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ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド 浅木原忍 |
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事典・ガイド | 出版月: 2017年03月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
論創社 2017年03月 |
No.1 | 7点 | kanamori | 2016/02/23 18:42 |
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連城三紀彦が2013年秋に亡くなって以降、雑誌掲載のままだった短編をまとめた作品集『小さな異邦人』や2冊の遺作長編の出版、”このミス”での復刊希望アンケート1位獲得、さらには人気作家が選ぶ傑作短編アンソロジーの出版などあり、”ミステリ作家・連城”の再評価、復権の兆しがみられるのは嬉しい。ただ、直木賞を受賞した「恋文」の影響か、いまだに一般には”恋愛小説作家・連城”というイメージも強いらしい。
本書は、連城三紀彦の全長編(含む未刊行作)と、確認できたすべての短編を取り上げ、そのミステリとしての読みどころを、”ミステリ読者のために”徹底紹介した文庫本サイズのガイドブックです。(今回読んだ”増補改訂版”には、雑誌掲載のまま未刊行になっている長編3作のレビューなど、かなりの加筆修正があって、旧版から100ページほど分量が増えています)。 連城作品には、ミステリと謳われていなくても恋愛小説に擬態したミステリだったり、また実際に恋愛小説であってもミステリの技巧を取り入れたものも多いことは、過去に出たガイド本や文庫解説などでも触れられているところですが、本書でその全貌が明らかにされている。 著者・浅木原忍氏による傑作認定の作品を見ていくと、短編では『戻り川心中』『夜よ鼠たちのために』『宵待草夜情』の三大傑作短編集の各収録作は当然として、「白蘭」(『たそがれ色の微笑』収録)や「喜劇女優」(『美女』収録)のように、マニアックながらも読み逃せない隠れた作品が傑作として多く挙げられている。長編でも、有名作とはいえない『美の神たちの叛乱』などはナルホドと思えるし、連作短編集『落日の門』も、いまだに文庫化されないのが不思議な逸品で、個人的にかなり首肯できる部分が多い。 またコラムの章では、『造花の蜜』の(蛇足という意見も多い)最終章の”隠された意図”を考察した論考が非常に興味深かった。連城愛が高じた末の妄想という感もなきにしもあらずですが、構図の反転を得意とする連城マジックさながらの”真相”はインパクトがあります。 とにかく、著者の”連城愛”がすごくて、取り上げた作品をこれだけ熱く激賞しているガイドブックは、他には内藤陳氏の「読まずに死ねるか!」以外に思い浮かばない。どのレビューにも「傑作」というワードがあふれていて、ざっと数えて5万回ぐらい「傑作」という言葉が出てくる。まさに連城三紀彦に宛てた”恋文”のようなガイドブックなのです。 ただ、多くの人に読んでもらいたい労作なのですが、同人誌ゆえに一般書店やAmazonなどで手軽に入手できないのが難。大手出版社から出してもおかしくないぐらいのクオリティなんですけどね。 |