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[ 本格/新本格 ]
夜よ鼠たちのために
連城三紀彦 出版月: 1983年03月 平均: 7.26点 書評数: 27件

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実業之日本社
1983年03月

新潮社
1986年04月

角川春樹事務所
1998年11月

宝島社
2014年09月

No.27 8点 みりん 2023/03/28 13:24
表題作と「化石の鍵」「開かれた闇」の3つが面白いです。

No.26 5点 虫暮部 2022/09/27 12:44
 期待した程ではない。物語の中で技巧が浮いていて、ここで作者が読者を騙しに来ているな、と言うポイントが何となく見えてしまう。そこで気持良く騙されることが出来ないのは、まぁ相性の問題だろうか。中では「二重生活」が良かった。

 ネタバレするけれども、「二つの顔」は何か変だ。
 結末で明かされる妙に入り組んだ殺人計画は、あまり意味が無いと思うのだ。
 ミステリにその突っ込みは野暮だけれど、当該事件では、
①死体を一つ処分した。②女が一人行方不明になった。
 これらの点について犯人自身が、
①誰も踏みこんだことのないような林の中に埋めた。②不正が発覚すれば、皆、そのために逃走したとでも考えてくれるだろう。
 と述べ、自分は疑われないと考えているらしい。ならば、普通に殺して埋めるだけで良いのではないか。
 せいぜい、事件に巻き込まれることで、いつ殺るか? 今でしょ! と背中を押される効果があったくらいのものだ。または、主人公に対して犯人が悪意を持っており、翻弄して苦しめること自体が目的の一つ、ならまだ納得出来るのだが。

No.25 7点 パメル 2021/08/16 08:16
男女の深い情念によって起こる殺意、二転三転する展開と驚愕の結末が楽しめる9編からなる短編集。その中から5編の感想を。
「二つの顔」夜半、画家の真木のもとに、妻の契子が新宿のホテルで殺害されたと警察から電話が入る。だが、そんなことはあり得ないはずだった。契子は真木自身が自宅の寝室で殺したのだから…。冒頭の謎は魅力的だが、真相は予想しやすいし、ご都合主義的な部分がある。
「過去からの声」航空会社副社長の息子が誘拐され、身代金500万円が要求された。誘拐事件に隠された真実は…。現在の誘拐が刑事たちの過去とリンクして、予想外の真相を浮かび上がらせる逆転の構図がよい。
「夜よ鼠たちのために」病院の院長とその娘婿が、白衣を着せられ首に針金を巻きつけられた格好で殺された。それは妻を病院に殺された男の復讐劇だった…。巧妙にカモフラージュされた事件の真相が胸に突き刺さる。脅迫者のホワイダニットが強烈なインパクトを残す。
「二重生活」牧子は6年間の関係を続けた修平と荻窪の屋敷で修平の帰りを待つ女・静子への復讐計画を立てる。犯罪計画は着々と進むが…。見ていたはずの絵柄が、騙し絵だったことが明らかになる終盤に驚かされる。
「代役」映画やテレビで活躍する支倉峻は、子供を失った自分の妻に子供をつくらせるために、自分によく似た男を探していた。そんな折、タカツシンヤという男を紹介される…。支倉とタカツの立場が鮮やかに反転するプロットは秀逸。
ベストは「代役」次点で「過去からの声」。

No.24 8点 じきる 2021/06/08 07:02
連城の超絶技巧をこれでもかと味わえる短編集。
若干、技巧に走り過ぎるあまり空回りしているような部分はあるのですが、総合的に見れば良い作品だと思います。

No.23 7点 ミステリーオタク 2020/05/26 21:54
かなり以前に『戻り川心中』を始めとした代表的な連城作品を連続して5、6冊読んだが総じて「どーも自分には合わんな」というのが率直な感想だった。が、本短編集が未読だったことがずっと引っ掛かっていたのでこの御時節に読んでみることにした。


[二つの顔] よくできていると思うが、やはりストーリーテリングが自分に合わず、イマイチ乗れなかった。

[過去からの声] これもよくできているし、前作と違ってリーダビリティも非常に高かったが、最近読んだある短編の元ネタであるという偶然に驚いた。

[化石の鍵] ちょっと読みづらいけど・・・よかった・・

[奇妙な依頼] これはダラダラ感が否めず。それに作者の癖でもある「クドさ」も少し鼻につく。

[夜よ鼠たちのために] これはムチャクチャだ。そもそも白血病と脳腫瘍を同じ医者が診療するわけない。

[二重生活] この辺までくると、もう騙すために騙す感じで・・

[代役] 現実味が乏しいことこの上ないし、(毎度のことだが)ややこしいが、よくできていると思う。

[ベイ・シティに死す] 首を捻りたくなる凡作。

[ひらかれた闇] 40年前の暴走族ってこんなんだったのか?ショボすぎ。
暗闇のダンスは一体何だったのか?
「マッポは信用できねえ」って何?


デパートの屋上に遊園地があったり、キャバレーでレコードがかかってたり、和子と葡萄酒を飲んだり・・・・


作者の別の短編集『美女』では「スゴい」と感じた作品が2、3作あった記憶があるので、より評価の高い本書には相応の期待値で臨んだが・・・・・あるいは自分が擦れてしまったということだろうか。

No.22 6点 レッドキング 2020/05/04 11:25
・「二つの顔」 自宅で妻を殺して庭に埋めた男、警察から「奥さんがホテルで殺されている」と電話が・・5点 
・「過去からの声」 玉突き(ひき)二重誘拐事件。4点 
・「化石の鍵」 男女と娘のメルヘンのホワイダニットと、鍵のトリックを巡るハウ(ちとせせこましいが)フーダニットの錯綜。7点 
・「奇妙な依頼」 夫婦双方から浮気調査依頼を受ける羽目になる二重探偵の顛末。「赤毛連盟」発展型てとこか。7点 
・「夜よ鼠たちのために」 名作ハードボイルドの様な実にカッコいい標題。が、中身はイマイチ叙述トリック。4点 
・「二重生活」 妻と夫と愛人、愛人と男と妻、夫と妻と男、男と愛人と夫・・4人の男女の四重三角関係の叙述トリックかつ転倒犯罪。8点
  で、平均とって、(5+4+7+7+4+8)÷6=5.83333・・・四捨五入して、6点

No.21 5点 雪の日 2020/05/03 21:17
面白いのだが、氏の他の作品のレベルが高すぎる

No.20 6点 いいちこ 2019/09/07 16:55
各作品の終盤における伏線の回収は見事だが、舞台設定・プロットがリアリティに欠け、ご都合主義が目立つ印象からこの評価

No.19 7点 メルカトル 2019/08/10 22:31
脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。なぜこんな姿で殺されたのか、犯人の目的は一体何なのか…?深い情念と、超絶技巧。意外な真相が胸を打つ、サスペンス・ミステリーの傑作9編を収録。『このミステリーがすごい!2014年版』の「復刊希望!幻の名作ベストテン」にて1位に輝いた、幻の名作がついに復刊!
『BOOK』データベースより。

読めば読むほど味の出る逸品揃いの短編集。
雰囲気はやはり連城だけれど、思ったよりずっと本格寄りの作品が多く、いずれ甲乙付けがたい魅力を持ったものばかりです。表題作を始め、ほぼ全篇反転が味わえます。しかも相当じっくりと推敲されたと思われ、なかなか先が読めません。今現在こうした男女間の隠微な関係性を浮き彫りにした作風と本格ミステリを合体させたような作品を描く作家が見当たらなくなってしまったのは、残念な限りです。しかし、違った形で同じようなテーマに挑戦している人は多分多いと思います。されど、その違いは歴然としており、恋慕或いは慕情、男女のもつれるような機微を書かせたら連城の右に出る者はいないのではないでしょうか。少なくともミステリ界に於いては。

No.18 9点 斎藤警部 2019/02/14 06:31
どれもこれも本当に、初恋の幻のように儚い分量の短編なのだが。。。。。。 全体通して、対称性へのこだわりがやはり目を引く。線対称でなく点対称を感じさせる構図の作品も目立つ。連城短篇にしては、純文学的薫りは薄い。けどそのぶん、彼の包み隠さぬミステリ魂の熱のこもった核が露出しているようでヒリヒリする感覚が味わえる。


二つの顔 7.3点
このエンディングは沁みるねええ、心理の移り変わる感じにちょっとしたSOW。純粋なミステリ要素は惜しくもその領域に及ばずだが充分に感心。しかし感心レベルでは満足しきれないのも連城クライテリア。 スーパーナチュラル⇒ホラー⇒サイコ⇒本格 と推移して最後やっと文学の味に落ち着きます。嫉妬対象の可能性って、こんなに深いんだ。。 しかし不可能犯罪と心理小説をよくぞここまで継ぎ目無く糾合させ尽したたもの。指紋のくだり、わざと露骨にして更なる捻りに繋げた、って事か?

過去からの声   7.8点
わかった、某主役候補とその○○○の葛藤大震災が滲み出て来ない恨みの秘密は。。でも露骨に行かない、この、空気のようなミスディレクション。そこが心理の罠、ってが。。。。 某現代人気作家のいい時の短篇を彷彿とさせます。とは言えこの作品だけは短篇に凝縮するよりむしろ”●●のある●●の●●”にもっと焦点当てた(それはミスディレクションでもある)社会派長篇で、見せ場たっぷりの結末どっかーんでやってくれても。。 誘拐の形の可能性って。。こんなに広いんだ。。。。 よし、俺も。。

化石の鍵 7.2点
“出だしの密度”最高記録への挑戦、俺は目撃したぜ。 構成も興味を引く中盤の大型展開を経て、、ところがこの結末の、都合良過ぎるブライトエンディングは。。(俺は認めん! 笑) でも、大味なイヤミス反転風にスッキリさせ切らずしっかりしこりを残してくれるのが良心だね。小さい心理トリックの置き場所、間違ってないぜ。

奇妙な依頼 8.8点
『美女』に入ってそうな、これぞ対称美が貫く一品。 一定のシビレる結末もどきからの、二重底の枠組み化けっぷりはブラウン神父のピカピカ上級応用だ。それにしても立体的で凄まじい真相力!! まるでいい意味で佐野洋のようにありふれた題名が最後に、ここまで化けるんだな、ハァ~。 古今ミステリのプロット方程式をこねくり回して脳内実験してるうちにスポッとはまるように出来上がったのかなあ、この物語構造は。 夫に妻の素行調査を依頼された探偵は、まるで真夏の夜のように何度も寝返り、裏切り、、  “依頼自体が謎”の可能性って、こんなに。。 小さな装身具が物語展開で表情を変える小道具遣いもニクい。

夜よ鼠たちのために 9.4点
なんやねん煦文学やんベイベどうですよ、コレ。 一ヶ月 ぅ、何年か。。 そして、取り返しのつかない、、その暴露進行は一向に加速に与せず。。 ゆったり行こうぜ、短篇だとてゆっくりじわじわといきたい。だけどあっという間に読めてしまう。。 解決篇よりはるか前の謎篇ですでに二プラスα重底の。。 恐喝のネタの可能性って、無限大だね! と勇気が湧いて来ますね。 医師たちはなぜ殺される。。。。 な、何故そっちの奴まで手を掛けるんだ。。。 アンタ、狂うとるんか。。

二重生活  10点超え
●●の自分にとってはチョィとツーンと来る話。なんか変な台詞言うな、と文脈さんにカマってみた直後、二つの大反転が堂々続いたのには参った! 王⇒長嶋か、憲剛⇒家長か。 更に、何なのよその倒錯被せ! 涙。。。。?? クリスチアナのジェミニーなんとかさえ何故か彷彿とさせる最高の。。。 要はフリーセックスだろ、なんてのは野暮ですよ。 その苗字んとこには点々がありゃよぐね? って思う箇所があったんだよな。 沈んだ。。。。。。。。 よくさ、叙述トリックってのは読者の偏見を炙り出して完膚なきまでに…って言うけど。。  x角関係の可能性って、本当に。。。。。

代役 8.7点
妙に鮎哲っぽい導入部。。。いやあ、こりゃストーリーの体積がでかい。ほぼ梗概だけで出来てね? 話の体脂肪率2%切った?? 小出しに拘った意外な物語要因の急展開披瀝は動体エネルギー奔出させるに飽くこと無し。 長さが気にならない文学的エピローグのあと更にまさかの炸裂か蠢きでもあったら、、もしそうだったら10点満点掠め取ってたな。。、でもじゅうぶん最高さ。 しかし、大胆な物語構成だ。が、ひょっとしてこれ、書きながら結末考えてったクチだったりしないか?(連城なら出来そうだ) ”或る子作り”に纏わる特殊な動機が、振り返れば全ての目眩ましの発端なわけか。。。。 x人y役の可能性って、本当に。。痛快ハードアクション的展開の趣もあり、昭和のうちに映画化されてたら素敵かな?、的な??

ベイ・シティに死す 10.0点
“私は今夜中に、決着をつけたいと言った”
こんな ‘もう一発’! いやでも記憶に残るその小道具の属性が、まさかの。。。。。そのタイミング、その言葉、その情念。。。。いやお前じゃない、お前じゃないんだよ。。。。と読者の情を手向けた直後、嗚呼。。。。。。しかし、物語の締まりはそのせいで最高の水準まで跳ね上がった。 終結にむかってのたかだか数ページ、単位あたりの言葉の殺傷力がまぼろし級の君臨継続を貫徹した。チャラい題名と重厚過ぎる内容のギャップにゃあクラクラします。でもこの題名で少し損してるのかも。もしもっと渋いタイトル付けるなら。。。。  清張風”わざと予知させる”サスペンス研磨と、まさかの大反転、この二つを共存させる術はどこの洞窟の魔法だ。。しかし一口に反転と言っても本当に奥が深いんだなあ。。。。日本的HBと日本的本格の融合かも知らん。 罪なすり付けの可能性って、本当に。。。 トリックが凄過ぎて人間ドラマがちょっと押し切られたきらいは有るが、満足。

ひらかれた闇 8.1点
妙にぎこちなくユーモアミステリ風の導入を引き摺ってカラフル&キュートなアンバランスの迷宮へ。。。SJK(主人公)のリビドーがあわや溢れ出しそうな瞬間の描写は秀逸だったな。 巧すぎて、幼すぎて、何やら何ものかのパロディめいた佳きアンバランス。しかしなあ、そんなこんなでも自若げに、このくらいはキッチリ凝るんだよなあ連城は。 彼ならではのズキズキは無いが、キラキラは充分ある。そしてこの、タイトルの意味ねえ。。 そんな犯人がそんな動機を殊更に引き寄せる(!)のか、って違和感さえ霞んだ。ところでそのシング&ダンスは何なんだ(笑)。


どうにもこうにも筆力が光るね。お蔭で所々リアリティが火の車になってる舞台裏に気付かせない。それとなんか、ミステリとか騙し絵とかの骨格が圧倒的過ぎて男女がどうしたとかのイメージがさほど記憶に残りゃしねえピースが目立つな。 ハイベイビィ、アイムノット叙述トリック、アイムノット嫌ミス、アイムジャスタ.. 犯罪ファンタジー。。。。

No.17 7点 ミステリ初心者 2018/11/21 11:41
 ネタバレをしています。

 どの話も、長編でもおかしくないレベルのどんでん返しやミスリードを含んだ短編集でした。非常に面白かったです。

 ただ、1冊の本としてみた場合、推理小説としての質が似ている話が多かったです。
 また、すこしだけ暗い話が多いですね。これはただの好みの問題ですが。

No.16 8点 sophia 2017/03/15 23:28
宝島社版の9編を読みました。最初の4編までは9点ないし10点の手応えを感じていたんですが、5編目の表題作であれ?という感じになりました。いわゆる叙述トリックものですが、人物誤認のさせ方が強引です。あんな書き方をしたらそれはみんな騙されるでしょう。「代役」もどんでん返しを狙いすぎて設定や展開に無理が生じています。あの男のどこにそんなにモテる要素があるのかが分かりませんでした。「ベイ・シティに死す」の恭子は何がしたいのか。この短編集で最も腹立たしい人物でした。ラストの「ひらかれた闇」は入れなくてよかったのでは。何か色々と痛々しかったです。
短編集全体の感想は、同じようなテイストの話が多いということです。ほぼ全ての話に「入れ替わり」が出てきます。中でも「奇妙な依頼」「二重生活」「代役」は着想がほぼ一緒のように感じました。ただでさえ複雑な話ばかりなのに、同じようなオチが続いて後半は段々と読むのがしんどくなっていきました。前半9点、後半7点でトータル8点といったところでしょうか。もう少し全体の緩急が欲しかったです。やはり「戻り川心中」には及ばないのではないでしょうか。

No.15 6点 ALFA 2017/03/06 15:55
アクロバティックな反転を駆使した9編。
ここまでくるとリアリティは横において論理の曲芸を楽しみたい。
評点は「二つの顔」「過去からの声」が7、「奇妙な依頼」「夜よ鼠たちのために」「代役」が6、他は5。
表題作は長編にしてもおかしくない構成と大きな反転は見事だが、犯罪のもとになる行為が陰惨で後味が悪い。
フェイバリットは「過去からの声」。後味すっきりというほどでもないが。

No.14 7点 りゅうぐうのつかい 2016/11/29 16:53
いずれの作品も、最後まで読むと勘違いや誤認に気づき、意表を突く反転構造を持っていることがわかる高水準の短編集。
個人的には、「過去からの声」が一押し。

「二つの顔」
絵の中の理想の女に取り憑かれた画家の信じやすい性格を利用した犯罪。
冒頭の不思議な謎から物語に引き込まれる。
警察の○○のチェックがこんなにも杜撰だとは思えないけど。

「過去からの声」
誘拐事件のからくりに関する作者の斬新な発想に驚愕。

「化石の鍵」
新しく取り換えられた鍵を巡る謎。

「奇妙な依頼」
浮気調査を依頼された興信所の社員が、依頼者とその対象者との間で買収され、何度も寝返る話だが、最後に明らかとなる依頼理由の逆転には意表を突かれた。

「夜よ鼠たちのために」
医療過誤で妻を失った男が、医師たちに復讐する話。
最後まで読むと、あることに勘違いしていたことがわかる。
石津家のお手伝いさんが耳にした電話の会話内容が意味深長。
伊原が会議室に移動してからの最初の会話に矛盾があるのでは?

「二重生活」
男女2人ずつの入り組んだ恋愛模様。
最後の方になると、ある事柄を誤認していたことがわかる。
動機も対象も逆転する。

「代役」
パイプカットをした男性が、子供をつくるために自分と瓜二つの男性を妻にあてがうという奇妙な話。主人公が妻を殺そうとして現場に向かう場面になると、話があらぬ方向に変調し、いったいどうなっているのかと戸惑った。鏡を見ているような反転構造の真相。

「ベイ・シティに死す」
元恋人と弟分に裏切られ、無実の殺人の罪を帰せられたヤクザが復讐する話。
元恋人から、意外な真実を明かされる。

「ひらかれた闇」
麻沙先生の推理には、相当な飛躍を感じるが、犯人の犯行理由には作者らしい倒錯した論理が隠されていた。

No.13 8点 tider-tiger 2016/09/24 17:47
非常にレベルの高い短編集だと思います。さまざまなパターンの操りと反転が楽しめる一冊です。マンネリのようでいて、少しずつ軸をずらしていく工夫が素晴らしい。ただ、こちらの方がストレートにミステリを堪能できると思うのですが、自分は戻り川心中の耽美性、物語性に軍配を上げます。
以下寸評 ネタバレありません

「二つの顔」 導入で不可能犯罪であると思わせておいて、きちんと最後まで描き切っている。良い作品だが、本作品集内にいると普通のレベルになってしまう。
「過去からの声」 意表を突かれる若い刑事の過去と、そこから推理を組み立てていく過程が斬新で面白かった。ただ、自分はいい話だとは思えなかった。
「化石の鍵」 底冷えのする話。本作品集の中で二番目に好きな作品です。
「奇妙な依頼」 目立った瑕疵がなく完成度が最も高い。しかもこじんまりとはしていない。私がベストだと思うのはこれです。
「夜よ鼠たちのために」 首をかしげたくなるような部分が二ヶ所あったけれど、物語としてはけっこう好き。ラストが素晴らしい。犯人の深い情念には胸を衝かれるものがあった。長編で読みたい作品だった。
「二重生活」 ミステリとしては評価したいが、あまりにも醜い。誰がどうなろうとどうでもよくなってしまう。 

No.12 6点 青い車 2016/05/24 17:52
 初の連城三紀彦作品。確かに面白いです。表題作をはじめ、どれも反転する事件の構図に驚かされ、作者の技術を感じます。ただ、全体的に暗くて重い話が多すぎるような……。いや、そういう筆致が売りなのかもしれませんし、現に上質な文章だとは思うのですが、もうちょっとスカッとした結末のものが読みたかったです。作者の責任ではなく好みの問題ですね。米澤さんの『満願』とかはもうちょっと気軽に読めたのですが。適度に重厚で適度にライトな文体を求めるのはワガママでしょうか?

No.11 6点 haruka 2016/04/21 23:42
どれも良く練られた作品だが全体的に物語が暗い。

No.10 10点 夏みかん 2016/02/11 20:37
ともだちに勧められたのが出会いです
これで連城三紀彦のファンになりました(亡くなられていたのが残念・・)
タイトルにもなってる鼠たちが一番好きですが、どれもかなりの出来の短編ばかりだと思います

No.9 7点 まさむね 2015/06/27 19:05
 高水準の短編集。「戻り川心中」とは違うタイプが並んでいるのが嬉しい(?)ですね。良作ぞろいでベストは選びにくいですが、印象に残るといえば表題作ですかね(現実味はともかくとして…)。後半の8と9は一段落ちる印象かな。
1 二つの顔:心理系かもと思わせておきつつの、美しく翻す反転が見事。
2 過去からの声:個人的に、誘拐モノといえば連城&岡嶋。流石の出来栄え。
4 奇妙な依頼:ハードボイルド調。でも真髄はラストに明かされるホワイ。
5 夜よ鼠たちのために:とある1行で眩暈が。二度読み必至の良作。現実的には不可能と思う部分もありますが、それを上回るダブルの仕掛け。
6 二重生活:これも眩暈レベルの良作ですが、5と似たタイプだけに、ちょっと割を食っているような気が。
7 代役:これも頭がクラクラする展開。ここまでやるか!と驚きました。
8 ベイ・シティに死す:ハードボイルド調。捻りは弱め。
9 ひらかれた闇:この短編集の中では異色。あまり好きなタイプではない。

No.8 7点 yoneppi 2015/03/28 22:50
噂にたがわぬ良作短編集。贅沢な1冊。


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