締めるように読んでしまう。
そしてこの筆舌に尽くし難い読後感…どんどん連城三紀彦の沼にハマっていく。

No.18 7点 zuso 2022/09/17 22:40
本書が優れているのは、多重解決が解釈ゲームにとどまらず、家族や夫婦における人間関係の空虚さを背景とすることで、推理や解決がそのままキャラクターを際立たせる要素となっている点にある。
推理とは、他者意識とナルシシズムを前提としなければ成り立たないことを、見事に描き切っている。

No.17 6点 じきる 2021/12/11 23:02
私の好みの連城ミステリからはやや外れていますが、高水準な技巧が凝らされた作品。
真犯人は存在しているのだが、各登場人物の主観を利用した多重型の要素を同居させることで、独特の味わいがあります。

No.16 8点 mediocrity 2021/02/13 04:53
あまりにも人間関係がドロドロしすぎで、正直苦手な作品。
しかし、次から次へと視点が切り替わり、徐々に真実が明らかになっていく過程は圧巻であった。

No.15 8点 斎藤警部 2020/09/30 11:35
何故連城長篇は緩むのか、その神髄が見えたぞ! と思って少し寂しくなった数十秒後にはもう、その予断は蹂躙されていた!! 絶句。 ここまで重く哀しい真犯人●●●●は、ちょっと無いぜ。。。。 これぞ和のフレンチ。表題も完璧。

二組の夫婦、妻が姉妹どうし、双方に一人娘。 妹のほうの娘が或る日、絞殺屍体で発見される。 場所は姉の家、一緒にいたのは老いたる舅。。。この舅の朦朧とした独白で幕を開ける、「私という名の変奏曲」の変奏曲のようでもある多重告白構成のサスペンス。 戦争の深い影も沁みた、酷い話。 警察での供述が妙に中途半端に文学的だったりで、ちょっと笑っちゃうとこもありました。 ある人物のいちいち「~~では屈指の男だ」と述べたがるクセの強い独白はヘンにユーモラスでした。 そして、終わってみれば◯◯要素などどこにもない。。という薄ら寒さよ。 (いや少しだけ、あまりに淡いのがあったか)

「君を抱きたいんだよ。そのためにここへ君を呼んだ・・・・・君に電話をかけた時からもう誘惑は始まっていたんだが、気づかなかったのかね」 ← 記憶に残る台詞

蟷螂の斧さん仰る
> 最終章の独白がその前の章と前後していたら、もっと強い衝撃となったと思います。
これは、アレのことですよね。 もしそうなっていたら、あまりに怖ろしい。。。。 9点行ってたかも。。

【【 以下、犯人名指しこそしていないものの、極めて強いネタバレ 】】

殺人犯人、言ってみれば上流から下流まで全工程で計3人(!!!)もいるのに、誰一人として(少なくとも終盤に差し掛かるまでは、標準的読者の?)嫌疑内に置かれそうもない、意外極まる人物たち。。。この空怖ろしい技巧には心底参りましたよ。

No.14 4点 測量ボ-イ 2018/12/22 13:43
身内のドロドロ感が強く、好きな感じの作品ではないです。
本格色も薄いですしね。

(余談)
今年の書評はおそらくこれで最後。
今年の書評数は20冊か・・また来年頑張ります!

No.13 7点 take5 2018/07/17 06:32
学生の時に芥川の『藪の中』を学びましたが、
正に多重の視点で物事を捉えると
真実と思われる物がいかに主観的かと気付かされます。
全ての登場人物に鬱屈、葛藤があり、
犯人の可能性がありますが、
この作品では、誰が犯人かよりも、
なぜこのような事が起こったのかに
重きを置いて読みました。

No.12 6点 nukkam 2016/07/06 09:45
(ネタバレなしです) 非ミステリー作品を次々に発表した連城三紀彦はミステリーから離れたことを文学界から賞賛されたりもしましたが、完全にミステリーと決別したわけではないのは2002年発表の本書を読めば明らかです。とはいえ単純な犯人当て本格派推理小説とも異なり、ドライな文体でどろどろした家族関係を描いた文学的な香りが濃厚な作品です。推理要素は希薄ですが多重自白によるどんでん返しで真相が明らかになっていくプロットは個性的です。好き嫌いは分かれるかもしれませんがミステリーと非ミステリーを橋渡しする作品の一つとして貴重だと思います。

No.11 6点 メルカトル 2016/05/14 22:26
一見平和に見える、どこにでもありそうな親族たち。だが、姉妹とその夫、子供と舅、それぞれが嫌らしいほどの思惑を胸に抱いており、善人は一人もいない。これだけドロドロした思念を持った人々を描いているのならば、普通は嫌悪感は拭いきれない作品になるはずだが、連城氏の手によるとそうはならない。殺人事件がまるで夢想の中で起こったかのような錯覚さえ覚える。
結局実行犯は明らかになるが、主犯は誰なのか。もしかすると一族全員の想いが殺人事件に発展させたとも言えそうであり、プロバビリティの犯罪の変形とも言えるかもしれない。
いずれにしても、本格好きな読者には不向きだと思う。どうにももやもやした消化不良な感じが心の中にしこりとなって、いつまでも残るからである。それもまたこの作品の持ち味なのであろう。

No.10 8点 りゅうぐうのつかい 2016/04/01 19:21
事件そのものはシンプル。その背景に、過去の出来事、家族内の複雑な人間関係、裏切りと報復の連鎖がある。
後半は、各個人だけが知っている事実に基づく多重推理、多重告白の連続。芥川龍之介の「藪の中」を連想した。予想だにしていない人物の意外な告白もあって、意表を突かれた。
真犯人と言うべき人物は、想定外の人。エンディングも情緒があって、すばらしい。
ある意味では、「お互いに協力していないのにも拘わらず、全員が犯人」と言えるような物語。このような不思議なストーリーを実現させた作者の手腕に拍手。

No.9 6点 E-BANKER 2013/01/13 01:37
2002年発表の長編作品。
この作品も相変わらずの「連城節」、或いはこれぞ「連城ミステリー」と言うべき作品。

~ごく普通のありきたりな家庭・・・。夫がいて娘がいて、いたって平凡な日常・・・のはずだった。しかし、ある暑い夏の日、まだ幼い姪が自宅で何者かに殺害され庭に埋められてしまう。殺人事件をきっかけに、次々と明らかになっていく家庭の崩壊、衝撃の真実。殺害動機は家族全員に存在していた。真犯人はいったい誰なのか? 連城ミステリーの最高峰がここに!~

これは・・・見事なまでの「連城ミステリー」。
連城にしか書けない、または連城しか書かないミステリーに違いない。
しかし、実に企みに満ちた作品だ。
ミステリーとしては平凡すぎるくらい平凡な殺人事件のはずだったのに・・・最後の一行までもつれにもつれていく展開。
ラストの衝撃はそれ程でもないかなという感想だが、本作が「初連城です」という読者の方なら相当面食らうのではないかと思う。

子供の頃からいがみ合う姉妹を妻とする2組の夫婦、そしてその娘たちと、認知症の父。
殺されるのは次女の娘なのだが、彼女を「殺した」という人物が出てきては消え、「こいつか!」と思ってはするりとかわされていく・・・
事件の謎が深まるほどに明らかになる登場人物たちの悪意とゆがんだ感情。
とにかく、この世界観にはいつの間にかどっぷりと浸からされてしまった。

まぁ、正当なミステリーからはかなり逸脱した作品だし、好みからいえばもう少しミステリー色が濃い作品の方がよい。
ということで、氏の作品としてはあまり評価はしないのだが、まぁこの雰囲気、世界に是非一度は触れてみていただきたい。
(嫌な女だねぇー「幸子」。こういう男女間の心の機微を書かせると天才だね)

No.8 7点 蟷螂の斧 2012/05/28 15:28
<復旧再登録>普通の家庭での殺人事件。探偵も警察も登場しない。次第に明らかになってゆく登場人物の心の闇。こういう展開って好きですね。そして衝撃の真相。最終章の独白がその前の章と前後していたら、もっと強い衝撃となったと思います。惜しい気がします。

No.7 5点 3880403 2011/04/23 04:01
登場人物が語っていく形式で途中犯人が二転三転するところは良い。
衝撃はなかった。

No.6 4点 seiryuu 2011/02/03 12:24
真実が少しずつわかっていくごとにだんだん陰湿に重くなっていきました。
全員を狂った人にしてしまうのもなあ。
子供には何の罪もないのにとやりきれない気持ちだけが残りました。
文章より雰囲気を読む作品だと思いました。
暗さと繰り返しの多さにイライラして私には合わなかったです。

No.5 6点 isurrender 2010/09/19 02:40
本格色は薄いですね
宮部みゆきだとか東野圭吾だとかそういう類の小説を連想させました
小説としての完成度は高いです

No.4 6点 シーマスター 2010/03/23 23:08
一見平凡な姉妹がそれぞれ嫁いだ二家族の、薄い平凡の皮膜の下に波打つドロドロで底深い愛憎劇の臨界破綻として生じた幼女殺人事件。

登場人物達の順繰りの独白形式により、巨大な蟻地獄の底のような真相の露呈に向かい、大きくスパイラルしながら時に緩慢に時に電撃的に進む構成は、情念型ミステリーとして完成度が高い仕上がりになっていると思う。

谷崎潤一郎や三島由紀夫なども好きなミステリーファンには絶賛されるかもしれない。
(ちなみに自分はどちらも一冊も読んだことがない)

No.3 8点 文生 2010/01/27 14:41
典型的な本格ミステリーのように終盤でどんでん返しの快感を味わえるようなタイプの作品ではないです。
語り手が代わる度に事件の違う側面が明らかになり、事件の根深さが露出する。
そして単純と思われた事件に隠されたとんでもない構図が名探偵の推理ではなく、文学的な香りともに徐々に徐々につまびらかにされていきます。
その過程が実に味わいがあって読んでいてゾクゾクしました。
トリックやロジックは皆無なので本格ファンには受けが悪いかもしれませんが、個人的には連城三紀彦ミステリーの中で一番気に入っている作品です。

No.2 5点 ロビン 2009/02/12 00:03
めくるめくどんでん返しの螺旋。正直、どうでもいいです。誰が犯人でも、どうでもいいです。
(以下ネタばれ)おそらく「全員が犯人」という構図を描きたかったのでしょうが(もちろん、クリスティのあの作品とは違った意味で)、それは登場人物それぞれの捉え方しだいでしょう。もっと本格色の強い作品を期待していたので、構図の反転のみで勝負するロジックも何もない(いや、気休め程度にはあるか)ような本書は、自分の好みには合いませんでした。
例えばこの作品に法月綸太郎やリュウ・アーチャーなどの探偵が登場すれば、家庭内悲劇をめぐる本格ハードボイルドな作品になり、探偵役が登場せず文学色が前面に出てくると本書のような作品になるのでしょう。
純文学的に描写すれば、狂った人間も(僕には登場人物全員が狂っているようにしか感じませんでした)成立してしまうのだから怖い。

No.1 5点 こう 2008/10/17 03:14
 戻り川心中のような文学性は薄いですが現在の連城作品の方向性を示しているのかもしれません。
 ありきたりの2組の夫婦(妻同士が姉妹)と一人ずつの娘がおり妹が娘を姉に預けて外出しているうちに預けた娘が殺害されて庭に埋められているのが発見される。発見当初は姉の認知症のある舅が犯人と思われたが、というストーリーです。
 そこからの話の展開はものすごく連城作品らしいですが推理して当てる作品ではなく次々に暴かれめまぐるしく変わる真相を楽しむ作品なのでしょう。本格色は強くなく非常に評価しづらい作品です。


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