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[ 本格/新本格 ]
死者の輪舞
海方・小湊シリーズ
泡坂妻夫 出版月: 1985年05月 平均: 5.67点 書評数: 9件

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講談社
1985年05月

講談社
1989年01月

出版芸術社
1993年05月

河出書房新社
2019年02月

No.9 5点 nukkam 2024/03/01 06:15
(ネタバレなしです) 1985年発表の本書は犯人(と思われる人物)が次の事件の被害者になるというパターンが連続するというユニークな設定のプロットで読ませます。ユーモア本格派推理小説ではありますがあまりにもありえなさそうな展開のため、読者は後追いするのが手一杯で自力で真相にたどり着くのは難しいかもしれません(先読みはできるかも)。加害者(次の被害者?)の心情にどれだけ納得できるかという点も微妙で、リアリティの欠如をどこまで許容できるかで本書の評価は大きく分かれそうな気がします。

No.8 6点 2021/09/06 01:57
 秋の祭典・曲垣賞に沸く東京競馬場で、無精髭を生やした一人の男が刺し殺された。それも白鞘の合口で心臓を一突き、柄をも通れとばかりの見事な腕で。たまたま現場に居合わせた警視庁特殊犯罪捜査課の刑事・小湊進介は、お守り役を押し付けられた古参刑事の海方惣稔(うみかたふさなり)と共に捜査を開始するが、今度はその鮮やかな手口から海方が犯人と目する丁金組の幹部・筒見順が何者かに射殺されてしまった!
 次々と連鎖していく被害者と殺人犯の奇怪な輪! そんなことがあり得るのだろうか? 常軌を逸した連続殺人事件は、二転、三転、四転、五転・・・・・・
 読者を騙すことに全精力を傾注する著者がその面目を遺憾なく発揮した、本格推理の最高傑作!
 『花嫁は二度眠る』に続いて刊行された、第九長篇にして海方・小湊シリーズ第一作。同年発表の長篇には『猫女』があり、短篇では『妖盗S79号』を終えると共に〈宝引の辰捕物帳〉を本格的に始動させつつ、『折鶴』や『蔭桔梗』収録の幾篇かを発表し、直木賞受賞に向け着々と足場を固めつつある時期にあたる。
 著者の短篇連作は亜愛一郎を筆頭に数あれど、長篇に登場する名探偵は他にヨギ ガンジーのみ。テキストに用いたのはミステリ名作館版だが、「海方惣稔さんのこと」と題したあとがきには〈金井さん〉というモデルの存在と、準主役となる海方刑事への愛着の強さが記されている。最終篇として富士子夫人が大暴れする予定の『紙幣の輪舞』への意欲も示されているが、こちらの方は遂に書かれず仕舞いに終わった。ジャンルを問わず博学多識だが基本的にはナマケモノで、謎の解決に執着すると同時に役得の確保も怠らぬという抜け目無いキャラである。
 連鎖趣向の国内頂点として高く評価する向きもあるが、内容的には『乱れからくり』などよりも下。八つの事件にいくつかの小技を絡めて引っ張るものの、先達とは異なり〈リレー殺人〉の構想をほとんど隠さず、最後のヒネりに全てを賭けている。コミカルな展開で面白いが泡坂作品としては並の上といったところで、採点は6点~6.5点。

No.7 6点 青い車 2019/11/01 19:33
 作者にしては大人しめなのは否めませんが、語り口や世界観はやはり変わらず泡坂流です。事件の構図や皮肉なオチも面白く、十分水準を満たしています。初期長編のように作品全体を覆うような仕掛けは期待できませんが、作者の愛読者だけど読み落としている、という人は読むことをお勧めします。

No.6 5点 まさむね 2019/09/15 15:32
 容疑者が次々に殺害されていく一連の殺人リレーの部分は、軽快なテンポに乗って、期待感を持って読み進めることができました。一方で、終盤の捻りとしては想定の範囲内といったところで、他の泡坂長編と比較すると数段落ちる印象は否めません。勿論、楽しく読ませてもらったのですが。

No.5 4点 ボナンザ 2016/07/18 19:54
泡坂の作品にしては細部が甘い。
一気に読む分にはそれなりに楽しめたが初期の傑作には遠く及ばない。

No.4 7点 虫暮部 2014/10/30 12:25
 ったく、ナンパしながら捜査するんじゃねぇ!
 パズラーというより、ミステリの形をしたドタバタ人情劇のようなつもりで読み返したので、途中の偶然過ぎる事故死も許容範囲内。
 海方はあまり好きになれないキャラクターだが、“二日酔いや病気は出勤しながら治すもんだ。元気なときだからこそ、休暇を取って遊べる”は実行しています。

No.3 5点 蟷螂の斧 2012/11/12 18:42
ユーモア系の特異な刑事が登場するのですが、なんとなく馴染めない感じがしました。プロットは題名より解りやすいし、前例があるので驚きはありませでしたが、ラストにおいては一捻りがありました。

No.2 6点 kanamori 2010/08/16 20:46
著者の作品では珍しい警視庁刑事が探偵役の長編本格ミステリ、シリーズ第1弾。
連続殺人事件の全体の構図に仕掛けを施したところは、ちょっと「乱れからくり」のテイストに似ていますが、トリック自体は山村美紗の某初期長編のアレンジだと思いました。タイトルもなんとなくそれを連想させます。

No.1 7点 こう 2008/08/10 20:31
 連続殺人もので、一人目の殺人の犯人が二人目の被害者で、二人目の犯人が三人目の被害者で、ということが作品序盤で明らかにされるストーリーが独特の泡坂ワールドの中進行してゆきます。何人も次々と死亡が確認されますがあまり深刻にならずおかしみにあふれているのは泡坂作品らしいですが、やはりリアリティには欠けると思います。しかし真相というかこの輪舞のまとめはよく考えらていると思います。
 作品の瑕としてはこの作品は「病院での同室者」ということがキーポイントになっていますが現実には一般患者(意識のある患者)の男女混合病棟はありえないため「同室者」であることが作品の成立に重要なポイントであるためまずいと思いました。


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