皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 社会派 ] 天使の傷痕 |
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西村京太郎 | 出版月: 1965年01月 | 平均: 6.11点 | 書評数: 9件 |
講談社 1965年01月 |
講談社 1975年01月 |
講談社 1976年05月 |
講談社 1987年02月 |
講談社 1999年03月 |
講談社 2015年02月 |
No.9 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2023/11/01 12:34 |
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本格+社会派の位置づけでいいと思います。1965年の作品で58年も前の話なのですが、人間の気持ちは当時とそれほど変わっていないのではないか?とやるせない気持ちになってしまいました。 |
No.8 | 5点 | nukkam | 2017/12/01 08:42 |
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(ネタバレなしです) 「寝台特急殺人事件」(1978年)を皮切りにトラベルミステリーの大ブームを起こした西村京太郎(1930-2022)ですが、そこに至るまでには社会派推理小説、スパイ・スリラー、本格派推理小説など試行錯誤の時代が続いています。1965年発表の長編第2作である本書は本格派推理小説と社会派推理小説のジャンルミックス型です。プロローグとエピローグを挟む全12章構成で講談社文庫版で300ページに満たない短さです。警察による地道な捜査によって犯人を絞り込む10章までが本格派で、読者が推理に参加する余地がない上にトリックはかなり無理があるように思えてあまり感心できません。しかし残り2章での社会派要素は非常に印象的です。登場人物たちの沈黙の何と重苦しいことでしょう。 |
No.7 | 5点 | いいちこ | 2017/11/06 20:55 |
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著者の他の作品にも言えることだが、本作は「描写に無駄がない」というより、「単に描写がなさすぎる、直接的すぎる」だけだろう。
全体として描写が極めて少なく、登場人物の心理描写が直接的すぎることが、高いリーダビリティを生んでいる反面、プロットのリアリティの欠如や作品の奥行きの無さ、言葉を選ばずに言えばテレビの2時間ドラマ的な安っぽさという副作用につながっている。 メイントリックも非常にチープで、フィージビリティは大いに疑問。 全体として見るべきところもある作品だが、それ以上に欠点が目に付く印象 |
No.6 | 6点 | まさむね | 2017/07/12 20:56 |
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昭和40年度の江戸川乱歩賞受賞作。
本格からの社会派ミステリといった印象です。フーとハウは結構わかりやすいのですが、ソコだけを読みどころにしていない辺りに、若き西村京太郎氏(50年以上前なんですねぇ)の熱意とセンスを感じます。リーダビリティも高く、読者にストレスを感じさせません。その後売れっ子作家となる片鱗を十二分に示しています。 |
No.5 | 8点 | 風桜青紫 | 2016/04/02 22:29 |
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「本当に愛しているならば、女が男を殺人のアリバイに利用するのか」だの「現代ならば、ミステリーも殺人犯の心情や生活環境を詳しく語る」だのという意見は一種のギャグなのだろうか。本作は別に「男への愛」を描いた作品(「女への愛」ならまだわかるけど)でなければ、犯人を語り手にした倒叙ミステリでもない。
しかしまあ、「あんた(主人公)だけが偉いのかよと反発したくなる」という意見に関してはなかなか考えさせられるものがある。この作品では、必ずしも主人公が絶対的な正義として描かれてはいない。(主人公に対する)敵サイドの意見にもきちんと道理があり、そしてそれが強い説得力を持っている。だからこそ、読者側としても完全に主人公の味方をすることはできず、どこか「あきらめ」の気持ちが生まれてきてしまう。(もし作者が島田荘司とかだったら、主人公が村人を殴って終わりだっただろう) しかしそれでも、主人公たちを応援したくなってしまうのは、彼らの「悲惨な状況を打破したい」という思いが鮮烈に描かれているからに違いない。道徳と社会を対立させることで、本作は「善の研究」を成したのではないかと思える。トリックはなんとも単純なので謎解き小説としては微妙だが、筆致と高い社会性を評価して8点。 |
No.4 | 7点 | 斎藤警部 | 2015/10/23 02:09 |
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長篇第一作「四つの終止符」に続き若き京太郎が世に問うたハード社会派サスペンス、いや社会派本格推理と呼ぶべきか。
「終止符」ほどの唯一無二な雰囲気は無く、普通の推理小説然として進むが、事件そのものと社会背景、その両方の謎解き興味が読み進むほど強烈に襲い掛かる名編だ。社会派サイドのテーマはやはり重い。京太郎の名を未来から消さない為にも、君は読め。 |
No.3 | 5点 | TON2 | 2012/11/26 18:01 |
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講談社文庫「江戸川乱歩賞全集6」
昭和40年第11回の受賞作。 封建制に閉じ込められた農村の閉鎖性とサリドマイド児に対する社会の差別といった社会性を盛り込んでいますが、内容は付け焼刃のようで深みが感じられません。 だいたい本当に愛しているならば、女が男を殺人のアリバイに利用するでしょうか。 また、主人公の新聞記者の農村の人々やサリドマイド児の親たちへの「あなたたちは間違っている」というものの言い方にも、あんただけが偉いのかよと反発したくなりました。 現代ならば、ミステリーも殺人犯の心情や生活環境を詳しく語るのでしょうが、この時代はこの程度でも受賞作になってしまうのだと感じました。 |
No.2 | 6点 | 臣 | 2010/03/13 13:16 |
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著者の旅情ミステリはあまり読んでいない(テレビはときどき観ていた)のではっきりしたことはいえませんが、本書は本格に社会性が加味されているせいか(逆かもしれませんが)、旅情モノとちがってミステリとしての深みがあるのではないでしょうか。でも、その社会性は自然な流れで描かれているので、それほど重苦しさは感じられず、展開そのものもスムーズで読みやすく、しかも意外性もあり、上質な仕上がりになっています。ミステリ嗜好が多様ないまの時代でも、多くの人が平均的に楽しめる作品だと思います。 |
No.1 | 6点 | E-BANKER | 2010/02/11 23:13 |
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第11回の乱歩賞受賞作。
ミステリーとしては単純な作りですが、被害者が残したダイイングメッセージ「天使」についての謎を中心に話が展開され、意外な犯人に行き着くという構成。 動機や事件の経緯という部分に、やや「社会派」寄りの”暗さ”が窺え、発表された時代背景かなぁと感じさせます。 デビュー間もない作品ですが、氏の文章力の確かさは十分に印象づけられました。 無駄な描写や無意味な薀蓄は一切なし、読みにくい部分も一切なく読ませます。 評点はこんなものですが、大作家「西村京太郎」を知るうえでは欠かすことのできない作品といえるでしょう。 |