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[ 社会派 ] 殺人者はオーロラを見た 若杉徹シリーズ |
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西村京太郎 | 出版月: 1973年01月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
サンケイ新聞社出版局 1973年01月 |
徳間書店 1982年10月 |
講談社 1993年10月 |
徳間書店 1997年06月 |
徳間書店 2006年09月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2018/11/18 20:21 |
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(ネタバレなし)
沖縄出身という触れ込みの若手人気歌手・南田ユキが自宅で絞殺され、その胸には銀色の矢が刺さっていた。ユキの本名は野板志摩子、実際には北海道のアイヌの出自であった。捜査本部には犯行声明と思われるアイヌのユーカリの詩が届き、さらに新たな殺人事件が発生する。志摩子の元恩師で民族&民俗学を研究する城西大学の助教授・若杉徹は、捜査一課の吉川刑事の要請で事件の捜査に協力。やがて真犯人と思しきアイヌの若者が捜査線上に浮かぶが、彼には二重の鉄壁のアリバイがあった。 1973年にサンケイ出版のサンケイ・ノベルスの一冊として刊行された作品。当人がアイヌと本州の人間のハーフであるアマチュア探偵、若杉徹を主人公にした連作二部作の二冊目である(シリーズ第一作は、同じ叢書から72年に刊行された『ハイビスカス殺人事件』)。 フーダニットの興味はほぼ切り捨てて、その分、完全なアリバイ崩しに絞った内容で、趣向の違う二つの中規模の不可能犯罪トリックが用意されている。探偵VS当人なりの主張と正義を備えた犯人との対決という構図だけにえらくメッセージ性の強い作品で、初期の社会派パズラー路線を打ち出していた西村京太郎のひとつの成果という感じさえする(まだそんなにしっかり初期の西村作品を大系的に読んではいないけど~汗~)。 探偵役の若杉は32~33歳の体格の良い青年学者。アイヌの民族問題に向かい合い、事件のなかで自分の考えを見定めつつ突き進んでいくキャラクターはなかなか魅力的だが、この作品のなかで、事件の真実を暴く通常の名探偵以上の立ち位置まで獲得してしまう(謎解きミステリ的な意味で犯人になったり、共犯関係になったりするのでは決してない)。確かにここでキャラクターを燃焼させきった感もあり、シリーズはもうこれ以上続けにくかったであろう(とはいいながら、その後どっかの西村京太郎作品ワールドで彼が再登場していたらウレシイけれど。たとえば十津川ものなどにちょっとだけカメオ出演とか)。佳作~秀作。 |