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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
ノストラダムス大予言の秘密
別題「ノストラダムスの大予言の秘密―一九九九年七月はたして人類は滅亡するか!?」
高木彬光 出版月: 1981年01月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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日本文華社
1981年01月

KADOKAWA
1986年01月

No.1 5点 クリスティ再読 2022/03/24 17:20
高木彬光には、「その他」ジャンルがいろいろ、ある。その一つが易占関連書のわけだが、評者とか本当にノストラダムスはリアルタイムだったから、なかなか思い出深いこともあって、本作を取り上げる。まあ、高島嘉右衛門の評伝の「大予言者の秘密」も書評はなくてもリストアップはされているしね。小説とは言い難いが、「成吉思汗」「邪馬台国」「古代天皇」な「~の秘密」シリーズだと思って、とりあげよう。

本作は五島勉の「ノストラダムスの大予言」の批判書のほぼトップバッターとして出たものである。でも、高木彬光というと、オカルトへの親近感が強すぎる作家...というのは、読んでいる方はそれなりにお気づきのこととも思う。易占関連書もマジメなものだから、「予言なんて全部大ウソ!」という立場ではない。ビリーバーの立場から、五島勉の「ノストラダムスの大予言」をツッコんで、矛盾撞着を指摘して五島の大予言の胡散臭さを指摘することになる....だから、上から目線なネタ消費の「と学会」じゃなくて、土台を共有するオカルト業界での内ゲバ、といえばニュアンスが伝わるかな。

だから、評者がわざわざ「五島のココがおかしくて、高木の反論もヘンテコ!」とか指摘したとしても、全然面白くないのだ。なので、そんなことはしない。高木の論調も五島のハッタリを批判しつつ、ノストラダムスの詩行が何とでも解釈可能で五島の訳が恣意的すぎるのを指摘して...そんなこと。穏当なものが多いし、「一九九九年」説を高木は全面否定の結論。高木のこの本を批判する理由は、まったく、ない。

思うんだが、ミステリ、の持つイカガワしい「駄菓子的要素」というものも、70年代には結構残っていたんだと思う。乱歩正史のエログロもそうだし、子供が読むと叱られるようなカラー、といえばいいのかな。そりゃミステリは人殺しを主題にする小説なんだから、そもそもけして品のいいものではない。本格だから、パズラーだから、清潔で論理的なもので、そういう「駄菓子要素」とは無縁、というわけでもないのである。
で、高木彬光も、たとえば刺青趣味とか典型だが、そういう「駄菓子要素」もふんだんに備えた作家だったわけである。結構アクドい猟奇実話系の著作もあるしね。で言えば、この五島勉だっていくつかスリラーを書いている立派なスリラー作家で、「カバラの呪い」なら本サイトの書評もあるくらい。また、ノストラダムス紹介の草分けがミステリ翻訳も多数な黒沼健、ということもあって、ノストラダムス現象というもの自体が、探偵文壇とも根っこではかなり強いつながりがあるものだ、というのも指摘しておきたいと思うのだ。

まあだから、ノストラダムス現象を「と学会」的に「トンデモ」として消費する、のでなくて、70年代までのアクドく駄菓子な「ミステリ」の問題として見直す....ならば、評者らしいのではないかと思うのだ。

(個人的な思い出。祥伝社ノンブックスの「ノストラダムスの大予言」のカバー絵が怖くて、そっちに怯えてた...小学生なんだもん。書評を見ると高木の批判に「救われた!」とする人が結構、いるんだね)


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