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[ サスペンス ]
ゼロの蜜月
検事 霧島三郎シリーズ
高木彬光 出版月: 1965年01月 平均: 7.50点 書評数: 2件

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光文社
1965年01月

光文社
1973年01月

KADOKAWA
1975年04月

光文社
1990年10月

光文社
2005年12月

No.2 7点 人並由真 2022/03/08 05:11
(ネタバレなし)
 ベテラン弁護士、尾形卓蔵の娘で26歳の悦子は、失恋の傷心が癒えないなか、父から意に添わぬ縁談話を勧められる。そんな折、悦子は偶然に、千代田大学の経済学の助教授で33歳の塚本義宏と知り合い、互いに恋に落ちた。だがやがて、義宏の家庭内に複数の問題が発覚。それでも悦子は、青年検事・霧島三郎の妻である友人の恭子にも応援されて、自分の恋を結婚に向けて完遂させる。しかしそんな悦子を待っていたのは、殺人事件という名の予想もしない惨劇だった。

 霧島三郎シリーズの第三弾。今回も元版のカッパ・ノベルスで読了(ただし昭和49年の52版)。
 シリーズ中でも秀作と噂の一編だが、メインゲストキャラクターの設定が第一作『検事・霧島三郎』の後日譚的な文芸ポジションだったのに軽く驚き。
 というわけで、こだわる人はそっちから読んでください(ストーリーそのものは本作から読んでも全然問題はないし、別に本作内で第一作のミステリ的なネタバレをされる訳でもないけど)。

 メインヒロイン悦子の恋愛ドラマを主軸にサクサク進んでいく前半も、殺人事件の発生で霧島三郎が前面に出てくる中盤以降も、ともにリーダビリティは高い。
 評者は例によって登場人物一覧リストを作りながら読んだが、物語の表に多数の登場人物を出したり引っ込めたりしながら、それぞれのパーソナルデータが増えて行く感覚が実に快い。
(しかし一部のいかにも思わせぶりな描写は、たぶん確信的なミスディレクションだったのだろうな? これが結構うまい感じで、評者はまんまと引っかかった~汗~。)
 後半、明らかになるメインキャラクターの背後に秘められた秘密もなかなかのインパクトではあった。

 で、かなり特殊な状況、タイミングで殺人が行われ、最後まで引っ張られるフーダニットの興味とともに「なぜそんな時局に?」というホワイダニットの謎が、本作の最大の求心力のひとつとなる。真相を教えられると、説得力としてはやや微妙な部分もあるが、それなり以上にロジカル、とはいえるものか。いずれにしろ、終盤、残りページ数がどんどん少なくなるなか、ギリギリまで解決を引っ張るサスペンスの形成はかなりのもの。
 
 ちょっと不満だったのは、某キャラクターの(中略)が見え見えだったことかな。アレは「そうなんだろうね」と早々に察しがつくし、さらに一方で、「そう」だと、スナオに受け取ると、ちょっと描写が不自然な印象もある。まあいいけど。

 なお本作は『刺青』『密告者』(霧島ものの第二作)とともに、英訳されて欧米に紹介された高木作品三冊のひとつのようである。
 なるほど、恋するヒロインの立場の変遷をスピーディに語る本作のプロットは向こうの読者にもウケそうだが、これいいんだろうか、と思うのは、英訳タイトル。ちょっと中盤以降のネタバレっぽい。
 気になる人は、本作を読んでから、英語版のタイトルを確認してください。 

No.1 8点 斎藤警部 2015/09/09 01:26
社会悪を良い意味でダシに使った「人蟻」などに較べると「0蜜」は本腰の入った社会派ミステリと言え、強力なサスペンス持続に謎解き要素も堅調、如何にも古式ゆかしいA級オーラの漂う逸品。


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