皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 本格/新本格 ] 魔弾の射手 神津恭介シリーズ |
|||
---|---|---|---|
高木彬光 | 出版月: 1955年01月 | 平均: 5.12点 | 書評数: 8件 |
東方社 1955年01月 |
桃源社 1967年01月 |
光風社出版 1984年03月 |
角川書店 1984年10月 |
No.8 | 4点 | 人並由真 | 2020/07/29 03:39 |
---|---|---|---|
(ネタバレなし~なお、本書をこれから読む人向けに、ネタバレ回避のための警告をしております。)
1974年の4月初版の「桃源社・ポピュラー・ブックス」版で読了。 1950年初頭刊行の元版や後年の角川文庫版はどうなっているか知らないが、この74年のポピュラー・ブックス版では、目次に並べられた各章の小見出し、その最後の方を見ると、おおむね一目で犯人がわかってしまう(……)。 このヒドい仕様はあんまりで、こんな目次を設けた作者も編集者も天然か! と腹を立てた。 【そういうわけで本書をまだ未読で、これから読む意志のある人は、絶対に目次を見ないように!】 ……ということで、大昔から何回か手にしながら、そのたびに興ざめな思いを感じて、とうとうウン十年もの間、読むことのなかった神津ものの初期長編。 でもってまあ、ここで年貢を納めるつもりで(涙)覚悟して読んでみたら、いや、これは金田一耕助のB級スリラーと同じ方向性で、しかも作品そのもののできは少年ものレベルでしょう(苦笑)。 実際に本作の神津は『覆面紳士』『死神博士』そのほかのジュブナイルに出てきそうな中期以降の明智小五郎の、エピゴーネン的なキャラクターであった。 ただまあ最後の辺りは、これはこれで神津のキャラクター性のひとつを強く押し出した感じではある。だから全編を読み終えた瞬間だけは、この作品の存在意義をちょっとは認めてもいいかという気になった。 とはいえシビアな言い方を許してもらえるなら、今後ずっとプロ作家としてやっていこうと思った当時の作者が『刺青』『能面』『呪縛』みたいなハイレベルのものばかり輩出することなんか無理だと自覚し、「あの乱歩先生も横溝先生もそういうものを書いているんだから、オレもこういうユルいものもいいだろう」と割り切ってものにした一作という感じ。 当時、これを読んで「期待の本格派の新鋭も、全部が全部、傑作・秀作というわけにはやはりいかないのだな……」と大きく失望したであろう、探偵小説の鬼(ミステリマニア)たちの落胆ぶりが察せられる。 まあそれでもここで終わらなかったからこそ、高木彬光という創作者はやっぱりすごいんだけれど。 |
No.7 | 5点 | ボナンザ | 2018/11/25 22:37 |
---|---|---|---|
神津ファン必読ではあるが、傑作とまでは言い難い。 |
No.6 | 5点 | E-BANKER | 2018/10/12 23:04 |
---|---|---|---|
「刺青殺人事件」「能面殺人事件」「呪縛の家」に続いて発表された四作目の長編(神津恭介登場作としては三作目)。
ウェーヴァーの名作オペラと同名(検索するとこっちの方が圧倒的に引っ掛かる)なのは、あまり関連がなかったような・・・ 1955年の発表。 ~大胆不敵な犯罪予告とともに、歌劇の招待状が名探偵神津恭介のもとに届けられた。送り主は自らを悪魔の使者と呼ぶ「魔弾の射手」。そして、その言葉どおり舞台でカルメン公演中の水島真理子が「魔弾の射手」の一言を残し失神した。客席にその姿を見出したのだろうか。しかも、この事件を幕開けにして殺人事件が連続して起こっていった。血に飢えた殺人鬼・魔弾の射手とは何者か。その恐るべき魔手は遂に神津恭介のうえにまで及んできた・・・~ 本作と冒頭に触れた三作品との比較では、本作が大きく劣後している・・・と言わざるを得ないだろうな。 “つかみ”は良かった。 名探偵への招待状、続いて起こる殺人事件。しかも「顔のない」、「指紋もない」死体。 後の名作「人形はなぜ殺される」を想起させるかのようなこのケレン味こそが作者の真骨頂と思わせたのだが・・・ そこからの展開が何とも焦れったいのだ。 神津恭介の右往左往は“人間味”ということで我慢するとして、結局「顔のない死体」の処理や「魔弾」の謎、「魔弾の射手」の正体のいずれもが想定内で中途半端という印象。 動機は戦時中の闇に起因して結構奥深いものなのに、薄っぺらく書かれてしまっているのがイタイ。 作者の故郷である青森の新聞「東奥日報」への連載作品というのが悪い方にでた感じ。 プロットは捻り出したものの、連載という形式に合わなかったのではないか。 まぁこの時期のミステリーだけに、乱歩風の通俗スリラーに寄せられるのは仕方ないし、本格ファンの心をくすぐる要素が十分詰まっていることは確か。 ということで評価としてはこの程度になってしまう。 これもハードルの高さ所以かもね。 |
No.5 | 6点 | 蟷螂の斧 | 2018/09/14 16:20 |
---|---|---|---|
神津恭介シリーズ第3弾(1950)。意外な犯人、顔のない死体という点では高評価を付けたいと思います。ただし、犯人に関し好みでないものが含まれていた点が残念。題名の「魔弾」自体は、海外作品のパクリと言われても致し方ない(苦笑)。神津恭介への挑戦状からスタートし、展開はスピーディで読み易かった。 |
No.4 | 6点 | 空 | 2014/09/02 22:19 |
---|---|---|---|
「魔弾」トリックは、海外有名作のコピーであることより、魔弾でなければならない理由が、その元ネタに比べて弱いのが気になりました。しかしそれは、本作においては実は付け足し程度のもので、むしろ顔のない死体のアイディアの方が中心でしょう。このアイディアの変形は、後に国内の某有名作でも使われていました。
冒頭の神津恭介に送られてきた招待状からそのいかにもな「顔のない死体」殺人へと、新聞連載だからということもあったのでしょうが、はったりめいた見せ場を連続させる通俗スリラーっぽい展開です。ただ、その雰囲気も途中からは控えめになり、怪しげな登場人物たちの動向を小出しにして読者の興味をつないでいきます。 犯人の意外性にこの手を使うなら、もっと明確な容疑回避ができそうな点、不満はありますが、動機の問題に対する答等感心するところもあり、かなり楽しめました。 |
No.3 | 5点 | 江守森江 | 2010/04/12 08:11 |
---|---|---|---|
何故、神津恭介に予告状が届いたのか?が読後もスッキリせずモヤモヤした作品。
新聞連載時に読者挑戦したページは解説に示され、その時点で七割方の真相は犯人当てのデータとして提示されている。 ※ここからネタバレします。 犯人を特定しやすい第二事件のみ実行犯が別人なのが、本格探偵小説としては残念な部類になる。 しかし、作者の狙いは、その真相をもダミー推理にした「真の魔弾の射手」と神津恭介の心の揺れを絡めた劇的結末なのだろう。 以上、作者を擁護してみたが、導入部から毎度お馴染みな犯人隠蔽手口では「真の魔弾の射手」に直結で褒めようがない。 読者挑戦型本格探偵小説としては少年物と同レベルで4点。 それでも、神津恭介の人物像に幅を持たせた事が嬉しく1点加点した。 この作品では、シリーズ名探偵が長編で抱える「犯人に翻弄される弱点」は、神津恭介が恋に揺らぐ事で解消している(これが、この作品の肝なのかもしれない) |
No.2 | 4点 | nukkam | 2009/04/10 18:05 |
---|---|---|---|
(ネタバレなしです) 1950年発表の神津恭介シリーズ第3作となる本格派推理小説で、犯人当て懸賞付き小説として発表され、「読者への挑戦状」も付いていたそうです(私の読んだ角川文庫版では挑戦状は削除されています)。この複雑な真相を果たして読者はきちんと当てられるのだろうかと思いましたが、(どれほど応募があったかはわかりませんが)4名の正解者がいたそうです。魔弾トリックは某海外作家のトリックのコピーに過ぎず謎解きとしてはあまり感心できませんでしたが読みどころとしては名探偵・神津恭介の苦悩ぶりが印象的に描かれているところでしょうか。 |
No.1 | 6点 | vivi | 2008/03/05 00:58 |
---|---|---|---|
神津恭介のファンなら、胸を痛める作品かも。
高木作品の中でも、神津恭介シリーズは人気があると思いますが、 この作品は、探偵役の神津自身の苦悩が大きく出てくる作品ですし。 思い返せば、古今東西の探偵役は、結構孤独な人が多いですよね。 やっぱり、白黒を曖昧に出来ない立場だからかな・・・ |