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[ パスティッシュ/パロディ/ユーモア ]
名探偵に乾杯
名探偵シリーズ
西村京太郎 出版月: 1983年08月 平均: 5.67点 書評数: 3件

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講談社
1983年08月

講談社
1987年05月

講談社
2013年08月

No.3 6点 虫暮部 2024/05/24 14:09
 アガサ・クリスティ『カーテン』のネタバレ有り。
 まず、密室その他、別荘に於ける(真の)トリックについて。普通のミステリなら噴飯物だが、このパスティーシュ・シリーズと言う舞台に限ってはその意味が逆転する。犯人の動機と相俟って、見事な批評である。拍手。
 但し、“読者への挑戦” を付けるべきではなかった。これはフェアプレイの地平を飛び越えたところに位置する真相であって、見抜くのは無理でしょ。他の作品のトリック当てで読者がこの回答を提出したら “真面目にやれ” と言われるでしょ。

 『カーテン』新解釈について。併読した立場で言うと、原典の文言を尊重しつつ、それなりに辻褄の合った結論を示しているとは思う。特に動機は上手いところから掘り出している。そういう “裏読み” は楽しいよね。
 但し問題は、ヘイスティングズが手記中で “都合の悪いことを省く” のみならず “嘘を記述する” ことも許容してしまった点。
 『名探偵に乾杯』の説に従うなら、犯人Xの暗示にかかり人を殺しかけたこと、及び無自覚なまま別の人物の死に関与したこと、と言う自身の恥を晒すようなエピソードがまるまる嘘なのだが、そんな捏造をする理由は説明されていない。ヘイスティングズは今になって小説家として開眼したのか?

 そして、謎と真相との構造上の関係性がシリーズ前作に類似しているのが引っ掛かる。どちらか一作だけならもっと高評価出来た。本作は『カーテン』を受けて生まれたものであって、もしかしたら “書かれる筈では無かった最終作” なのかもしれないけれど……。

No.2 6点 E-BANKER 2013/08/31 22:43
「名探偵なんか怖くない」「名探偵が多すぎる」「名探偵も楽じゃない」に続く、名探偵パロディシリーズ第四弾にして、シリーズ最終作。
1983年発表ということで、かなり昔に一度読んでいたのだが、今回再読。
まさか本作が「新装版」として甦ろうとは思わなかったなぁ・・・

~ポワロが死に、その追悼会が明智小五郎の所有する伊豆沖の孤島の別荘で開かれた。招かれたのはエラリー・クイーン、メグレ警部ら世界的名探偵たち。そこへポワロ二世と自ら名乗る若者が現れる。彼は本物の息子であることを証明すべく、孤島で発生した殺人事件の謎に挑むのだが・・・。「名探偵シリーズ」の掉尾を飾る傑作~

何とも不思議な雰囲気を持つ作品。
久々に読んで、そんな感想になった。
本筋は紹介文のとおり、ポワロの追悼会に参加した13名の男女が次々と殺されていくという、まさに「そして誰もいなくなった」をパロったようなプロット。
それどころか、三つの「密室殺人」や不明な動機まで絡み合い、本格ミステリー好きには応えられない展開になる筈なのだが・・・
残念ながら、そうはなっていない。

まず密室は・・・これは「推理クイズ」レベルだな。
(まぁこれは作者も本気で考えてないんだろうけど・・・まさか綾○を意識したわけではないよね?)
「動機」については・・・こじつけかな。
そもそも、本シリーズに対してはこういうまともなプロットやトリックを期待してはだめなんだろう。

そんなことより、本作を読んでると、作者がいかにポワロ(クリスティ)を敬愛しているのかがよく分かる。
本筋の事件が解決をみたあと、何とポワロ最後の作品となった「カーテン」の結末に異説を唱えていて、そこが一番のサプライズかもしれない。
まっ、広い心で読むことをお勧めします。

No.1 5点 2011/02/23 21:01
おなじみの名探偵シリーズの(少なくとも今のところ)最終作となった本作では、ポアロの息子を名乗る人物が登場します。謎解きミステリとしての出来ということでは、捨てトリックはまあこんなものかなというところですが、うーん、この最終解決はねえ。登場してないフェル博士の某作品をもちょっと思わせますが。また、二十面相シリーズでは聡明だったはずの小林中年がヘイスティングズより凡庸なのがなんとも…
それより、一風変わったクリスティーの『カーテン』論になっているところにおもしろさを感じました。単なるネタばらしなんて生やさしいものではなく、自称ポアロの息子が詳細かつ強引に分析していきます。ポアロが書いたという探偵作家論原稿も出てきますが、この元ネタはクリスティーの『複数の時計』でのミステリ評ですね。
その自称ポアロの息子に対する老名探偵たちの視線にも納得。


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