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新本格ミステリを識るための100冊 令和のためのミステリブックガイド 佳多山大地 |
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事典・ガイド | 出版月: 2021年08月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 3件 |
![]() 星海社 2021年08月 |
No.3 | 7点 | Tetchy | 2025/05/18 02:02 |
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これまでミステリガイドブックは数々買ってきたが、ここ最近はご無沙汰していたが、このあまりに正統的なミステリガイドブックが発刊されたことで思わず手を取ってしまった。
というのも私が今ミステリを中心に読書ライフを始めたのが大学時代の友人が貸してくれた島田荘司氏の『御手洗潔の挨拶』がきっかけだった。そこから島田氏のミステリ作品を読み、そして彼が綾辻行人氏や我孫子武丸氏、法月綸太郎氏ら京都大学ミステリ研究会の諸氏の新進気鋭のミステリ作家たちのデビューを手掛けていることを知り、そして彼らのミステリが当時講談社の編集者宇山日出臣氏によって新本格と名付けられた一大ムーヴメントであることを知り、彼らの作品からどんどんミステリの輪を拡げていった。 私が島田氏のミステリに最初に触れたのが1992年なので綾辻氏のデビューから5年後だが、私のミステリの歩みは新本格の歩みと同じであると云える。 しかしこの本格再興ブーム、本書では復興探求運動(ルネッサンス)と名付けられているが、まさかこの21世紀も22年を経ってまで続くとは思わなかった。 いやまだ当時はムーヴメントがあるとはいえ、年末のミステリランキングでは冒険小説やハードボイルドが上位を占めているのが通例だった。 しかし現在ではミステリランキングには本格ミステリが席巻しており、今なお新たな作家が続々と出ていることに驚愕を覚えてしまう。現在は綾辻氏らの新本格ミステリを読んで育った作家たちが新たな本格ミステリを紡いでいるのである。 かつて本格ミステリのネタは出尽くしたと云われていたが、それから数十年経った今でも、21世紀になってもまだその灯は消えず、寧ろ更に輝きを増しているのだ。 挙げられている作品に対して眉を潜めるような物がなかった。タイトルにあるようにこれらを読めば新本格ミステリを識ることが出来る作品群であると云えるだろう。 ただ中には今では手に入らない作品もあるため、このガイドブックを読んで興味を持った読者もまた全ての作品を網羅することが出来ないのは残念だ。 またこれまでのガイドブックと異なるのは著者の佳多山氏が私と同い年であるため、その内容に同時代性を強く感じることだ。 これはかなり大きい。 これまでのガイドブックは北上氏、新保氏や瀬戸川氏、香山氏といった年上の膨大な読書量を誇る、いわば先生的な書評家によるガイドブックが主だったが、彼のガイドブックは私の当時の思いが蘇るような砕けた雰囲気で語られるため、共感する部分が大きかった。そして出版社でのパーティーのエピソードなども交えられ、裏話も含まれているのが他のガイドブックと異なって新鮮だった。 ところで1987年を起点に2020年を終点とした対象作品と34年間という実に中途半端な期間で切り取ったことに著者自身も疑問を覚えたと前書きに述べられているが、それは2020年が新型コロナウイルスの世界的大流行という、世界情勢と価値観の一大変換期を迎えたため、発刊に踏み切ったとある。そしてこのガイドブックは“コロナ禍以前の新本格ベスト・ブック・セレクション”という意味をも持っているのだと述べている。 そう、世界が変わる前の新本格ミステリ作品群。 今やネットが発展し、動画やSNS、そしてゲームまでウェブで楽しむようになった世の中になり、かつて読書のライバルだったテレビもまた衰退の途にある。 その中で娯楽の1つであった書物の衰退もまた深刻な状況だが、いやいやそんな世の中でも読まれるべき面白い傑作が生みだされている、 または今なお読み継がれているのだぞと、声高に主張するためにもぜひともこういったガイドブックはこれからも刊行されてほしいものだ。 |
No.2 | 7点 | 測量ボ-イ | 2022/08/27 17:20 |
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「十角館」以降の本格ミステリを紹介したガイド本。
東西ミステリと並んで、小生が今後読破すべき作品の道標になりそうです。 余談ですが、小生もメルカトルさんに倣って、既読作品をカウントしてみました。 ・・・100編中、34編でした。 まだまだ修行が足りませんね 苦笑 |
No.1 | 7点 | メルカトル | 2022/07/30 23:14 |
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本格ミステリの復興探究運動ーー<新本格ミステリ>ムーブメントは、戦後日本における最長・最大の文学運動です。綺羅星の如き才能と作品群を輩出してきたその輝きは、令和に突入した今に至る本格ミステリシーンにまで影響を及ぼし続けています。本書では、<新本格>の嚆矢である綾辻行人『十角館の殺人』が刊行された1987年から2020年内までに刊行された日本の本格ミステリ作品より、その潮流を辿るべく100の傑作を厳選しご案内。さらにその100冊のみならず、本格ミステリ世界へ深く誘う<併読のススメ>も加え、総計200作品以上のミステリ作品をご紹介します。さあ、この冒険の書を手に、目眩く謎と論理が渦巻く本格ミステリ世界を探索しましょう!
Amazon内容紹介より。 評論家佳多山大地が選ぶ、広義の「新本格」ミステリ100選。『十角館の殺人』から始まるムーブメントが現在まで続いているとの持論を持って、様々なジャンルから100冊を厳選?しています。が、やはり幅が広く、例えば辻真先や皆川博子の作品や完全なホラーである『フェノメノ』なども含まれている為、本格ミステリのガイドとしてはややずれが生じていると思われます。 ついでに併読のお薦め本も紹介されているので、かなりの量が掲載されています。勿論海外作品もそこに含まれます。まあこちらは古典が多いですけど。 ただ、ポイントが高いと感じたのは『占星術殺人事件』『匣の中の失楽』『ハサミ男』の小論文が挿入されている事。これはなかなかの見ものだと思います。それぞれの本質を衝いた論説であり、成程確かにと頷かされる事しきりでした。当然ながら、大々的にネタバレしていますのでこれらの作品を未読の方はご注意下さい。ミステリマニアであるなら勿論読んでいると思いますがが。 ちなみに100冊中66冊が既読でした、まあこんなもんでしょう。 |