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[ サスペンス ]
斜光
泡坂妻夫 出版月: 1988年07月 平均: 4.86点 書評数: 7件

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角川書店
1988年07月

角川書店
1991年05月

KADOKAWA / 角川書店
2003年05月

No.7 5点 ROM大臣 2021/07/08 13:43
凝りに凝った章構成、騙し絵的なプロットに加え、全体が官能的でオカルティックで、最上の大人の読み物になっている。
男女というものの結び付きを浮世絵的なきわどさの中に描いていて、しかも下品にならないのは作者ならではのものだろう。

No.6 6点 2020/05/05 21:29
 実家の写真館を引き継いだ夕城香留(かおる)は千坂通り商店会の会員たちと一緒に、新潟の田舎町に温泉旅行に出向く。一風呂浴びた後十人ほどの仲間と共に温泉街を抜け、彼らはある劇場に入っていった。裸を売り物にしたいかがわしい出し物。だが上手から舞台に登場した二人目の踊り子を見た瞬間、香留は目の前に火花が散るような衝撃を感じた。
 ――しかし、そんなことはあり得ない。
 そう否定するものの、踊り子の横顔は彼の不安と期待を煽り立てる。その疑問は紫の衣装が肩から滑り落ちた瞬間、否定の余地がなくなった。そのときから、香留の視界は白っぽい靄がかかり、あたりの物音が聞こえなくなってしまった。
 ライトの中にいたのは、五年前に彼の前から姿を消してしまった、妻の弥宵。もう四十五歳になっているはずだが、その年月は逆行していると錯覚するほどだった。だが劇場内でそんな彼女をひそかに見つめていたのは、香留だけではなかった――
 雑誌「野生時代」1988年7月号一挙掲載。「夢裡庵先生捕物帳」の初期作や、短編集『ぼくたちの太陽(のち『雨女』に改題)』『恋路吟行』収録作執筆時の作品で、第103回直木賞受賞作『蔭桔梗』の巻頭を飾る短編「増山雁金」が、雑誌「小説新潮」に発表されたのはこの翌月のこと。そういう時期に書かれた長編です。
 かなりインモラルな題材を扱いながら、日本神話を背景にして上品に纏めているのは流石。採点が割れているのは『湖底のまつり』の系譜ながら、他の長編に比べて謎やテーマの提示が不明確なせいでしょうか。どうやら処女懐胎を扱っているようですが、その解決は到底読者を納得させるものではありません。後味その他は非常に良いのですが。
 ストーリーは香留夫妻ともう一組のカップルがかつて関係した、山梨の片田舎で起こった殺人を軸に、香留の回想と事件を追う刑事の捜査が交互に描かれた後、その二つが最終的に交わります。最終的にはアリバイが問題になりますが、そこに作為は存在しません。基本は丁寧な過程の捜査小説。総合評価はもうちょっと上でもいいと思いますが、無理な相談ですかね。

No.5 7点 虫暮部 2019/12/05 12:40
 泡坂妻夫の描くエロスはあまり好きではない。基本的な趣味の違いでこれはどうしようもない。
 本作は良く出来たプロットだし(しかし姿を消した原因が判らないってことはないだろう)、御都合主義的偶然が運命的な天の配剤のように読めるのは人物造形の確かさ故だろうか。それでも濡れ場になるとフッと冷静になってしまう自分がいる。

No.4 4点 蟷螂の斧 2018/06/08 17:38
分類は官能ミステリーと言ったらいいのでしょうか(笑)。かなりの官能描写がありますので、その分ミステリー度が弱くなっている感じです。帯には本格推理小説とありますが、推理する要素はほとんどありません。真相もさてどうなんだろう?という程度でした。

No.3 3点 あびびび 2015/06/13 18:20
懐かしく、日本独特の推理小説と前半は期待したが、一番行ってはいけない方面に物語が進んでしまった。事件を捜査する刑事も、事件を傍観する主人公的男もいい味を出していたのだが、後半の迷走ですべてパー…。

自分にはそんな感じの一冊だった。

No.2 5点 kanamori 2010/08/18 17:48
5年前に失踪した妻が地方の温泉街で踊り子をしているのを目撃した夫と、5年前の殺人事件を追う刑事。二人の視点で並行して物語が展開していき、終盤で交叉するというストーリー。
作者は、同性愛など”特異な愛のカタチ”を主題にしたミステリをいくつか書いていますが、本書もその趣向の別ヴァージョンでした。
最終章の真相が語られる男女の会話が、あまりにも読者向けの説明口調なのが残念。

No.1 4点 Tetchy 2007/10/23 19:30
唐突に終った感じ。
いまいち理解できなかったな。


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