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[ 本格/新本格 ]
悪魔の嘲笑
神津恭介シリーズ
高木彬光 出版月: 1957年01月 平均: 5.00点 書評数: 2件

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東京文芸社
1957年01月

光風社出版
1983年03月

角川書店
1984年06月

No.2 5点 2021/07/07 23:23
 弁護士・浜野正策を名乗る一人の男が、東洋新聞の編集部に特ダネを提供しに来た直後、突然苦しみ出し死んでしまった。絶命する寸前に、既に死刑判決を受けている殺人犯は白だ、と叫んで。死因は青酸化合物によるものと推定されるがあまりに効力を発揮するまでの時間が遅く、よほど特殊な化合物が使われたのではないかと思われた。そう、例えばあの事件のような――
 四年前、世にも奇怪な物語と世間を騒がせた「美宝堂事件」が、再び甦るのか。混乱する捜査陣をあざ笑うかのように、一件また一件と過去の犯罪をなぞった殺人が繰り返される。悪魔の知恵を持つ犯人に、名探偵・神津恭介が挑む傑作推理。
 白羊書房の雑誌「漫画タイム」に昭和30(1955)年8月から掲載されるも翌年中絶し、仕切り直して探偵小説専門誌「宝石」に昭和31(1956)年10月号~昭和32(1957)年5月号まで連載された、神津シリーズ第五作。長篇としては合作も含め八冊目となる。角川文庫の未刊分を補う形で光風社出版から刊行された叢書「名探偵・神津恭介」の中では比較的長めの長篇で、当時は期待したものだが内容的には微妙。あまり評判のよろしくない『神秘の扉』と名作『人形はなぜ殺される』の間に挟まるだけあって、そこまで酷くもないがわざわざ取り上げる程でもないという、中途半端な作品に仕上がっている。
 帝銀モチーフの毒殺四件に加え死刑執行のタイムリミットと、派手な見掛けの割には地味め。人間関係こそ複雑なものの、現実事件から採った毒殺手段+ワンアイデアのみで基本プロットが構成されている。拘置所内に〈悪魔の嘲笑〉が響き渡るラストシーンは流石だが、ここに持っていくためだけの小説で5点以上は付けられない。

No.1 5点 2016/04/24 21:56
神津恭介シリーズの中でも知名度の低い作品のひとつでしょう。それであまり期待していなかったせいかもしれませんが、意外に楽しめました。巻末解説には犯人は途中で予想できるだろうなどと書いてありますが、う~ん、これはどうなんでしょうね。犯人の名前だけこいつじゃないかと直感したところで、動機やら最高裁判決を待つ被告人の態度やらの謎の見当がつかないままでは、何も推理できていないのと同じです。実際、嘲笑が響き渡るという印象に残る皮肉なラスト・シーンを生み出す真相は、かなり意外性があります。
ただ、毒を飲まされた被害者が犯人の名前を言う直前に、新聞記者真鍋の目の前で死んでしまうというのは、冒頭の1回だけなら問題ありませんが、2回連続となるとさすがにご都合主義が過ぎますし、クライマックス部分はもう少し効果的に見せられなかったかなという気もします。


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