海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 短編集(分類不能) ]
瓦斯灯
連城三紀彦 出版月: 1984年09月 平均: 6.20点 書評数: 5件

書評を見る | 採点するジャンル投票


講談社
1984年09月

講談社
1987年09月

No.5 9点 じきる 2021/09/29 19:30
連城らしい残酷な反転を見せる「花衣の客」と、ラストシーンの美しさが印象的な「炎」が素晴らしい。
その他にも美しい短編の揃った傑作作品集です。

No.4 6点 2020/09/16 21:03
 直木賞受賞作『恋文』に続き刊行された、著者九番目の作品集。1983年頃に「別冊婦人公論」ほか各誌に書かれた短篇を纏めたもので、表題作を含む〈炎三部作〉および「花衣の客」、それにパリ人肉事件をアレンジした異色作「親愛なるエス君へ」など全五篇を収録している。長篇だと『敗北への凱旋』に取り掛かっていた頃、短篇では『少女』や『恋文』所収の各作品と、一部執筆時期が被る。講談社から出版された初期の和装五冊(『戻り川心中』から『夕荻心中』まで)の中では、最も地味な短篇集である。
 作者言うところの「火にまつわる三部作(『瓦斯灯』『炎』『火箭』)」は、情念を炎に例えた古風な恋愛シリーズとして纏まっており、ミステリとしてはそれ程ではないが端正な佳品揃いで読み応えがある。特にどこまでもすれ違いを繰り返す峯と安蔵、幼馴染みの二人の姿を描いた表題作は出色。
 〈八十篇近くも書いているが、好きだと言える作品は片手でも余るほどしかない〉という著者が、「ごく小さな作品ではあっても、今現在、僕自身が一番愛着をもっている」と語るもので、時代の流れとともに消えゆく運命の〈点灯夫〉という職業の切なさや哀しさが、〈後ろ姿にはっきりと老いの影が見てとれる〉安蔵の、最後の儚い抵抗に重なってゆく。華々しい諸作の影に隠れて目立たないが、紛れも無い傑作である。
 『花衣の客』は連城得意の反転ものだが、事件の構図よりも真実が判明した後の虚しさだけが心に残る。昭和のはじまりから終戦直後まで、致命的な誤解から二十二年もの歳月を空費してしまった主人公・紫津。"女の業"として片付けてしまうにはあまりに空ろな作品。
 最後の『親愛なるエス君へ』は、時代設定も離れており集中でこれだけが異質。ファン評価は高いようだが実のところそこまで買えなかった。色々難しいのかもしれないが、ここまで製本に凝ったのなら集中のムードや全体の統一性にはより気を遣って欲しい。採点はその分の点数をいくらか割引いたものである。

No.3 6点 ALFA 2018/04/23 10:07
表題作を含め5編からなる短編集。
恋愛小説と評されるが、私は恋愛仕立ての犯罪のないミステリとして楽しめた。
時間のトリックや若すぎる柄の着物など、具体的な要素がある分、ウェストマコットよりクリスティに寄っている。
フェイバリットは「花衣の客」。これに過去の犯罪の要素を加えたら面白い本格ミステリになるなあと考えながら読むと楽しい。
それにしても「親愛なるエス君へ」は異質。「夕萩心中」の中の「陽だまり課事件簿」もそうだったが、統一されたトーンを持つ短編集に全く異質なものを入れる出版社の神経がわからない。
版権の問題もあるのだろうが、短編集はそれ自体が一つの作品であるとの意識をもって編んでほしい。

No.2 5点 蟷螂の斧 2016/04/21 20:11
裏表紙には恋愛推理小説とありますが、ミステリー度は薄い。各物語には、それなりの反転がありますが、それよりも男女間の心の機微を楽しむといった作品集ですね。「親愛なるエス君へ」だけ異質な作品です。本作は”食の奇譚”として手に取ったものです。

No.1 5点 こう 2012/02/27 01:17
 男女の色恋を扱った作品集でミステリ的技巧はありますがミステリとはいえない作品が並びますが唯一「親愛なるエス君へ」のみはミステリと言えます。
 超絶技巧は流石ですが実際に起こったパリの人肉食事件をモチーフとした作品で読後感は悪く読者を選びそうです。


キーワードから探す
連城三紀彦
2022年12月
黒真珠 恋愛推理レアコレクション
平均:7.00 / 書評数:3
2019年08月
虹のような黒
平均:6.00 / 書評数:1
2018年03月
悲体
2017年09月
連城三紀彦レジェンド2
平均:5.00 / 書評数:1
2016年09月
わずか一しずくの血
平均:5.50 / 書評数:4
2014年10月
女王
平均:6.25 / 書評数:4
処刑までの十章
平均:5.67 / 書評数:6
2014年03月
小さな異邦人
平均:6.31 / 書評数:16
2008年11月
造花の蜜
平均:7.25 / 書評数:20
2006年06月
嘘は罪
2003年05月
流れ星と遊んだころ
平均:6.25 / 書評数:4
2002年04月
人間動物園
平均:5.67 / 書評数:12
2002年02月
白光
平均:6.32 / 書評数:19
2001年07月
夏の最後の薔薇
平均:6.00 / 書評数:3
1997年11月
年上の女
平均:4.00 / 書評数:1
1997年03月
美女
平均:6.67 / 書評数:12
1996年02月
隠れ菊
1994年12月
前夜祭
平均:7.40 / 書評数:5
1994年11月
紫の傷
平均:7.50 / 書評数:2
1994年10月
花塵
平均:6.00 / 書評数:1
1994年04月
終章からの女
平均:6.00 / 書評数:5
1993年12月
牡牛の柔らかな肉
平均:5.67 / 書評数:3
1993年07月
顔のない肖像画
平均:6.90 / 書評数:10
1993年05月
明日という過去に
平均:5.50 / 書評数:2
1993年04月
落日の門
平均:7.00 / 書評数:4
1993年03月
愛情の限界
平均:6.00 / 書評数:1
1992年04月
美の神たちの叛乱
平均:6.50 / 書評数:2
1991年07月
ため息の時間
平均:4.00 / 書評数:1
1990年11月
褐色の祭り
1990年05月
どこまでも殺されて
平均:7.00 / 書評数:5
1989年06月
たそがれ色の微笑
平均:7.00 / 書評数:1
1989年04月
飾り火
平均:7.00 / 書評数:1
1988年08月
黄昏のベルリン
平均:5.80 / 書評数:5
1988年02月
螢草
平均:6.00 / 書評数:1
1987年04月
花堕ちる
平均:6.00 / 書評数:1
1986年09月
離婚しない女
平均:5.00 / 書評数:1
1986年07月
もうひとつの恋文
平均:6.00 / 書評数:1
1986年06月
青き犠牲
平均:6.33 / 書評数:6
1985年03月
夕萩心中
平均:6.43 / 書評数:7
1984年09月
瓦斯灯
平均:6.20 / 書評数:5
1984年08月
私という名の変奏曲
平均:7.19 / 書評数:16
1984年05月
少女
平均:5.75 / 書評数:4
恋文
平均:6.14 / 書評数:7
1983年11月
敗北への凱旋
平均:6.33 / 書評数:9
1983年08月
宵待草夜情
平均:8.00 / 書評数:19
1983年03月
運命の八分休符
平均:6.40 / 書評数:10
夜よ鼠たちのために
平均:7.26 / 書評数:27
1982年06月
密やかな喪服
平均:5.33 / 書評数:3
1981年09月
変調二人羽織
平均:6.71 / 書評数:14
1980年09月
戻り川心中
平均:8.21 / 書評数:53
1979年06月
暗色コメディ
平均:6.84 / 書評数:19