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泡坂妻夫 からくりを愛した男 |
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事典・ガイド | 出版月: 2015年02月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
河出書房新社 2015年02月 |
No.1 | 7点 | Tetchy | 2015/06/28 00:04 |
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最近電子書籍では再現できない紙書籍だからこそ成し得る仕掛け本『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』が話題になり、さらには造本する製本会社が倒産したために長らく復刊を切望されながらも実現されなかった幻の仕掛け本『生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術』をも復刊されることになり、泡坂再評価の気運が高まっている背景がこのようなムックの発行を後押ししたことは確かだろうが、それでも作者没後6年目にしてこのようなムックが作られたことはこの作家がいかに特異でミステリファンにとって忘れられない作家であったことかを物語っている。
泡坂妻夫が他のミステリ作家と一線を画すのはやはりその特異な経歴であることは論を俟たないだろう。 紋章上絵師という職人でありながら、マジシャン厚川昌男としても活躍し、マジック関係の書物も刊行しており、さらに今なお高い評価を維持し続けている亜愛一郎シリーズを代表とする本格ミステリの書き手でありながら、幻想的な男女の機微を扱ったミステリに江戸情緒溢れる時代物も書き、そして直木賞作家でもあるというまさに天は二物だけでなく三物も四物も与えた才能に溢れた人物であった。 とにかく泡坂愛に溢れたムックである。冒頭の北村薫氏×法月綸太郎氏の対談から一気に泡坂妻夫作品についてどっぷりつかって回想に耽ることができ、そこから各作家のエッセイに、著名人たちの泡坂作品ベスト3の選出と、恐らく一ファンなら誰もが理想とする読み物が目白押しだ。ダメ押しなのは幻影城に掲載されていた権田氏をインタビュワーにした赤川次郎氏と故栗本薫氏との座談会が掲載されていることだ。当時新人作家だったお三方が斯界の権威としてしゃちほこばってなく、初々しい素の姿で思う存分それぞれのミステリに対する思考や嗜好について語っているのだ。これを読めるだけでこのムックの価値はあるほどの充実した、そして貴重な内容だった。 ミステリファン、特にミステリ通に好まれた作家であった。従って決して万人に受けた作家ではなかったが、その作品群には珠玉の物や実験的な物や挑戦的な物が多かった。個人的には氏の古き日本文化への愛着と日本人の持つ粋という気質が色濃く反映されて日本情緒溢れる『ゆきなだれ』や『蔭桔梗』といった短編集が多くの人に読まれて欲しいと思う。今なお絶版であるのが悔しまれる。 |