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[ 本格/新本格 ]
私という名の変奏曲
連城三紀彦 出版月: 1984年08月 平均: 7.19点 書評数: 16件

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双葉社
1984年08月

双葉社
1988年01月

新潮社
1991年01月

角川春樹事務所
1999年01月

河出書房新社
2021年08月

No.16 9点 みりん 2023/07/17 00:12
こ、これは美しい…… 最終章は何度も読み返すことになるだろう。
【ネタバレします】



「なぜ犯人だと思い込んでいる人物が7人も存在するのか」という魅惑的な謎の解答は読んでいる途中で薄々見え隠れするが、トリックが本題ではない。何もかもが偽物で虚飾の世界に閉じ込められた一人の女性が奏でる変奏曲を作者の流麗な筆致に酔いながら最期まで見届ける作品である。

私は長編信仰が強いもので「戻り川心中」「宵待草夜情」「夜よ鼠たちのために」などの名作短編を読んだ後でもやはり本作や「青き犠牲」「白光」「造花の蜜」など長編の方が好きだなあ。
連城三紀彦のミステリ長編はあと何作品未読なんだろうと少し楽しみが減ってきた寂しさを感じています。

No.15 7点 じきる 2021/06/20 19:03
皆さんの書評にもあるように、トリック自体は長編を支えるには少し弱いと感じました。しかし、トリックを膨らませて不可解な謎・ストーリーを作り上げる構成力や、美麗な文章が醸し出すミステリアスな世界観は素晴らしいです。

No.14 7点 クリスティ再読 2021/03/18 12:17
長編で内容的には「幻の女」+「シンデレラの罠」。アイリッシュ同様に、この人の良さも、短編の良さみたいな部分を感じるな。だから、7人の男女を巡るそれぞれの話が、それぞれに興味深くて、「7人すべてがまったく同じ状況下で、同じ女を殺す」というイリュージョンを手を変え品を変え見せてくれる。この「魅力的な謎」を作ることに注力しているあたりを評価すべきであって、解決なんてオマケみたいなものだ。

一瞬静止したレイ子の顔は、たとえようもなく美しかった。結局レイ子は何も言わなかった。私は二秒で寝室を出、五秒でその部屋を出、一分後にはマンションの裏手に駐めておいた車に乗りこみ、走り出していた。

文章だけど、狙った美文調のあたりよりも、こういう抑制的な描写の方に良さを感じる。まあ、最後に被害者ヨイショするのはお約束かしら。

No.13 8点 zuso 2020/04/16 19:34
この作品の魅力は、正体不明の犯人にヒロインが殺される冒頭から真相のどんでん返しとなるべき一部が読者に提示され、なおかつ作者も誰が犯人だか書き上げても、分からないというような凝った仕掛けと、ヒロインの哀しい肖像が鮮やかなところにある。

No.12 6点 ボナンザ 2020/04/01 23:07
トリック自体は長編にはややきついが、卓越した描写力が不満を打ち消してくれる。

No.11 7点 パメル 2018/02/05 13:22
七人の人間が、自分が犯人と確信しているという状況とはどういう事か?少し考えれば、思いついてしまうトリックだし綱渡り的で感心できないが、文章が流麗なため物語に引き込まれてしまう。
奇妙な状況の裏には、何か途方もない仕掛けがあるのだろうと読み進めるが全体像がなかなか見えてこないような描き方も上手い。
結局、加害者は誰なのかは、最後まで明かされず、それでいて謎があり解決があるというアクロバティックな趣向が巧妙。

No.10 8点 斎藤警部 2018/01/31 12:00

「明日の朝、わたしがこんな◯◯◯◯◯◯◯◯。。。。」

俺はメロンを螺旋状に削ぎ屠って喰いたい。。。。。。 ムズムズ感を刺激する章立てからしておフランス以上におフランセーズな、如何にもお連城らしい、まるでミルフィーユのような作品。 最後の最後まで謎と違和感を詰め込み攻める心意気にはシビレる。 なんて分厚い盲点群。。。。奇数。。。複数。。(苦笑) 題名にきちんと素晴らしく具体的な意味があったのは良かった。 そしてこの、まさかの進行形エンディング。。

「いざとなれば、みんな殺せば。。。。」 「会ったことすらない。。。」

物理的に不可能、と言うより数学的にあり得ない不可能犯罪は如何に遂行されたか(或いは、本当にされたのか..?)を解き解(ときほぐ)す超絶技巧のきらめきを味わい尽くすために産み出された作品。 ただ連城短篇の場合と違いリアリティの堅牢な幻をドーンと現出させたまま終了とは行かないきらいはある(言葉選びの切れも微妙以上に甘いし)。。 が、そのあたりは長篇本格ミステリのお約束と混沌の混ぜこぜに割り切ってこそ吉でありましょう。 一抹二抹程度の嘘っぽさなら、その連城バランスィングの妙で見事に吹き飛ばしてくれます。 医者って、そういうことか。。

共犯者か。。 砂の城か。。 “真犯人さえ知らないカラクリが。。”
犯人とは何だ。 推理小説における犯人とは、、いったい。。。。

ゲームだよなぁ、とは思いつつ、こういう(ギリ)数学的ギミック乃至トリックを弄する作品は大いに好みです。(とは言え「なんとか術殺人なんとか」みたいなガチ数学トリックとは違い、数学的イメージを喚起しているだけかも知れませんが)



【以下、ネタバレ】



不治の病って、この話の枠組みじゃ、連城期待値なら尚の事、ご都合禁じ手じゃね?
著名作「容疑者なんとかのかんとか」を彷彿とさせなくもない重要ファクターがありましたね。そこちょっとアッサリ通り過ぎ過ぎじゃね? と思うところも共通。ただし本作の場合はそこが物議を醸しはしないんだよね。PCの微妙なところに触れるわけじゃないからか。。
家政婦? パスポート写真撮影? 工場の青年?? 火事? モデルにしては小柄 。。。??  ← ひょっとして大化けする伏線やら何やらかと思ったら、そうでもなかった諸要素。 特に最後のは、こりゃニオウぞと終始疑いつつ読んじゃってました。。もしやミスディレクションだったのか。。


No.9 6点 take5 2016/11/14 17:56
どうしたら7人とも自分が犯人と思わせられるか?というのは、やはりなるほどとは思いますが現実的に無理があると思えてしまい、高評価に至りませんでした。
かといって3~4人ならいいという事でもないので難しい所です。やはり連城作品ならば、戻り川をお勧めします。

No.8 7点 名探偵ジャパン 2016/10/27 17:06
本格トリックと美しい文体の融合、それが連城の魅力であり、本作においてもそれはいかんなく発揮されていますが、初出が1984年という比較的早い段階だからでしょうか、まだ板についていない感じがします。「美文を書こう」という意識が前に出すぎているというか、文章を目で追ってもなかなか頭に入ってきません。これよりも早くに書かれた「戻り川心中」ではそんなことは思わなかったため、連城はやはり短編型の作家、ということなのでしょうか。「登場人物の心情をつらつらと述べるよりも、どういう状況なのかを説明してくれよ」みたいなことを何度か思いました。
「七人もの人物が、それぞれ同じ人間を殺したと思い込む」せっかくのこの非常に魅力的なガジェットが頭に入ってくるまで、かなりのページ数を要してしまいました。
しかしそれも中盤まで。文章に慣れるころには、ぐいぐいと読ませる力がやはりある作品でした。
トリックの肝は、確かに前段階でフェアにヒントが書かれてはいるのですが、美文に振り回されて(?)、いまひとつ「そうだったのか」という感じにはならなかったことが残念です。
そのトリックも魅力的ではあるのですが、あまりに「ガチミステリ」っぽくて、こういった「リアル系」作品との親和性が低く、浮き上がってしまった感は否めません。(「ガンダム」にいきなり「機械獣」が出てくるような?)

No.7 5点 風桜青紫 2016/01/25 07:45
連城らしいといえば連城らしいなんともバカげた作品。短編ミステリの書き手としては日本最高峰であろう連城三紀彦だけども、長編でこういったネタをやられると拍子抜けしてしまう。人間が七回死ぬトリックなんてのは早い段階で予想がつく(というか考えられる可能性があまりに数少ない)わけだから、結末に関しても驚きよりバカらしさばかりが目だった。言うまでもなく穴だらけの計画で、現実味もクソもあったものではない。真面目に本を読まないタイプの読者は、「見事な構成と流麗な文章」とやらでこの結末も受け入れられるのだろうが、私の場合、連城の自分に酔ったような文章はどうも鼻につく(『変調二人羽織』とかではいいスパイスになってるけど)し、構成についてもそうよかったとは思えない。変にハイなレイコのキャラクター性のおかげで「犯人」一つ一つのエピソードはそこそこ読めるけども、それにしたって作品ひとつを最後まで楽しませるものに足るものではなかったと思う。やはり連城作品には仕掛けの巧妙さを期待するのだし、それが外れれば、なんとも釈然としない気持ちが残るのである。

No.6 7点 E-BANKER 2012/10/14 21:16
1984年発表。
何とも言えない粘着質な語り口とトリッキーなプロット・・・そして後を引く読後感。これぞ「連城の長編ミステリー」でしょう。

~その冷ややかな微笑としなやかな身のこなしで世界的ファッションモデルとして活躍中の美織レイ子が自宅のマンションで死体となって発見された。彼女を殺す動機を持つ七人の男女・・・そしてそれぞれが「美織レイ子を殺したのは自分だ」と信じていたのだ。果たして真犯人は誰なのか? 華やかな外見の裏にさまざまな欲望が渦巻くファッション界を舞台に展開される殺意の万華鏡~

実に、これぞ、まったく、正統派の「連城」作品。
別作品「どこまでも殺されて」では、一人の男が七回も殺されるという不可思議な「謎」に挑戦しているのだが、本作はいわばその裏側(発表順は本作が先)。
七人の男女がそれぞれ一人の女性を殺したという不可思議な「謎・状況」に挑戦しているのだ。
この魅力的な謎を単なるファンタジーに留めず、本格ミステリーとして一定のロジックでもって成立させてしまうのが作者の力量。
そして叙述トリックの極致ともいえる作品全体に仕掛けられたプロットの「妙」。
もう「職人芸」と言うしかない。

今回、中途で何となくトリックの仕掛けには気付いたように、メイントリック自体の難易度はそれほど高いわけではないと思う。
それよりも、例えば「浜野」の人物設定や割振りに感心。こういう細かい点にまで拘ってるのがスゴさなんだろう。

ただ、個人的には「暗色コメディ」や「どこまでも殺されて」よりはやや落ちるかなという評価。
(スゴさに慣れたせいかな。本作が「初連城」ならもっと衝撃を受けていたかも・・・)

No.5 7点 蟷螂の斧 2011/11/18 08:44
このような殺人がどうして可能なのか?という謎の提起は、非常に興味を引きました。設定、仕掛けは実にに面白いと思いますが、メイントリック自体は私の好みでなかったので少し残念な気持ちです。物語の性質上、同じ場面が繰り返しでてきますが、それはカットして犯人側の心理(恐怖)をもっと出した方が良かったのかも(被害者はそれを望んでいたので)

No.4 8点 T・ランタ 2010/01/14 17:23
同じ人物が七回殺されると言う無茶な展開を物理的トリックで成し遂げたある意味傑作と言えます。
序盤が似たような展開なのは仕方ありませんが、『犯人』の一人が罪悪感に苛まれたことから大きく事態が動き出します。

多少無茶でもこんなトリック思いついただけ見事だと思います。
一番印象に残るのはヒロインの偏執的な部分と言えますが・・・

No.3 9点 なの 2008/11/22 15:03
分かってみれば単純なトリック・・・っつーかムチャ
馬鹿ミス扱いされても仕方ない筈なのに、
見事な構成と流麗な文章で傑作にしてます
いやはや感服

No.2 7点 こう 2008/05/17 22:01
 いかにもな連城節炸裂の作品。ただ実際に見破られずに七回死ぬことが可能かどうかはひっかかりますが。またその殺人の動機と個人的には好きではないトリックのための殺人にもひっかかります。ただストリーテリングのうまさは相変わらずで読んでいる間は最後まで一気に読まされました。最近は恋愛小説にシフトしてしまい読んでいませんが連城節炸裂した以前のような推理小説を書いてほしいです。

No.1 7点 ギザじゅう 2004/01/11 00:04
『私という名の変奏曲』 新潮文庫

同じ人間が七回殺される!この強烈な謎に真っ向から答えるところも見事!しかし本書の凄いところは恐ろしい謎が解き明かされたことによって、さらに話の恐ろしさが深くなるところにある。トリックを単なるトリックに終わらせていない。
不満があるとすれば、同じような描写が何度も殺され所か


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