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読み出したら止まらない!国内ミステリーマストリード100 千街晶之 |
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事典・ガイド | 出版月: 2014年03月 | 平均: 6.67点 | 書評数: 3件 |
日本経済新聞出版社 2014年03月 |
No.3 | 7点 | メルカトル | 2014/12/09 22:31 |
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書評家、千街晶之氏が選ぶ国内ミステリの必読書100冊。とは言え、いくつかの縛りを設けているため、各作家の代表作とは限らない、いわば裏ベストと言っても良いような作品が並んでいる。その並びを見ると、やはりいまいちピンとこない感は否めない。例えば島田荘司氏の『摩天楼の怪人』、京極夏彦氏の『嗤う伊右衛門』、麻耶雄嵩氏の『メルカトルかく語りき』など、選出に首を傾げざるを得ないのもかなり含まれている。それと、安孫子武丸氏が選出されていないのも疑問だ。
しかしながら、千街氏なりに吟味を尽くして精選しているのも、その苦心の末の選択もその心情は何となく理解できる。本格ばかりでなく、ハードボイルド、ホラー、SF、サスペンス、警察小説からイヤミスに至るまで、およそ考えうるすべてのジャンルを網羅しながら、選別しまとめ上げられた第二部では、ほとんどのミステリ関係の作家が挙げられているのには感心させられる。よくこれだけの作品を読破しているものである。 書評家として個人的に好きな千街氏のガイド本でもあるし、私としては好みの範疇から取りこぼしている作品を発見できただけでも購入した価値があったと思う。 |
No.2 | 7点 | Tetchy | 2014/12/07 00:06 |
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本書に挙げる書物を挙げるにあたり、選者の千街氏はいくつかの縛りを設けている。
それまでのアンケート方式で綴られたオールタイムベストのガイドブック50位以内に選ばれた作品は殿堂入り作品として取り扱わない、毎年行われるランキング本で選ばれる作品の内、上位5位までの作品は対象外とする、しかも現在でも入手可能な作品とする、というこの3つの縛りに基づいて選ばれている。 確かにこれまでこの手のガイドブックは数多出版されているので、それらと一線を画すためにこのようなルールを設けるのは面白い趣向だと思う。 しかしそれが故にどこか選ばれた作品に閉塞感を覚えてしまうのも事実で、なぜこの作家のこの作品?と云うのがところどころあったのは否めない。 例えば綾辻作品で『迷路館の殺人』が選ばれているが、これは『時計館の殺人』だろう、とか髙村薫の作品がなぜ『李歐』?とか、真保作品は『震源』よりも他にあるだろう、とか東野圭吾で『天空の蜂』もいいが、世評では『悪意』だろう、などと個人的に思うことは多々あった。 また一方で千街氏ならではの選書もあり、例えば野阿梓氏の『兇天使』や高野史緒氏の『ムジカ・マキーナ』などは彼でないと選ばない作品だろう。 そういう意味ではかなり選者の好みが出たガイドブックである。ただ冠に「マストリード」とあるにしては、ちょっとその言葉の強さに比べて選ばれた作品の価値が等価であるかどうかは首を傾げてしまう所があると正直に云っておこう。また杉江氏同様、挙げられなかった作品を補完して紹介する第Ⅱ部の方がその筆致が熱いのには思わず苦笑してしまったが。 |
No.1 | 6点 | kanamori | 2014/03/14 20:22 |
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書評家・千街晶之氏の選定による国内ミステリーの必読作品100選。
品切れ・絶版ではない”今読める”をコンセプトにしているのは、昨年出た姉妹編の「海外ミステリーマストリード」と同じだが、さらに「東西ミステリーベスト100」の50位以内のものと、「このミス」や週刊文春年末ランキングの上位ランクイン作品を対象から外す(ただし例外もある)という縛りを設定しているのが特徴です。 品切れ・絶版であっても古本をネットで注文できる時代に、対象を現役本に限るのは(海外編同様)あまり意味がないようにも思えますが、出版社サイドの意向があるのかもしれません。 選定作品は本格に偏ることなくホラー、幻想、冒険小説、ハードボイルド、社会派、警察小説など多岐にわたり、読書の幅を広げてくれる。ジャンルミックスや、SFなど他ジャンルとの境界線上の作品も目立つように思う。個人的にはノーマークだった野阿梓「兇天使」が気になる。また高城高「X橋付近」や稲見一良「猟犬探偵」など再読したくなる作品が多かったのも嬉しい。 ただ、国内ミステリーの場合は、未読であっても作家や作品に関する情報が豊富に入ってくるので、明らかに好みに合わないものは最初から食指が動かない。そういった未読作品も結構あった。 |