皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] D機関情報 |
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西村京太郎 | 出版月: 1966年01月 | 平均: 6.80点 | 書評数: 5件 |
講談社 1966年01月 |
講談社 1978年12月 |
講談社 2015年06月 |
No.5 | 7点 | パメル | 2021/09/30 08:12 |
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関谷中佐は、軍需物資として欠かせない水銀を買い付けるべく、金塊を携えスイスへ向かえと命じられる。だがスイスに向かう途中、連合軍の誤爆に巻き込まれ、金塊を入れていたトランクを失ってしまう。
金塊の行方を知るのは誰か?事故の際、同乗していたドイツ人か?それともフランス人の仮面を被ったロシア人か?謎の女性が死に際に遺した「D」が意味するものとは? 策謀、陰謀、諜報渦巻く永世中立国で、日本の明日を護るために関谷が選んだ道。「鳩を買いたし」「鳩を売りたし」実話を下敷きにした第二次大戦秘話。如何にも怪しげな人物が次々と登場し、ミステリとしての謎の提起と謎解き、そして緊張感あふれる駆け引きとアクションを堪能できる。 史実をモデルとしているので、驚きは少ないかもしれないが、読者を飽きさせない工夫として取り組んでいる技術はさすがと感じた。 やはり初期の西村京太郎は面白いと思ったし、読み慣れていないジャンルだったが、またスパイ小説を読んでみたいと思わせてくれた。 |
No.4 | 6点 | 蟷螂の斧 | 2020/06/10 20:13 |
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007ではないので女性陣との絡みがない?少しは恋愛感情が起きても良かったかなとも思う(笑)。まあ、若き軍人で真面目一方という性格が、作品的には最後の一行に通じるのかな・・・。著者の一番の思い入れのある作品のようで、そのことは伝わってきました。
著者自薦の5冊の評価は「D機関情報」6点「殺しの双曲線」5点「寝台特急殺人事件」6点「華麗なる誘拐」7点「消えたタンカー」7点となりました。 |
No.3 | 6点 | いいちこ | 2018/12/07 20:16 |
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作品の主題を考えれば、やや冗長さも感じるところだが、リーダビリティの高さも加味すれば、これまで読了した著者の作品の中ではベストの評価 |
No.2 | 6点 | E-BANKER | 2017/08/11 22:56 |
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1966年発表。
処女作「四つの終止符」、江戸川乱歩賞受賞作「天使の傷痕」に続く三作目の長編として発表された作品。 講談社文庫の新装版にて読了。 ~第二次世界大戦末期、密命を帯びて単身ヨーロッパへ向かった海軍中佐・関谷は、上陸したドイツで親友の駐在武官・矢部の死を知らされる。さらにスイスでは、誤爆により大事なトランクを紛失。各国の情報機関が暗躍する中立国スイスで、トランクの行方と矢部の死の真相を追う関谷。鍵を握るのは「D」・・・。傑作スパイ小説~ 私自身、「作者の初期作品は素晴らしい」と当サイトで何度も主張してきたけど、本作もその主張を裏付ける一冊だろう。 何より、この瑞々しさ! やっぱり、というか当然、文章にも年齢は投影されるわけで、本作発表時の作者の年齢は三十代半ば。 これから専業作家として、何としても名を成したい、ヒット作を世に出したい、etc そんな作者の熱気というか、心意気が行間からも伝わってくる・・・そんな「気」を感じさせられた。 で、本筋なのだが、 プロットとしてはそれほどの捻りはない。 極論すれば、「(スパイ小説として)よくある手」という評価になる。 第二次大戦中の欧州ということで、英米を主にした同盟国VSドイツという構図のなか、裏切りや狂信者、そして戦後の大局を見据える者など、様々な魑魅魍魎たちが跋扈する世界。 そのなかで右往左往するのが主人公の関谷中佐というわけだ。 あの人物は敵なのか味方なのか、はたまた敵の敵(=味方)なのか敵の敵の敵(=敵?)なのか・・・ 化かし合いを演じることとなる。 そうは言っても、そこはやはり西村京太郎! ということで、リーダビリティはいつもどおり。 淀みなくラストまで一気呵成に読了してしまった。 でもまぁそこに物足りなさを感じる方は結構いるかもね。 ご都合主義と言えば全てがご都合主義だしな・・・ |
No.1 | 9点 | あさぎ | 2015/06/22 03:18 |
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西村京太郎、最初期の傑作。
第二次大戦を舞台にしたスパイ小説。これに先立つ『四つの終止符』や『天使の傷痕』でテーマにされたのは「社会的弱者の無力」だったが、本作は「戦時下という時局における正しさの無力」がテーマとなる。 軍人はただ祖国の勝利のために働けばいいのか、それとも戦局を見極め敗れても祖国が生き残る道を模索すべきなのか。敗戦という歴史的事実を知る読者の目には後者の正しさは自明であり、軍人である主人公・関谷も後者が正しいことを感づきながらも、軍人としての使命との間で煩悶する。そして、その果てに下された決断の前に、時局という途方もない壁が立ちふさがる。 読み終えたときに読者の胸に残る思いは、そのまま本作の最後の一行となって現れる。ディテールの濃密さではのちの冒険小説群には及ばないが、初期西村京太郎の美点が詰まった傑作だ。 |