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[ 本格/新本格 ]
造花の蜜
連城三紀彦 出版月: 2008年11月 平均: 7.25点 書評数: 20件

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角川春樹事務所
2008年11月

角川春樹事務所
2010年11月

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2010年11月

No.20 7点 みりん 2023/06/01 00:32
蠱惑的な体と仕草で蜜蜂を簡単に魅了してしまう女王蜂。生まれつきその造花の蜜のような体質を持った女が企てた誘拐は2重3重の意味を持つ正に前代未聞のトリック。
最終章の"造花の蜜"は少し欲張りすぎたか…

短編の神様である連城三紀彦は長編でも決して劣ることのないクオリティでした。

No.19 7点 雪の日 2022/09/30 23:32
先の読めない誘拐ミステリ。私は最後の話もあっていいと思います

No.18 9点 斎藤警部 2021/10/11 13:40
やべ、俺もう死ぬかも。。 誘拐事件らシきモのをモチーフに、妖異で濃厚なスクリュー展開が緊張緩めず延々と味わえた奇蹟の作品。余裕で大きくうねる二重螺旋ストーリー、容赦無いターン、裏を抜けるパス連打の躍動に、いつしか時系列までうねり始めた。。 疑惑妄想の乱反射も凄まじく、結果、ゴージャス過ぎる死にネタの数々を置き去りに。。!! すると半分も行ってないのに早くもドンデン返し、の連続、と言うよりむしろ。。。ですよ!?(当然のように大小いくつもの謎を引き摺ったまま)。 連城は読者を誘拐しようと、或いはむしろ読者に誘拐されようとしたのではないか。 被害者、加害者(この線引きが凄まじい)の思惑、行動に加え警察稼働の部分も冷静ながら熱く、読みどころには事欠かない。 おっと、何なんだよその言葉のぶつけ合いトリック。。。。さて、いつの間にか(?)一部、二部の罠なのか何なのか。。 最終章(かどうかも分からない地平)に読み進むのが怖い!! かへり見すれば、モーツァルトの交響曲第40番(出だしが超有名なやつ)を髣髴とさせる、途中まで緻密に張り詰めまくっていたのを、最終楽章だけ一気に力を抜いて、でも充分キャッチーではあって、全体のバランス取るような、そんな構成だったかも。 しかしこれ地方新聞の連載でやられたら、参りますな。 連城の犯罪ファンタジーに宿る、謎のリアリティ押し切り感覚は凄いです。それを長篇でやり切ったのが本作。

No.17 8点 じきる 2021/07/04 15:50
作者晩年の代表作。文章表現に関しては濃密な初期作と比べるとだいぶ肩の力が抜けた印象ですが、誘拐事件に隠された驚愕の真相にはやられました。あと、連城さんの書く悪女はミステリアスで魅力的ですね。

No.16 5点 人並由真 2020/09/24 03:48
(ネタバレなし)
 長さに比例して、倦怠感が相応に募る作品。
 だいぶ前にブックオフで200円で買った元版(ソフトカバー)は2009年3月の第6版で、帯には、初版の刊行以降に各方面で絶賛されたらしい本書の書評の引用や賛辞が書いてある。
(たぶん自分もそんな景気のいい物言いに気を引かれて、しばらく前にこの本を買ったのだろう。)

 それで先日、部屋の中からその本が出てきたので、後期(晩年?)の円熟の境地の連城を期待して読んだ。そしたら実際の現物はダラダラと長い、くわえて魅力もない登場人物ばかりの筋立てで、いささかゲンナリ。
 
 帯に書いてある「どんでん返しの、信じられないほどの連続技」に関しては、初弾のネタがなかなか。続く2つめが本作の一番のキモだろうと思えるし、自分もちょっと面白いと感じた。けれど読了後、一時間も経たないうちに「数十年前の某・国産パズラーの大技の焼き直しじゃないの?」と気がついて、そこで評価が変わった。
 でもって最後のアレは事前に真相が読めたし、プロット全体の構造からいえばオマケみたいな部分だものね(いいちこさんのおっしゃる「ボーナストラック」「蛇足」という修辞がかなり的確か)。まあそれでも、うまく物語の流れに組み込んであるとは思うけれど。
 
 後期の連城長編は正直、あんまり読んでないんだけれど、自分がよく知ってる80年代のこの作者だったら、同じ物語を3分の2~4分の3の紙幅で書いたようにも思える。その意味でもあまり楽しめたとは言い難い。

 というわけで評者はまだまだ未読の連城作品は多いのだから、きっと、もっとずっと面白いものにも出会えるよね?

No.15 5点 ボナンザ 2020/05/30 19:59
流石に連城だけあって水準以上だが、上巻でもったいぶり過ぎた(伏線のように見える描写が多すぎた)せいか、下巻で別視点になって拍子抜けに感じた。

No.14 9点 猫サーカス 2020/01/27 18:27
二月末、香奈子のもとに幼稚園から電話が掛かってきた。息子の圭太が蜂に刺されて病院に運ばれたという。ところが、改めて確認すると、そんな事実はなく、しかも迎えに来た母親によって帰宅したという。圭太は何者かに連れ去られたのだ。だが、この誘拐騒ぎは、事件の本の序章にすぎなかった。母親と警察をおちょくる犯人の言動、渋谷の交差点における奇妙な身代金の受け渡し、そして意外な事実の暴露と、驚きのサスペンスが延々と続いていく。真犯人ばかりか、誰が被害者なのかも定かでない。怪しい関係がくるくると入れ替わってしまうのだ。「愉快な誘拐」という本気と洒落の境界が曖昧な要素を過剰に含んでおり、逆転の連続技を強引なほど、徹底させているが、それだけで終わらない。どんでん返しの魔術師による傑作といえる。

No.13 9点 青い車 2019/08/15 22:04
 『夜よ鼠たちのために』あたりは個人的にもうひとつハマらなかったのですが、『戻り川心中』とこの『造花の蜜』がスマッシュヒットでした。果たしてこの展開を読めた人がいるのでしょうか?それほど下巻は驚きの連続で、誘拐テーマの型を突き破っています。タイトルの意味が明らかになる流れもきれいです。

No.12 8点 パメル 2017/08/29 01:01
嘘なのか?真実なのか?敵なのか?味方なのか?
複雑な人間関係が露になる中犯人は身代金を減額してきたりして意味がわからなくなってくる
犯人の真の目的は何か?この犯罪の裏に隠されたものは何か?と先の読めない展開に読み進めていっても頭の中はクエッションだらけになる
また大胆かつ緻密な劇場型犯罪にアッと驚かされるしどんでん返しの連続で翻弄される快感が残る
最後の最後まで気の抜けない展開に楽しめました

No.11 7点 いいちこ 2015/03/26 20:39
定番ともいえる誘拐モノとしては最大限にトリッキーでアクロバティックな真相。
事件の構造を活かした反転の妙がこのうえなく鮮やか。
ボーナストラック的な最終章は、本編の着地が美しく決まっているだけに、蛇足の印象は否めない。
また事件があまりにも壮大かつ計画的すぎて、リアリティやフィージビリティの点ではやや弱さも感じるところ。
それでも本作で示された構想力は素晴らしいもので誘拐モノの傑作と評価

No.10 7点 E-BANKER 2013/11/09 16:42
2008年発表。文庫で上下二冊分冊というボリュームの長編。
つい先日、作者の訃報に接し、追悼番組ならぬ追悼読書をしようということで本作をセレクト。
本作は作者最後の作品となってしまった作品・・・(合掌)

~歯科医の夫と離婚をし、実家に戻った香奈子はその日息子の圭太を連れ、スーパーに出掛けた。偶然再会した知人との話に気を取られ、圭太の姿を見失った香奈子は、咄嗟に“誘拐”の二文字を連想する。息子は無事に発見され安堵したのも束の間、後に息子から本当に誘拐されそうになった事実を聞かされる・・・。なんと犯人は「お父さん」を名乗ったというのだ。そして、平穏な日々が続いたひと月後、前代未聞の誘拐事件の幕が開く。各紙面で絶賛を浴びたミステリーの最高傑作!~

これは連城ミステリーの極北なんだろうな。
処女長編「暗色コメディ」以降、自身にしか書けない、書かない、独特の味わいを持つ作品を書き続けた作者の遺作に相応しい・・・
そんな気持ちにさせられた。

とにかく普通の「誘拐もの」ではない。
同じく誘拐ものの「人間動物園」(2002年)も、サスペンス性と連城独特の反転ミステリーを見事に組み合わせたミステリーだったが、本作でも序盤~中盤のサスペンス感とそれ以降の反転の連続が見事に組み合わされている。
そして、終盤からはもうとにかく「反転」の連続と言っていい。
従前に見せられていた事件の構図がつぎつぎと否定され、違う側面が作者から提示されいく。
これは「万華鏡」とでも表現すればいいのか、「多面体」とでも表現すればいいのか・・・
最終章を前に、一応事件は収束を迎えるのだが、子供が誘拐されるという“普通の”事件が、まさに前代未聞の“誘拐事件”であったことが明らかにされるのだ。

こういうプロットって、連城にしか思いつけないんじゃないか?
直木賞受賞という確かな「筆力」と相俟って、こんな作家はもう出てこないんじゃないかという気にさせられた。
最終章(「最後で最大の事件」)については・・・まぁ蛇足のような気もするし、作者の最後の稚気のような気もするし・・・
(必要かどうかと言われると迷うところだが・・・)

もう新作は読めないんだよなぁ。
後は未読の作品を丁寧に読んでいこうと思います。
最後にもう一度、不世出&孤高のミステリー作家・連城三紀彦に敬意を評して・・・合掌。

No.9 7点 take5 2013/09/22 16:07
誘拐物の十指に入ると考えています。
連城作品は戻り川のイメージが強くて
個人的には意外な安堵感?バカミスっていう方までいましたからね。

No.8 8点 蟷螂の斧 2012/11/21 12:42
誘拐物の傑作だと思います(マイベスト3に入ります)。二重三重に仕掛けられた大小のトリックに魅せられました。最終章は、続編のようなものであり、本編・続編の二つを通して題名「造花の蜜」に繋がっていくものと思いました。

No.7 7点 mohicant 2012/10/17 00:22
ハラハラする展開で一気に読み上げてしまった。

No.6 7点 isurrender 2011/11/03 12:51
誘拐ものとしてトリックも優れているし、連城作品らしく人間関係のドロドロした感じの描き方も巧い
最後のボーナストラックのような事件はない方が良いのではないかと思い、どういう意図があったのかよくわかりませんでした

No.5 6点 シーマスター 2011/10/12 22:34
騙しの構図を情念まみれで描いた連城らしい誘拐ミステリー。

大した作品だとは思うが個人的には、誘拐犯の不可思議な言動以外は、全体的にダラダラしてクドクドの読み物に感じられた。もちろんこういう叙情的なミステリーに感じ入る人がたくさんいるだろうことは理解できる。
意外な構図も「人間動物園」を読んでいると、あっと驚くというほどには感じられず。所々の不自然さもかなり引っかかるし。

ボーナストラックのような最終章の事件は、これはバカミスでしょう。ネタが明かされたときには思わず笑ってしまった。主人公の陰鬱な語り口・心情展開とネタのギャップ・・・こういうのは結構好きだな。

No.4 6点 2011/05/27 10:02
上巻は誘拐サスペンスでノンストップ、下巻は一転心境描写でドップリと小説世界へ。そして真相がこれまた強烈。何を述べてもネタバレになりそうなので多くは語りませんが、ファンからすれば、これこそ連城マジック炸裂ということなんでしょう。
と絶賛したいところですが、いくらなんでもこんな壮大な事件はあり得ないでしょう。どんな文章力、表現力をもってしても、このストーリーに現実感は出し切れません。例えば時代設定を変えるなどすれば、気にならなかったのではと思うのですが...
でも楽しめたので点数はこんなところです。

No.3 7点 江守森江 2010/04/20 01:55
この作品を存分に楽しむ為に連城ミステリを読み進めてきた。
章立てでは明示しないが、三部構成の誘拐物。
総ての登場人物が腹に一物あり怪しく描かれ、家族愛・金銭欲・捜査模様を絡めて読者を揺さぶる。
第一部は真っ当な誘拐サスペンスとして描かれ表面的な結末を迎える。
その第一部を布石にした第二部では、視点人物の変更で倒叙物的に犯行に至る過程とその先を描きながら‘驚愕の反転’を齎す。
ここで余韻を持たせながら完結させていれば新たな誘拐ミステリーの金字塔として満点だった。
しかし、ここまでを捨て駒にして、もう一撃を仕込んだ第三部(最終章)は(ドラマ等で何度か観た手口で)ミエミエ過ぎて残念に思える。
それでも、タイトルに絡め余韻を齎すラスト数行が秀逸なので不要と断言出来ずに悩ましい。
第三部の扱いで満点にはしなかったが、存分に楽しめた事は間違いない!!

No.2 9点 ymn 2009/07/26 16:21
満足です。
真相が明らかになると、作者の手法に美しさを感じました。
ラストの話はなかった方がよかったかなという気がしましたので、マイナス一。

No.1 7点 abc1 2009/04/30 01:50
予想のつかない展開だったので楽しめました。
でも疑問点もいくつか。どうして子供は「彼女」を「本当の母親」と言ったのか、など。そこらへん突き詰めていくと、いくつか矛盾点があるようです(まあ、大抵のミステリに一個や二個はあるんですが)。


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