皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 本格/新本格 ] 敗北への凱旋 |
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連城三紀彦 | 出版月: 1983年11月 | 平均: 6.33点 | 書評数: 9件 |
講談社 1983年11月 |
講談社 1986年08月 |
角川春樹事務所 1999年03月 |
講談社 2007年08月 |
東京創元社 2021年02月 |
No.9 | 8点 | じきる | 2021/12/26 17:10 |
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暗号部分は難解かつ理解不能でしたが、難解であることが物語のキモに上手く絡んできます。壮大な動機を潜ませた真相が素晴らしい。 |
No.8 | 5点 | E-BANKER | 2020/05/16 11:30 |
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処女長編「暗色コメデイ」に続いて発表された作者の第二長編。
戦中戦後の日本そして中国を舞台として暗く重い雰囲気が漂う当たり、いかにも作者らしいのかも。 1983年の発表。 ~戦争によってその将来を絶たれたピアニスト・寺田武史。戦後、非業の死を遂げた彼の生涯を小説にするべく取材を始めた柚木桂作は、寺田の遺した謎の楽譜や、彼の遺児と思われる中国人ピアニスト・愛鈴の存在を知る。調査を進めるうち徐々に明らかにされる、戦時下の中国と日本を舞台とした“ある犯罪”・・・。複雑にもつれ合う愛憎劇に、楽譜による「暗号」を絡めて描く長編ミステリー~ 未読作品が残り少なくなってきた作者。 そういえば読んでなかったなと思い、手に取ったのが初期発表の本作。 前作「暗色コメデイ」は現実感の全くない幻想小説を思わせる前半と、推理小説的ロジックで鮮やかに謎を解決してみせる後半との対比で度肝を抜かされた。(ちょっと言い過ぎかもしれないが・・・) それに比べると・・・いかにも地味だ。 好意的に取れば「凝ってる」し、「玄人受け」しそうな作品ではある。 ラストにやって来るサプライズは他の方が触れられてるとおりなら二番煎じということなのだろうし、それでなくてもちょっと唐突すぎる感はある。でも、まぁ展開としては上手いし、これが二作目というところに、作者の非凡すぎる才能は十分に窺える。 そして「暗号」。難しすぎという意見には賛成。音楽に造詣が深いならまだしも、門外漢にとっては斜め読みしていくしかできなかった。こんな難解で、しかも複数人の手になる暗号・・・絶対解かれないだろ! ということで、どうも個人的には高評価できない作品となってしまった。 それもまぁ、他の作者に比べての期待値が高すぎる所以なのかも。 残り数編になってしまった作者の作品。噛みしめるように読んでいきたい。 |
No.7 | 6点 | kanamori | 2016/09/01 20:34 |
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小説家の柚木は、二十数年前の戦後まもなく横浜中華街の安宿で中国人娼婦に射殺された元大尉の寺田武史という男に興味を抱き、小説の題材にすべく彼の生涯を調べ始める。やがて、ピアニストでもあった寺田が遺した謎めいた楽譜から、男女の狂おしく哀しい人生と、壮絶な真相が浮かび上がってくる---------。
昭和58年に講談社ノベルズで出版された作者の長編第2作。 玉音放送が流れた終戦の日の夕方、空爆で荒廃した東京の空から、真紅の夾竹桃が雨のように降って来るという、序章の情景描写が映像的で美しいですが、真相を知って読むと一転して禍々しく感じるという、いかにも連城風で印象的なシーンです。 夾竹桃を小道具に、恋愛小説と特異な動機のミステリを結合し、ラストで”あるもの”を葬るというプロットなので、たしかに花葬シリーズの長編版と言えるかもしれません。でも、その壮大なホワイダニットの真相が、有名な海外古典作品を想起させる(設定までよく似ている)のは、独創性という点では減点材料ですね。 楽譜の暗号が重要な要素として提示されているのですが、読者が推理に参加するのは困難で、ましてや音楽の素養が全くない身には、解明説明部分を読んでもチンプンカンプン(死語?)な非常に難解なものです。ただ、もともとミステリの暗号解読はさほど興味がないので、個人的にはそれは本作の欠点とは見做さず、さらっと読み流しましたw |
No.6 | 6点 | ボナンザ | 2014/04/08 15:58 |
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講談社の復刊で。
連城氏の長編では出色のできではないでしょうか。 |
No.5 | 6点 | あるびれお | 2009/09/25 10:37 |
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昔、島田荘司の「奇想、天を動かす」を読んだときのような、ミステリにも物語にも満足できる感覚を味わうことができた。これで、作中に出てくる楽譜の音が、それを見るだけで頭の中に響けばもっと素晴らしかったのだろうけれど... |
No.4 | 6点 | 臣 | 2009/03/29 12:14 |
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暗号は難解すぎます。これでは誰にも解けません。
しかし、難解にしたことの理由が本作品の最大の謎ではないかと思います。 真相や動機はあまりにも壮絶、壮大で、並みの作家だったら白けさせるでしょうが、連城の文章なら違和感なく受け入れられました。 十分に余韻が残ります。 この作品、謎解きに必死になって読むより、いっきに読み通したほうがいいかもしれませんね。 |
No.3 | 7点 | なの | 2008/11/14 15:03 |
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暗号はサッパリ分かりません
謎解きを読んでもまだ理解出来ない でも隠された「動機」は壮絶 |
No.2 | 6点 | こう | 2008/06/22 01:30 |
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連城三紀彦第二長編です。第二次大戦で将来を絶たれたピアニストの生涯を小説の題材とした小説家が主人公で取材を続けるうちに戦後直後の殺人事件の真相や、様々な謎が明らかにされていく、というストーリーです。
暗号については全くわかりませんで、ただ読み飛ばすだけでしたが、それ以外の真相は連城作品らしい仕上がりです。 犯人のキャラクターは正直あまり好きではなく、殺人の動機もあまり納得いきませんが、戦争直後ならありうる動機なのかもしれません。 ただその動機をひきおこす戦争そのものがトリックになっている所が壮大で凄いです。ある有名な海外作品の古典と本質は全く同じですが、ストーリーにうまくあっていると思います。 |
No.1 | 7点 | ギザじゅう | 2004/02/21 12:06 |
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『敗北への凱旋』 (講談社文庫)
楽譜を使った暗号ミステリーということで本格度は薄かと思いきやがちがちの本格。 チェスタトンの「折れた剣」の様な(ちょっと違うけど)トリックや入れ替えやら長編を持たすため一工夫も二工夫もされている。 さらにはプロットの妙もさえ、男女の愛憎を押し出したミステリー・ロマンでもある。 というより本書の見どころ(読みどころ?)はロマン>本格 |