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[ 本格/新本格 ]
炎の女
検事 霧島三郎シリーズ
高木彬光 出版月: 1967年01月 平均: 6.50点 書評数: 2件

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光文社
1967年01月

光文社
1973年01月

KADOKAWA
1976年05月

光文社
2006年02月

No.2 7点 人並由真 2023/09/29 20:02
(ネタバレなし)
 昭和40年代の初め。28歳のバーのホステス・小林律子は、商社「光和産業」の厚生課長・毛利直樹と男女の関係にあった。直樹の妻で、レディ向けの装飾品・衣装専門店「カンナ」の店長でもある初恵(旧姓・金子)は、律子の中学時代の学友であり、律子がいまだに消えない憎悪の念を抱いている女王様然とした女性だった。そんななか、直樹は妻の初恵の殺害に乗り出し、律子を巻き込むが、犯行の直後、律子は何者かに襲われて昏睡。律子が居合わせたカンナにも火が放たれ、律子は全身に大やけどの重傷を負う。律子は初恵と誤認されて大病院に収容され、直樹も口裏を合わせたまま、包帯姿の「毛利初恵」として治療を受ける。だがそんな律子の周囲に、殺されたはずの初恵の影がちらつきはじめた。そんな一方、光和産業の青年社員・潮田昭二の周辺では、思わぬ殺人事件が生じていた。


 霧島三郎シリーズの第五長編。
 元版のカッパ・ノベルス(第49版)で読了。

 物語の中盤、一部の叙述から、作者がこんな書き方をするのなら、では……と先読みできた気になるが、そんな甘い考えでいると、事態は二転三転、えー、えー、と驚かされる。
 読後にX(旧Twitter)で本書の感想を拾うと、高木彬光のあまり語られざる、知られざるベスト級作品扱いしているミステリファンも何人かいるようで、納得! の出来。

 ネタバレになるのでもちろん詳述は控えるが、物語、事件全体の構造についての着想が素晴らしい。
 真犯人も相当に意外だが、作者の頭にはかの欧米の某作品が頭にあったのでは? とも思った。とんがった犯人像は、いかにもこの作者らしいかも。

 得点的には稼ぎまくる秀作だが、蟷螂の斧さんのおっしゃるいつの間にか忘れられた部分もたしかにあり、完成度という意味で傑作にはなりきれなかった優秀作、というところ。それでも霧島シリーズの長編のなかでは、確実に上位に来る出来であろう。
(評者はまだ未読の長編が二冊残っているが。)

 いや、最後の最後までおもしろかった。

No.1 6点 蟷螂の斧 2018/10/05 16:52
「BOOK」データベースより~『私をこんな女にしたあの女、初恵が憎い―日陰の青春に悩む女・律子にきざした殺意。この殺意は仲の冷めきった初恵の夫・直樹の計画と合致した。ベッドで交わされた妄想は現実となり、殺人は成功。しかし、律子は何者かに襲われ、大火傷を負う。続いて起こる殺人事件。そして現場に残る“ミツコ”の香り…。検事・霧島三郎が、人間心理の深淵に挑む、シリーズ第五作。』~

倒叙形式からスタート。途中からは死んだはずの初恵が生きているのでは?とサスペンス感が盛り上がります。そして後半、本格推理に移行、十分楽しめました。ただ惜しいのは、意外な犯人像が唐突に感じられることです。推理段階では、かなり詳細にわたり動機などを検討していますが、そこには伏線らしきものがなかった。それは犯人の特定が消去法なのでやむを得ないかもしれませんが・・・。また犯人の告白がないため、真の動機やアリバイ工作、脅迫状、特に香水“ミツコ”の取り扱いについて不明のままで、もやもや感が残りました。


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