皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 黙示録殺人事件 十津川警部シリーズ |
|||
---|---|---|---|
西村京太郎 | 出版月: 1980年01月 | 平均: 7.33点 | 書評数: 3件 |
新潮社 1980年01月 |
新潮社 1983年01月 |
講談社 1987年09月 |
No.3 | 7点 | メルカトル | 2021/05/19 22:49 |
---|---|---|---|
休日の銀座に、突然、蝶の大群が舞った。蝶の舞い上ったあとには、聖書の言葉を刻んだブレスレットをはめた青年の死体があった。これが、十津川警部の率いる捜査本部をきりきり舞いさせた連続予告自殺の始まりだった。次々に信者の青年たちを自殺させる狂信的な集団。その集団の指導者・野見山は何を企んでいるのか……。“現代の狂気”をダイナミックに描き出した力作推理長編。
Amazon内容紹介より。 西村京太郎と言えばトラベルミステリばかり書いているイメージが強かったのですが、こんな作品も、しかも十津川シリーズで書いているのは意外と云うか、ちょっと驚きました。幻想的な冒頭から社会派的な要素も有りながらの本格ミステリで、プロットはまるで島荘のようでもあります。これはなかなかの秀作だと思います。ラストはちょっとしたどんでん返しがあり、更にエピローグはなるほどと頷かされました。 最初から最後までダレることなく楽しめます。凄くテンポが良いのでどんどん読み進められます。信仰集団の教祖野見山が面白い存在で、信者にとってはちょっとしたカリスマ性を備えていて、終盤の信者を説き伏せる言論にはそれなりの根拠と説得力があり、なかなかの見ものでした。勿論十津川警部が言うように、詭弁ではありますが。 二つの密室に関しては、まあオマケみたいなものなので、あまり気にしないようにして下さい。 |
No.2 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2019/01/29 20:12 |
---|---|---|---|
裏表紙より~『“現代の狂気”をダイナミックに描き出した力作推理長編』~
目的達成のためには自殺をも推奨するという狂気(洗脳)が描かれている社会的な要素の強い作品(1980年)。洗脳されてしまうと何を言っても無駄ということがよくわかります。恐ろしいことです。 |
No.1 | 8点 | E-BANKER | 2011/05/03 18:54 |
---|---|---|---|
十津川警部&亀井刑事のお馴染みの名コンビシリーズ。
いつものような「列車」や「旅情」は一切なし。社会派的要素も取り込んだ意欲作。 ~休日の銀座に突然、蝶の大群が舞った。蝶の舞い上がった後には、聖書の言葉を刻んだブレスレットをはめた青年の死体があった。これが十津川警部をきりきり舞いさせた連続予告自殺事件の始まりだった。次々に信者の青年を自殺させる狂信的集団。指導者は何を企んでいるのか?~ これは「掘り出し物」的面白さ。 都内の繁華街などで起こる連続自殺事件など、冒頭から読者を惹き付ける謎があり、中盤以降も十二分に読ませる展開が続きます。 新興宗教の狂信さを事件のバックボーンに置いているので、てっきり「オウム真理教」の影響下かと思いきや、本作の出版の方がかなり早いんですねぇ・・・ (本作が1980年初版、オウムの地下鉄サリン事件が1995年) カリスマ性のある指導者の姿や、女性信者を性の奴隷にしたり、信者の生死さえも決めてしまう権力など、まるで後年の事件を予言しているかのような内容には軽い驚きすら感じます。 特筆すべきはラストシーンの美しさ! 事件は十津川たちの尽力で一応の解決をみますが、一人の女性信者の姿を描いた場面はかなり強烈な後味を読者に残します。 個人的に、作者の作品については、いわゆる「トラベル・ミステリー」以外の佳作を本サイトでなるべく紹介してますが、本作もミステリー作家としての作者の非凡さを十二分に示した良作ではないかと思いますね。 (作者としては珍しく2つの「密室トリック」も出てきます。ただし、トリックのレベルそのものは・・・あまり触れないでおこう!) |