海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 本格/新本格 ]
神のロジック 人間のマジック
改題『神のロジック 次は誰の番ですか?』
西澤保彦 出版月: 2003年05月 平均: 6.36点 書評数: 14件

書評を見る | 採点するジャンル投票


文藝春秋
2003年05月

文藝春秋
2006年09月

文藝春秋
2006年09月

コスミック出版
2021年06月

No.14 6点 パメル 2020/11/20 09:18
マモル・マコガミは、見知らぬ男女に連れられ外界から完全に遮断された学校(ファシリティ)へやってきた。そこにいるのは5人の少年少女と校長先生、寮長とミズ・コットンだけ。何の目的があるのかも分からないまま、推理ゲームのような実習を繰り返す。そんな中、新入生が入ることが発表され緊張が走る。
謎に包まれた学校の設定が、恩田陸氏のある作品を想起させる。ただ違うのは、誰ひとりとしてこの学校で学んでいる目的さえ分かっていないところ。前半は実習での推理ゲームに関するディスカッションがメイン。そこに新入生が入ると実際、何が起きるのかなど興味をそそる事柄が絡んでくる。
ひとつひとつは決して大きくはないが、マモルの目を通してその一つずつが検証され明らかになっていく展開は、まるで自分が見知らぬ館の中を探検しているかのうようで惹きつけられる。そして後半の事件が起きてからは、一気に畳みかけるような展開で、前半の慎重なムードから一転し、大胆な結論を導き出すことになる。明かされる真相は、ある理由からやや減じてしまったのが残念だが破壊力は抜群。そして読み終わった時、このタイトルの意図するところを改めて考えざるを得ません。
歌野晶午氏の某作品と比較されることもあるみたいだが、個人的には、こちらの方が好み。

No.13 5点 蟷螂の斧 2014/08/24 08:44
(ネタバレあり)作品の「肝となる事象」に説得力があるかどうかで評価が分かれると思います。本作の肝は有名作品の「ある○○が○○ない」と同様であるのですが、これについてはミステリーとしては否の立場ですね。SF、オカルト、ホラー系であればよいのでしょうが・・・。なお、「ぼく」の地文に虚偽がないようにする、つまりアンフェアにならないようにするという設定に無理があるように思います。著者の苦労(フェア精神)は分かるような気がしますが、そのため伏線があからさまになり過ぎたように感じます。序盤で真相そのものに触れてしまっていました。比較される同時期の作品は、読者にある違和感を感じさせ、その違和感がラストで判明するという強烈なインパクトがあります。しかし本作の場合、前記のとおりでもったいない気がしました。著者の特徴がでている作品ではあると思います。

No.12 9点 いいちこ 2014/08/20 17:34
ある超有名作品と類似点があり、出版時期が近く、かつ版元まで同じということで相当に割りを食っているが、反転する構図の鮮烈さと完成度の高さからして本作の方が上と評価したい。
(以下ネタバレを含みます)
通常の叙述トリックは、作品の外側にいる読者に対してのみ仕掛けられるが、本作のトリックは直接的には作品の内側にいる生徒たちに対して仕掛けられており、読者は巻き添えを食う構造となっている。
従って、主人公の一人称による叙述には何も仕掛けられておらず、その意味では狭義の叙述トリックにはカテゴライズされないと思われる(たぶん)。
両者は一見類似しているように思えるが、効果は全く異なる。
前者は読者を驚かせる効果しかないが、後者は作品世界自体を全く異なる様相に変えてしまう。
本作は発生する事件自体にはさして見どころがない。
しかし、超高齢社会が抱える家族関係の希薄化、認知症患者の増加など、多くの社会問題を想起させるプロット、殺人の動機を共同体幻想の維持・防衛とすることで、メイントリックと完全に連結させ、クローズド・サークルものの急所ともいうべきホワイダニットを鮮やかに処理した点が極めて秀逸。
ラストの後味の悪さが指摘されるが、犯人の動機からして最終的には共同体自体の破壊に向かうのは必然。
本作の最大の泣き所は舞台設定のリアリティの弱さにあるが、生徒数を共同体幻想の維持に最適な水準に設定し、新入生の登場を最大の危機として描く等、合理性確保に向けて最大限努力。
母親とのやり取りの回想が真相を示唆する伏線として強烈に機能しているほか、スナック菓子の消失という一見日常的な謎に隠された皮肉極まりない意図が見事。
先生と生徒たちの対峙を「宗教戦争」と説明するくだりは、現実社会における認識の相対性と、それを巡る諸国・諸民族の争いを強く想起させるもので天晴の一語

No.11 5点 ミステリ初心者 2014/02/08 17:10
ネタバレがあります


 マモルの母親が神について話をしていましたが、とても面白い伏線ですね。 他にも、読み返すと面白い伏線がたくさん。

 不満なところは、真相がちょっと無理があると思う。作中作・夢落ち系のひとつだと思いますが。
 あと、わりと早い段階で、真相のめぼしがついてしまいました。

No.10 6点 E-BANKER 2013/04/05 15:36
2003年発表、作者32作目の作品(とのこと)。
作者得意の「特殊設定」下で起こる事件に加え、大掛かりな叙述トリックまでもが炸裂する・・・

~「ここはどこ?」「何のために?」 世界中から集められ、謎の『学校』で奇妙な犯人当てクイズを課される『ぼくら』・・・。やがてひとりの新入生が『学校』に潜む“邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、共同体を悲劇が襲う・・・。驚愕の結末と周到な伏線とに、読後、感嘆の吐息を漏らさない者はいないだろう傑作ミステリー~

これは・・・作者の「狙い」がバッチリ嵌った作品。
はっきり言って、後半までは何やら訳の分からない特殊設定に付き合わされ、事件らしい事件も起こらず、「いったい何が狙いなのか?」という疑問を抱きながら読み進めていた。
潮目が変わったのは、紹介文のとおり、新入生の登場。それ以降、短い間に連続殺人事件やら放火がつぎつぎと発生し、怒涛の如く終盤に突入する。

そしてⅨ章の中途当たりで炸裂するのが、本作全体に仕掛けられた大掛かりな叙述トリック。
なるほど・・・これがやりたかったのか! って感じ。
でも、これって・・・他の方の書評でも触れられているとおり、当然○野氏の代表作「○○○・・・」との「被り」が気になる。
後者の発表の方が若干早かったし、世評では劣っている感は拭えないが、個人的には本作も負けず劣らずではないかと思う。
こういう特殊設定はもともと作者の十八番だし、他作家がやるならともかく、伏線の張り方も「らしさ」があって良い。
(ただ、いくらコントロールされているとはいえ、本人がソレを理解しないという設定はちょっと違和感はあるが)
敢えていうなら、こういう「動機」がどうかということになるのだが、まぁ特殊設定ですから・・・

ということで、個人的には評価したい作品。
作者にはこういうひねくれた設定やプロットがやっぱり似合うね。

No.9 5点 いけお 2012/05/27 02:42
序盤は楽しめたが、真相の叙述が類似の作品と違い有機的に絡んでいないのが残念。

No.8 8点 Q-1 2010/12/05 02:36
皆さんが某作品と表現されているので私もそれに倣わせて頂きますが、
その某作品のトリックと表面上は同じですが、内容は全く異なると思います。
私はこちらのほうが自然で好みでした。

No.7 7点 メルカトル 2010/12/02 23:21
序盤から中盤にかけては、ヌルいという印象しかなかった、タイトル負けしているなと。
しかし、このSF的設定と子供たちの何気ないやり取りの中に、いくつもの伏線が張られているので、油断は禁物である。
後半に入って、唐突に殺人が起こるが、それでもまだ今ひとつ退屈な感じは拭いきれない。
しかし、最後の最後で驚愕の真相が明かされる、これで私の本作に対する評価は一変した。
それまでの平板さや退屈さを見事に覆すだけの、強烈な真実に瞠目すべき作品であろうと思う。

No.6 9点 ウィン 2010/09/25 12:17
元々、タイトルのインパクトにひかれて読んでみただけなのだが、想像以上に面白かった。
主人公の11歳のマモルたち6人が学校に集められて、そこでは"実習"と称された推理ゲームをやらされるという、いきなりものすごい展開。
「驚愕の結末・周到な伏線」と文庫の裏に書かれているが、確かに驚愕の結末である。
しかし、ラストが某作品に酷似している。
これはどちらかがパクったというわけではなく、刊行時期が非常に近いため、偶然のことだろう。
伏線の上手さでは、その某作品が勝っていると思うのだが、とにかく刊行時期が重なってしまった偶然が残念。
でも、俺はこっちのほうが好き。

No.5 6点 VOLKS 2008/03/01 23:31
ミステリィとしての評価は難しいものの、読み物として十分に楽しめた。
とりあえず、最初の設定云々がカギ。

No.4 7点 dei 2007/07/15 19:17
評価が分かれる作品だとはおもうけど、自分は楽しめました

No.3 4点 Q 2005/04/21 19:45
文藝春秋も酷いことするなw

No.2 6点 寝呆眼子 2003/08/29 20:38
下の方の書評にもありますが、すこし前に出版された別の作家のある作品とよく似た設定が使われており、それで損しているようにも思います。きっと続けざまに読んだ人は多いんでしょうね。
いわゆる「本格ミステリ」という枠で捉えるなら、「ある作品」よりも、こちらの方が面白いようにも思いますが、「ある作品」のインパクトがあまりにも強烈であったので、そのぶん点数が辛いのかもしれません。

No.1 6点 しゃんてん 2003/08/17 20:22
 伏線を使った論理的な解答で人を驚かせる、本格ミステリらしい本格ミステリ。
 前半は生ぬるい感じを受けた。子供たちの社会、謎な学校のあり方、大人びた主人公の個性、それらになかなか興味をもてなかった。
 後半の展開には衝撃を受けた。予想もしない展開。そして解答、確かに驚いたのだが。
このトリックは、ある作品と良く似ている…。あっちは“読者の思い込んでいるだけ”、こっちは“登場人物もそう。 その部分こそが主人公、読者共通の謎の答え”という違いはあるのだが。 しかし、その部分が似ているために驚きが半減してしまった。
 しかし、こちらの作品の答えは、本当にそういうことが可能なのかどうか? 私にはよく分からないが…素直に出された結論を受けることはできない…。
 ラストはかなり辛い。辛いが私の好み。


キーワードから探す
西澤保彦
2024年09月
ファイナル・ウィッシュ ミューステリオンの館
2024年08月
彼女は逃げ切れなかった
2023年03月
走馬灯交差点
平均:1.50 / 書評数:2
2022年03月
パラレル・フィクショナル
平均:5.00 / 書評数:2
2020年12月
偶然にして最悪の邂逅
平均:6.00 / 書評数:1
2020年08月
夢魔の牢獄
平均:6.00 / 書評数:1
2019年12月
逢魔が刻 腕貫探偵リブート
平均:5.00 / 書評数:1
2018年09月
幽霊たち
2016年11月
悪魔を憐れむ
平均:7.00 / 書評数:3
2015年06月
回想のぬいぐるみ警部
平均:5.00 / 書評数:1
2015年03月
さよならは明日の約束
2014年05月
下戸は勘定に入れません
2014年03月
探偵が腕貫を外すとき
2013年06月
ぬいぐるみ警部の帰還
平均:5.00 / 書評数:1
2012年10月
モラトリアム・シアター produced by 腕貫探偵
平均:6.00 / 書評数:1
2012年02月
幻想即興曲
平均:5.00 / 書評数:1
2011年10月
彼女はもういない
平均:5.00 / 書評数:1
2011年08月
赤い糸の呻き
平均:6.00 / 書評数:2
2011年05月
必然という名の偶然
平均:5.67 / 書評数:3
2010年10月
幻視時代
平均:6.00 / 書評数:3
2010年08月
からくりがたり
2010年03月
こぼれおちる刻の汀
平均:5.00 / 書評数:1
2009年09月
身代わり
平均:4.50 / 書評数:6
2009年07月
動機、そして沈黙
平均:6.00 / 書評数:1
2008年10月
スナッチ
2008年08月
夢は枯れ野をかけめぐる
平均:5.50 / 書評数:2
2008年04月
腕貫探偵、残業中
平均:6.00 / 書評数:2
2007年07月
収穫祭
平均:6.00 / 書評数:3
2006年11月
ソフトタッチ・オペレーション
平均:5.00 / 書評数:3
2006年10月
春の魔法のおすそわけ
2006年03月
キス
平均:5.00 / 書評数:1
2005年10月
フェティッシュ
平均:4.00 / 書評数:1
2005年07月
腕貫探偵
平均:5.40 / 書評数:5
2004年12月
生贄を抱く夜
平均:4.00 / 書評数:1
2004年08月
方舟は冬の国へ
平均:6.00 / 書評数:3
2004年06月
パズラー 謎と論理のエンタテインメント
平均:7.50 / 書評数:2
2004年04月
いつか、ふたりは二匹
平均:6.67 / 書評数:6
2003年11月
黒の貴婦人
平均:5.44 / 書評数:9
2003年06月
笑う怪獣 ミステリ劇場
平均:5.00 / 書評数:4
2003年05月
神のロジック 人間のマジック
平均:6.36 / 書評数:14
2003年03月
リドル・ロマンス 浪漫迷宮
平均:6.00 / 書評数:1
リドル・ロマンス 迷宮浪漫
平均:6.33 / 書評数:3
2002年12月
ファンタズム
平均:4.22 / 書評数:9
2002年08月
人形幻戯
平均:5.00 / 書評数:3
2002年03月
聯愁殺
平均:6.67 / 書評数:21
2001年12月
両性具有迷宮
平均:5.50 / 書評数:2
2001年10月
異邦人
平均:7.25 / 書評数:4
2001年09月
夏の夜会
平均:5.50 / 書評数:8
2001年03月
謎亭論処
平均:6.08 / 書評数:13
2000年12月
転・送・密・室
平均:5.80 / 書評数:5
2000年10月
なつこ、孤島に囚われ。
平均:3.41 / 書評数:17
2000年06月
依存
平均:6.91 / 書評数:22
1999年09月
夢幻巡礼
平均:6.00 / 書評数:5
1999年03月
黄金色の祈り
平均:6.33 / 書評数:12
1999年01月
念力密室!
平均:6.50 / 書評数:8
1998年10月
ナイフが町に降ってくる
平均:3.80 / 書評数:15
1998年09月
実況中死
平均:6.57 / 書評数:7
1998年06月
猟死の果て
平均:5.38 / 書評数:8
1998年04月
ストレート・チェイサー
平均:6.00 / 書評数:11
1998年03月
スコッチ・ゲーム
平均:6.38 / 書評数:16
1998年01月
幻惑密室
平均:5.87 / 書評数:15
1997年08月
仔羊たちの聖夜
平均:6.55 / 書評数:20
1997年07月
複製症候群
平均:5.18 / 書評数:11
1997年04月
瞬間移動死体
平均:5.93 / 書評数:14
1997年01月
死者は黄泉が得る
平均:6.73 / 書評数:15
1996年11月
麦酒の家の冒険
平均:5.70 / 書評数:33
1996年08月
彼女が死んだ夜
平均:6.95 / 書評数:21
1996年07月
人格転移の殺人
平均:7.25 / 書評数:36
1996年03月
殺意の集う夜
平均:6.35 / 書評数:31
1995年10月
七回死んだ男
平均:7.39 / 書評数:84
1995年06月
完全無欠の名探偵
平均:6.50 / 書評数:16
1995年01月
解体諸因
平均:5.88 / 書評数:24