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[ 本格/新本格 ]
湖底のまつり
泡坂妻夫 出版月: 1978年11月 平均: 6.50点 書評数: 26件

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幻影城
1978年11月

角川書店
1980年04月

角川書店
1980年04月

双葉社
1989年11月

東京創元社
1994年06月

No.26 8点 みりん 2024/03/27 15:12
「乱れからくり」「11枚のとらんぷ」「しあわせの書」などと比べて退屈な部分がなく、これは泡坂妻夫の中でも屈指のお気に入り作品になりそうです。密室等の不可能犯罪さえあれば9点以上は確実だったと思います。
ものの見事に騙されました。アレは意味のある描写だったのですね。
これは自虐風自慢ですが、「途中でトリックが分かってしまった」系の書評が多い作品ですら、自力で気付けた試しがありません(笑) ミステリ好きとして幸せな脳細胞です。

※関係ない余談
この2重トリックの方向性で2000年代の某作品が思い浮かびました。この作品が元ネタかなあ?と思ってその作者のX(旧Twitter)で「泡坂」でキーワード抽出を行うと、なかなか心酔しておられるようで…
こじつけるには少し遠いような気もしますが、もしかしたらこの作品から着想を得たのかな…?

No.25 7点 zuso 2023/06/19 22:51
ダム湖でなければ成立しない小説であり、ダム湖が抱く物語性に目覚めさせられる。恋の痛手を癒すため、一人で東北にやってきた若い女性。川原に佇んでいたところ、急な増水によって流されてしまう。助けられ運ばれた先は、ほどなくしてダムに沈む運命にある集落だった。
読むうちに、多くの謎が浮かんでは沈むこの小説。ダム湖と自然湖の見分けがつかないのと同じように、ただ眺めていただけでは見分けのつかないものが世の中にはたくさんあることを、読み終わると痛感する。

No.24 7点 2021/09/03 23:48
久々の再読で、あの二重写しイリュージョン以外はほとんど覚えておらず、そうか、殺人事件もあったんだっけというぐらいの感じでした。
奇術は「効果がすべて」と言われることが良くありますが、大きく4章とエピローグ(終章)から成る本作の第2章の途中から始まる、その幻想的SFのようなイリュージョンには、驚かされます。仕掛けを知って読んでみると、きめ細かい官能的な第1章の文章の中に、伏線がたっぷり仕込まれていることがわかります。論理的に考えればこれ以外に考えられないということで予測はつきやすいでしょうが、そのことに気づかないかと皆さんの疑問視される部分はともかく、その効果が起こる経緯には、さすがに配慮が行き届いています。第4章における第1章との重複部分でも、第1章の伏線をさりげなく示すというこだわりぶり。
それにしてもラスト・シーンの後、どうなるんでしょうね。

No.23 7点 青い車 2020/03/15 08:15
 耽美という泡坂妻夫のあまり見せない一面が見られる作品で、『乱れからくり』『11枚のとらんぷ』などで作者のスタイルはほぼほぼ見えたと思って読んだため、衝撃を受けました。他の方々も指摘される通り無茶なところが無くもないですが、終盤のどんでん返しにやられた思い出も手伝ってこの点数を付けます。

No.22 6点 tider-tiger 2019/12/25 23:45
冒頭の情景描写からなにかおかしいと感じさせる。これは泡坂妻夫なの?
なにが飛び出すのかという期待でグイグイと読まされてしまう。
何人かの方が言及されているように無理があると思う。そのため見事に騙された感じはしない。
ただ、読んでいる最中の眩暈感はさすが。
また、話に無理はあっても、読者に対してフェアであろうという姿勢は好感(一点疑念あり)。作品に合わせて湿り気を帯びた文章を選択し、なおかつ使いこなしている点も好感。舞台背景もいい。村の祭り、官能描写などの使い方も見事だと思う。
あまりよく知らない世界のことが描かれている部分は門外漢の私にはこういうことはけっこうありそうだなと思わせたが、専門知識をお持ちの方はどのように感じるのか気になった。
ファンの間でも好き嫌いが分かれそうだが、強く推す人がいることは理解できる。かなり無理があるので結果的にはまあまあかなといった感想だったが、泡坂妻夫への好感度をさらに上げてくれた作品である。


斎藤警部殿が指摘されている執拗に繰り返される描写は私も気になっていた。また、刑事の娘が物語の中でどのような役割を与えられているのかがひどく気になったものだが……。

No.21 8点 mediocrity 2019/10/05 01:47
冒頭、何が起こっているのかよくわからない。仕方がないのでそのまま1章を読み進める。今度は起こっていることは理解できるが、全体像が見えてこない。2章、さらに困惑する。まさかの二重人格?それとも夢オチ?それだけは勘弁してほしい。3章から少しずつ謎がほぐれ始め、そのまま終盤に。

解説通り、強烈な騙し絵だった。読み終わった後、もう1度1章だけ読み返したけど、本当によく出来ている。
疑問に感じたのは多くの方と同様の箇所。積極的な女性ならまず気付くだろうけど、偶然にも、経験の少ない受け身の女性だったということか。あとたいしたことじゃないけど、当時は震度8とかあったのかな?

No.20 5点 take5 2018/09/03 06:01
普通は(物語に入って一人称として感じるところとすれば)ばれます。
しかし叙述トリックなので騙されます。というか気づかないのです。
という男女の有り様を描いた作品。300ページ足らずよくまとまっています。

No.19 8点 斎藤警部 2018/06/22 01:52
フランス流儀×ジャポン陰影の重ね掛け。ミシェル・ルブラン「殺人四重奏」を現代日本受けするよう翻案したつもりが全くの別物になりましたが目論見通りです、みたいな 感じ。。 ではない。。 いずれダムに 沈 む(既に 沈 んだ 。。?)鄙びた村とその近郊が舞台の連 続殺 人事件( か?)

ページ少し進んだらもうヤラれます。何かがねじり込まれています。何かをウグウグしたいです。 村には(最後の?)祭が来る。。。 この小説のいったい何処の部分が私を騙してくれるのか、全く見当が付かない。。。。 “同じ姓が多い”だと? 気を持たすなよ、転がすなよこいつめえ。 非常時における男と女の出遭いが。。いや~ぁこれ以上は言いませんなあ。。

微妙な違和感でも大きな違和感でもない、違和感としては中途半端サイズの、それだけにミステリ違和感的には真の意味で微妙な違和感が四方八方きれいに嵌まって取り囲まれたまま。 そこに比喩はあるのかい。。惑わしてみるだけかい。。。 本当に、もう切実に、ストーリー展開が読めず読めずの無間連鎖に赤面してしまうほど。それもこの一見(?)何らかの悪魔企画がかっちり決まっていそうな小説構成で!!その構成自体の構成までが読者側の思い込みを脇腹掠って飛び越える展開図になっていそうで怖い…  ”ダムの気持ち”をミステリの舞台裏に応用したら、どうなるんだろうっ 。。。

さて残り頁も少なく流石にまとめに入ったか、と思うと終局間際に! いろんな意味でクライマックス、アレを取り出すシーンは悪い意味で笑っちゃいましたがね 笑



【こっからちょっとネタバレ】

パーゾウは 完全にダシに使われたというか、媒介でしたな。ついでに言えば社会派要素も。
読了後、サブちゃん「祭」の ♪男は~~~ が流れて来る人がいたとしたら、なかなかの皮肉屋さんですね!
あと、ほっぺふくらますのは何の伏線でもなかったのね。

【ちょっとネタバレここまで】



騙されるってより眩惑されました。 風景が刻まれる小説です。

No.18 5点 レッドキング 2018/06/21 17:39
「性愛文学」と叙述ミステリの融合 自分には珍しく仕掛けが分かってしまったが まあ楽しめたな 

No.17 5点 ボンボン 2018/01/04 21:45
残念な読書だった。私としては非常に珍しく、仕掛けがスルスルわかってしまって、ミステリとして全く楽しめなかったのだ。え、書いてあるとおりじゃん、どこに謎が? まさかこのまま終わるわけないよね、あれれ、終わっちゃったよ状態。この作品が悪いわけでは決してない。何かたまたま波長がハマってしまっただけだろう。
一つの出来事を、かかわった人それぞれの視点でなぞり直し、そのたびにドラマが大きく展開していく書き方は面白い。悪夢再びといった終わり方も印象的。独特の雰囲気を持った小説だ。

No.16 9点 まさむね 2016/06/09 22:34
 第1章の時点で妖しい香りが漂っています。第2章まで読みますと、何がどうなっているのか、私はいったいどこに連れていかれるのかと、完全に作者の掌で転がされてしまいます。真相については、確かに「普通はアノ方が気付くだろうなぁ。ちょっと無理があるかなぁ」といった思いはございますが、真相を知った瞬間の眩暈感の方がはるかに強かった。
 私にとっては、めちゃめちゃ好きなタイプの作品。ストーリー、プロットともに秀逸で、文体も含めて印象に残りそうです。複数の現役作家が、好きな作品の一つとして本書を挙げるのも、分かる気がします。(一方で、好き嫌いが分かれそうな作品でもあります。)

No.15 5点 nukkam 2015/11/06 09:45
(ネタバレなしです) 「11枚のとらんぷ」(1976年)、「乱れからくり」(1977年)と2作続けて本格派推理小説の傑作で注目を浴びた作者が1978年に発表した長編第3作で、連城三紀彦が「大掛かりな詐術で描いた巨大な『騙し絵』」、綾辻行人が「凄い作品」と大絶賛です。本書は幻想的な雰囲気、登場人物の情感描写など過去2作品とは異なる個性を発揮していることに成功していますし、『騙し絵』ならではの仕掛けもあります。ただ繰り返される官能描写は好き嫌いが分かれそうで、少なくとも万人に勧められる作品とは言えないでしょう。この官能描写も単なるお飾りではないところが巧妙ではあるのですが。

No.14 8点 虫暮部 2014/11/07 19:58
 なかなか強引なプロットではあるが、泡坂妻夫は“愛”と“性”を接着剤にして小説による魔術を成立させてしまった。決定的な矛盾は無いと思う。細かな御都合主義にはこだわらずに流れに身を任せて騙されるが吉。
 官能描写の格調高さと、晃二のキャラクターの意外な俗っぽさは、良し悪しかなぁ。

No.13 5点 sophia 2014/04/14 21:20
これは無理がある。

No.12 6点 ボナンザ 2014/04/07 15:54
前二作とは方向性が違う。ややエロい。とはいえこれもまた仕掛け好きな作者ならではの作品だとは思う。

No.11 4点 mozart 2013/01/02 17:37
本作は図書館で創元推理文庫を借りてきたのですが、思わせぶりな表紙のイラストに加えて、背表紙に「華麗な騙し絵」とあれば、いかに鈍感な自分でも最初から身構えて読み始めてしまったため、「驚愕の・・・」とはならなかったのは残念なことでした。
ただ、それを割り引いても、散見される「官能小説」ばりの表現がどうも「普通の」ミステリーの読者としてはちょっと引いてしまいました。
あと、どうでも良いことですが、ダムが決壊するほどの地震の揺れでも震度「8」なんてことにはならない(そもそも震度は7までしか定義されていない)のですが・・・。

No.10 7点 蟷螂の斧 2012/02/03 18:09
夢落ち?幻想?と危惧しながら読みましたが、しっかりと騙されました。泡坂作品は「しあわせの書」しか読んでいませんが、作風が全く違う感じがして驚きました。本作品の方が全然好みです。現実味云々については、超自然現象、幻想、二重人格を扱ったミステリーよりもよっぽどリアリティがあると思いました。

No.9 5点 E-BANKER 2011/12/03 21:37
「11枚のトランプ」、「乱れからくり」に続く作者の第3長編。
1978年より「幻影城」誌で連載され、評判を呼んだ作品。

~傷心を癒す旅に出た若い女性・紀子は、東北地方の山村で急に水量の増した川の岩場に取り残される。岸に戻ろうと水に入った紀子は流れに呑まれそうになるが、ロープが投げられ辛うじて救出された。助けてくれたのは、土地の若者・晃二で、その夜彼の家に泊まった紀子は抱かれる。しかし、晃二は1か月前に毒殺されていたのだ。では、紀子を助け晃二と名乗ったのは誰なのか? 文学的な香気漂う作品~

これは・・・「幻想小説」でしょうか?
第2章「晃二」の章に進んだとき、全ての読者が「アレッ??」と思うはず・・・そして、どんなトリック・騙しが仕掛けられているかという期待感を持つはず・・・
ただ、このトリックというか真相はどうだろう?
「騙し」のプロットそのものは実に泡坂氏らしいし、「そういう手で来たか!」と思わせる。
でもねぇ・・・さすがに「気付くだろう!」、紀子も!
一応、言い訳めいたフォローはしていますが、ここまでリアリティを無視されるとやや興ざめにはさせられた。

「亜愛一郎」シリーズのように軽妙な作品と並んで、こういう「大人な」作品も多いのですが、これはちょっと嗜好が合わないというのが正直な感想。
(アッチ系の描写も実に上手いね)

No.8 7点 yoneppi 2010/08/28 21:01
読みなれた人ならこのトリックにはそれほど驚かないだろうけれど、良くまとまったきれいな作品だと思う。

No.7 6点 kanamori 2010/08/15 15:42
探偵小説誌・幻影城の連載で読みましたが、連載第2回を読み始めて戸惑った覚えがあります。編集部の印刷手配ミスかと思いました、前号と同じ内容の物語が綴られていたので。
大胆なトリックが使われていて、幻想的雰囲気の物語が不可思議性を助長していますが、ちょっと無理があるトリックだと思いました。余韻のあるエンディング・シーンはなかなかよかったですが。


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