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[ 本格/新本格 ]
幻視時代
西澤保彦 出版月: 2010年10月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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中央公論新社
2010年10月

中央公論新社
2014年09月

No.3 6点 パメル 2023/06/30 06:30
文芸評論家の矢渡利悠人、小説家のオークラ、編集者の長廻の三人は、立ち寄った写真展で恐ろしい事実に気付く。
本書のメインの謎として、写真が撮られていた時点で四年前に亡くなっていた同級生の少女・風祭飛鳥が写り込んでいたという不可解な謎が提示されるが、その謎自体の不可能性に力点はない。なぜ、このような状況が生じたのかという動機の謎こそがメインとなる。この写真が生まれるまでに、様々な人間の様々な行動が関わっており、それら一つ一つの行動がなぜなされたのか、という部分が無理がないように描かれている。
そして本書は、ミステリとしてだけでなく、苦みのある青春小説としても読ませる。飛鳥という奥の深いキャラクター、主人公の恋心、教師である白洲と飛鳥の関係など、その時代特有の人間関係、飛鳥にしても矢渡利にしても、創作の苦しみが描かれ青春している。
目先の重圧を先延ばしし、罪悪感はありながらも、そこまで気負ってやったわけではない行動の積み重ねが、最終的に不幸を呼び寄せてしまうことになるという流れはよく出来ている。
合理的に解き明かすのが困難だろうと思われる謎を、メイン部分に仕込まれた伏線が二転三転する当事者の心理と推理を支えつつ、動機の謎を解き明かす論理展開が見事。

No.2 5点 メルカトル 2014/11/12 22:30
なんだか読みやすくて軽い。まるでらしくない作風だと感じる。西澤保彦というより、プロットやストーリーは折原一テイスト。
で、肝心の、死んだはずの少女が映っていた写真のトリックがおろそかになっていて、ぞんざいな扱いを受けているのはどうも気に入らない。まあそれでも、ミステリとしての側面よりも青春小説として充実しているので、まずまず評価できるとは思う。商品としての小説を執筆するという苦行が、どこまでも若者たちを追い込むという実態は、我々素人では理解不能であるが、西澤氏は作家として身に詰まされる面もあったことだろう。だからこそ書けた作品と言うことで、どこか悲劇の匂いがそこはかとなく漂っているようだ。
なかなかよく考えられた小説だと思うが、かなり地味で読んでいて気分が高揚するような代物ではないのは確かである。ただし、お得意の推理合戦は本作でも健在だ。

No.1 7点 danke 2011/02/26 19:45
奇抜な表紙で引くことなかれ。一気に読めてしまった青春モノの佳作。
西澤先生のウリである、推理合戦のアクロバットさもさることながら、
『黄金色の祈り』に近い、郷愁感と苦さを味わえました。


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