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[ 本格/新本格 ]
黄金の鍵
墨野隴人シリーズ
高木彬光 出版月: 1976年01月 平均: 5.20点 書評数: 5件

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東京文芸社
1976年01月

KADOKAWA
1978年02月

光文社
1982年01月

光文社
1998年01月

No.5 4点 クリスティ再読 2022/03/13 12:28
評者も人並さんとは世代が近いせいか、墨野隴人シリーズにはほぼ同様の経緯で触れている。本作(1970)と次作「一、二、三――死」(1974)とは間が4年ほど空いていて、墨野初体験が「一、二、三――死」の方。で、その次の「大東京四谷怪談」(1976)がガチのリアルタイムで「高木彬光最新作」。何となく第一作は読まずにすませてしまい、ずいぶん後になってそれでも墨野の正体が気になって「仮面よ、さらば」を読んだ、というのが評者の経歴になっている。
だからね~「一、二、三――死」とか「大東京四谷怪談」が懐かしいから、それなら墨野隴人シリーズ最初から全部読もうか、と思って未読の本作。人並さんも似たようなこと書かれているので、やはりこの第一作は埋もれた印象が評者も強い。

小栗上野介の徳川埋蔵金を巡るロマン...と言えばそうなんだけど、墨野が語るそれなりに納得感のある推理が、ちょっと読者を騙すような妙な内容になっていることもあって、本作はそのロマンに納得がいかないや。まあ、歴史の謎の宝探しだから、小説の中でどう結末をつけるのか、ってやたらと難しい。決定的証拠を見つけちゃったらリアルで大騒動を引き起こす(それも面白いが)。なので本作は題材からしてその「ロマン」で失敗せざるを得ないようにも思うんだ。
で、殺人の真相もつまらないもの。やはりイマイチ評価は避けられない。

ちなみに人並さんも気になされた「黄金虫とデュパン」「クロフツ警部」は、しっかりと光文社文庫(1998)でも生き残ってます。まあ、このシリーズ立役者の「愉快な未亡人」村田和子女史、こういうキャラだからね~(苦笑)伏線と言えばそうかもよ。で墨野とマタハリの娘の悲恋話って、そりゃ面白いけどさ、上松のホラでしょうよ。

まあでも本作の不出来は気にしない。個別作品をまたいだ「シリーズ伏線」を楽しむつもりだし、この後2作が楽しみ。

No.4 5点 人並由真 2020/01/04 01:31
(ネタバレなし)
「わたし」こと34歳の有閑未亡人でミステリマニアの村田和子は、40歳代と思われるハンサムで知的な紳士・墨野隴人(すみのろうじん)と出会い、恋に落ちる。墨野の秘書兼友人の上松三男を交えて和子と墨野の交流が進む一方、その和子は亡き夫の従姉である児玉洋子から、洋子の夫の晴夫についての相談事を受けた。さらにもう一人、やはり亡き夫の友人・重原鋭作から、彼の家に現れた怪しい僧侶について悩み事を聞かされる和子。ざわつく周囲の中で、やがて殺人が発生。そしてその喧噪の中から、幕末の英傑・小栗上野介が隠したとされる幕府の財宝の伝説が聞えてきた。

 高木彬光の後期~晩期の主要シリーズ「墨野隴人」ものの第一弾。
 ちなみに本作の元版は光文社のカッパノベルス書下ろしで、初版は昭和45年11月10日刊行の奥付。なんかしらんけど、現状のAmazonではカッパノベルス版の刊行時期の表記がオカシイ。今回はこのカッパノベルス版で読んだ。
(同年11月15日の第7版。異常にハイペースな重版だ(爆笑)。)

 そこでまたミステリファンとしての私的な述懐になるが、評者はこのシリーズ、一番最初に第二作の『一、二、三-死』を読了。それ以降は第三作から最終巻の第五作まで順々に追い掛けた。
 なんで『一、二、三-死』から読んだかと言うと、大昔にあるミステリガイドブック(『推理小説雑学事典』廣済堂出版)の本文記事で、思いきりそのトンデモな趣向をネタバレされたものの、この場合はそれが苦にならず「そりゃすごい、読みたい!」と飛びついたため(笑)。
 今でも『一、二、三-死』のあまりにもぶっとんだ(アホな、かもしれない・笑)真相は大好きである。

 しかしその一方で、風の噂ではこの第一作『黄金の鍵』はあんまり評判がよろしくなく、そうこうしてるうちに第三作でシリーズ最大の破格編? 『大東京四谷怪談』が刊行。ここで妙に盛り上がったのち、続く第四作『現代夜討曽我』は凡作だったものの、最終巻『仮面よ、さらば』があの仕掛け! ギャー!! となる。
 ……つーことで、もう今さらこの第一作『黄金の鍵』なんか読む必要ねーや、的な気分でウン十年もいたのだが、いいトシになった今、まあそろそろ読んでもいいかな、と思って手に取ってみる。
 本書、そして墨野シリーズについては、そんな流れでの長い付き合い、というワケでして(笑)。

 でもって単品としてのミステリ『黄金の鍵』の評価だけど、……うん……まあ、シリーズ最低作(というかまるで印象に残ってない)『現代夜討曽我』よりはいくらか面白い(笑)。

 しかし、ややこしい人間関係の綾を、最後の最後にけっこう大雑把に、悪い意味の大技で処理した感は拭えない。それに細部の謎解きの雑さ(結局、軽井沢で死体が見つかった真相はアレでいいの? あと第一の殺人はああいう事後処理をする意味があったの?)もあって、マトモなパズラーとしては、まあボチボチの出来だろうね。
 他の評者の方もおっしゃっているけど、小栗上野介からみの財宝についての歴史推理の方がまだ楽しめる。その歴史部分がなかったら、たぶん評価はもう一点減点。

 ところでミステリファンを自称し「ミステリの鬼」ならぬ「(ミステリの)女鬼」を自認する主人公ヒロインの和子だけど、モノローグの中で語る知識にいくつも勘違いがあって妙に楽しい(笑)。
 ポーの『黄金虫』がデュパンのデビュー作だとか(え!?)、名探偵クロフツ警部だとか(フレンチのことらしい)、愉快なツッコミ所が続出(笑)。
 今回は元版のカッパノベルス版で読んだから、のちの文庫版では改修されているかもしれないが……あ、もしかしたらこの描写も(中略)のための(中略)なのか? (たぶん違うだろーけど。)

 ……そーいや第十四章前半の、あのセリフ。アレももしかすると……だとしたら、高木彬光、改めておそるべし!? 
(↑いや、それもきっと、たぶん違うとは思うが……(汗))

 最後に、第十七章で、上松が語った墨野とマタ・ハリの娘との過去の悲恋の逸話。あれも、どこまでが……(以下略)。

 いやー、改めて本当に奥の深いシリーズですの~(笑)。こわいこわい。

No.3 4点 nukkam 2015/08/11 12:05
(ネタバレなしです) 1960年代の創作が社会派推理小説、法廷ミステリー中心だった高木彬光が「時には昔の探偵小説、ロマンの世界も恋しくなる」と久しぶりに本格派推理小説を意識して書いた作品が1970年発表の本書です。探偵役の墨野隴人はもちろんバロネス・オルツィの「隅の老人」から派生した名前であり、全部で長編5作のシリーズとなりました(墨野の正体は後年の作品で明らかになっていきます)。さて本書は本格派推理小説ではあるのですが、歴史の謎解きと現代犯罪の謎解きを扱っています。どちらかといえば前者(小栗上野介の埋蔵金伝説)の謎解きの方に力を入れているように思えますが、この作者の文体だとあまりロマンの香りは感じられません。また現代犯罪の謎解きでは個人的には感心できないトリックが使われています。本格派推理小説の復権を目指したいという作者の姿勢は高く評価できますが、出来栄えはプロットを無用に複雑にしただけの作品という印象を受けました。

No.2 6点 frontsan 2009/02/12 09:21
島田荘司の「占星術殺人事件」の中に登場した作品だったので読んで見ました。ミステリの部分よりも、埋蔵金をめぐる謎のほうが面白く、そちらに引き込まれてしまいました。

No.1 7点 vivi 2008/04/24 02:04
墨野隴人シリーズの最初の作品。
連続殺人の犯人を突き止める話ではありますが、
小栗上野介の埋蔵金伝説の謎も絡めた歴史ミステリ風でもあります。
実際、犯人を指摘する場面より、埋蔵金伝説の解明のほうが、
盛り上がっていたかも(^^;

探偵役の企業アナリスト・墨野隴人と秘書の上松三男。
そして、事件に巻き込まれた村田和子。
シリーズの重要キャラが丁寧に描きこまれています。


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