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ミステリイ・カクテル(推理小説トリックのすべて) 渡辺剣次 |
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事典・ガイド | 出版月: 1975年01月 | 平均: 6.67点 | 書評数: 3件 |
講談社 1975年01月 |
講談社 1985年07月 |
No.3 | 7点 | クリスティ再読 | 2024/11/08 22:31 |
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大変なつかしい本。70年代というと、渡辺氏の「13の密室」などの「13の〜」アンソロ・シリーズも懐かしいんだが、これも同時期に出た本。乱歩の「類別トリック集成」に基づいてエッセイ風にトリック論をしてみた評論である。
乱歩という人は密室分類もそうだけども、マニアックにトリックをコレクションして分類することに情熱を傾けた。日本のミステリ界自体がこの影響を受けて「トリック至上主義」みたいなカラーが、アマチュアに至るまで形成されたわけである。まあこれ自体の功罪はいろいろと考えないわけでもない。無論こういうカラーは海外にはなく、日本の独自のミステリ受容ととらえるべきなのだが...それでも渡辺氏の「師・乱歩」への思いみたいなものが、今回強く読んでいて感じられもした。 乱歩は、おなじ本格物でもヴァン・ダイン、クイーン流の、あらかじめ犯罪にかかわる正確なデータをすべて提示して、作者と読者が犯人さがしの智的闘争をするというタイプを好み、フレッチャーやクロフツ流の、データがつぎつぎ変化して、読者が最後まで引きずり回されるタイプを好まなかったのである。 と乱歩を評しているあたり、乱歩という人の個性をよく捉えている。逆に渡辺氏が「13のアリバイ」は編まなかったのも、そういう師への想いがあったのかもと想像する。その分を鮎川哲也が「下りはつかり」などのアンソロで補ったのかもしれない。 だからか「類別トリック集成」から少しズレた話題である、「14.未完の悲劇」の章が昔からずっと気にかかっていたことを思い出す。さまざまな理由で完結しなかったミステリの話題を扱った章である。木々高太郎の中絶作「美の悲劇」、乱歩の中絶作「悪霊」、虫太郎の遺作「悪霊」、安吾の「復員殺人事件」(高木彬光が補作したことでも有名だが)、十蘭の遺作で妻によって完結した「肌色の月」...「ミステリ自体がミステリ」なこういう作品の「ミステリな運命」に改めて今回、出逢いなおしたことの感慨にふけったりするのは、評者も老いたからなのだろうか。 |
No.2 | 8点 | 測量ボ-イ | 2015/07/06 21:19 |
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この僕がおそらくはじめて読んだであろうガイド集。
推理小説にこういうトリックがあるのだという事で、当時は 大変参考になりました。 但し本の性格上、ネタばれせざるを得ない箇所もあるので、 これから読まれる方はそこを注意して下さい。 採点は思い入れも含めての点数で。 |
No.1 | 5点 | 蟷螂の斧 | 2015/06/10 15:01 |
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本文より~『本書「ミステリイ・カクテル」は、江戸川乱歩の「類別トリック集成」におおむね準拠して、数多いトリックのなかから代表的なものを抜きだし、その作品例を要約してのべ、各々の概念をときあかし、かつ同種のトリックをふくむ代表作を列挙し、全篇を読みものとしてまとめてみたものである。』~
乱歩氏の「類別トリック集成」は同氏にとっても満足のいくものではなかったらしい。私には、どうもピンとくるものがなく、使い勝手が非常に悪い。本書は、乱歩氏に準拠しているとは知らず読んでしまったので、あまり効果的な内容とは言えませんでした。また、短編の例が多いことも私にはなじめないところがありました。なお、トリックに関する先駆的な作品が数点判明したことは役に立ちました。先駆的作品を読むことも楽しみの一つなので・・・。 現在、考えていることは、「トリック別ベスト5」的なものを自分なりに作ってみたいということです。やはり6W1Hに基づき分類するのがいいのかなあ?と思っています。大分類を犯人・被害者・アリバイ(時間・場所)・犯行目的・動機・方法(密室・毒殺)+叙述等とし、そこから中分類くらいまでの項目で抑えるような感じですね。いつになるか分かりませんが、書評で”本書は「意外な犯人像」のマイベスト3となりました”などと記載できればと思っています。 |