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[ 短編集(分類不能) ]
シャーロック・ホームズの事件簿
シャーロック・ホームズシリーズ
アーサー・コナン・ドイル 出版月: 1953年10月 平均: 5.33点 書評数: 15件

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新潮社
1953年10月


1958年09月

早川書房
1991年05月

光文社
2007年10月

河出書房新社
2014年10月

東京創元社
2017年04月

河出書房新社
2023年11月

No.15 6点 虫暮部 2022/05/03 12:22
 ミステリとして「ソア橋の怪事件」、奇譚として「ライオンのたてがみ」「覆面の下宿人」、ユーモアSFとして「這う男」が良い。

 と言うことで、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ譚を一通り再読。私にはこのシリーズ、チャック・ベリーのように思えた。
 1.強烈なキャラクター性と先駆者ゆえの有利なポジションによって、後進に直接間接の大きな影響を誇る。
 2.引き出しは決して多くはなく、しばしば使い回しが見受けられる。
 3.原典よりかっこいいカヴァー・ヴァージョンが多数存在する。

No.14 6点 レッドキング 2021/12/30 20:33
「高名な依頼人」 人殺しの過去さえなければ、あまりにも残酷な、と言える報いを賜る色事師。
「白面の兵士」 ホームズ一人称叙述。「ワトスンの結婚という自分勝手(!)な行為のせいで、私は独りぼっち・・」
「マザリンの石」 ホームズ必殺技の変装、女装レベルに高まり・・何で三人称叙述と思ったら、このトリック。
「三破風館」 過去の恋文が足枷になるってパターン多いな。百年昔とは言え、有色人種への偏見醜悪描写が露骨で・
「サセックスの吸血鬼」 口元を赤く染めて、赤子の首から血をすする若き母親のWhy
「三人のガリデブ」 日本語の「がり」と「でぶ」でなく「ガリデブ」・・これまた「赤毛連盟」タイトバージョン。
「ソア橋の怪」 ○○と見せかけた✕✕・・「本陣殺人事件」「そして誰もいなくなった」etc.・・
「這う男」 意表突くトリックがあるのかと期待させて・・プチ「ドクターモロー」原始SF・・ま、これはこれで・・
「ライオンのたてがみ」 「まだらの紐が・・」でなく「ライオンのたてがみが・・」の岸壁密室殺人。
「ベールの下宿人」 ベールで顔を隠した「人三化七」異相婦人の過去とは・・・
「ショスコム・オールド・プレイス」 絵に描いた様な悪役横暴夫にかかる、絵に描いた様な容疑の真相・・・
「隠居した絵具屋」 絵に描いた様にみじめな寝取られ亭主が被った、絵に描いた様な哀れな被害の真相・・・

 て、ことで、私的シャーロック・ホームズ(コナン・ドイルでなく)ベスト10(12)
        第一位:「唇の捩れた男」
        第二位:「踊る人形」
        第三位:「まだらの紐」 
        第四位:「恐怖の谷」
        第五位:「ライオンのたてがみ」
        第六位:「ブルース=パーディントン設計書」
        第七位:「シルバーブレイズ号」
        第八位:「正体の場合」
        第九位:「赤毛連盟」
        第十位:「六体のナポレオン像」
        同十位:「フランシス・カーファクス婦人の失踪」
        同十位:「サセックスの吸血鬼」

No.13 6点 クリスティ再読 2020/11/29 09:28
ホームズ最後の短編集。何か皆さん評判よろしくないな...いや、「這う人」のトンデモ、「三人ガリデブ」「隠居絵具師」の自己模倣とか、ツッコミどころが多いのは先刻ご承知の上なんだけどもね。(「ライオンのたてがみ」は一時実在しない、と言われてたのを信じてたが、間違ってたみたいだ)
こうやって改めてホームズを時系列で通読すると、評者はこう感じるんだ。「冒険」で確立したいわゆる「ホームズのパターン」を、後の本格史観で「聖典」として崇めることになるのだけど、意外にドイルの「やりたいこと」とこれがズレていたんだろう。だから「回想」以降のホームズは、ときおり「冒険」パターンを採用することもあるんだけど、実際には多様な方向に展開していくことになる。個別の作品でうまくいったものもあれば、失敗したものもあるのだけど、総じてのちの本格読者の期待する方向をドイルは決して向いていなかった....
だからね、「ソア橋」だけを褒める(あるいはグロースにある、と批判する)のは、「ホームズを楽しむ」読み方じゃない、と評者は思う。小説的な力量が落ちているのは否めないし、あくまでホームズがヴィクトリア朝の人間で、第一次大戦後の世界に根差すことができない「懐メロ」なキャラになってしまったのも、大きな弱点ではあるんだけどもね。
そういう意味だと、評判が悪い作品だから褒めるのがなんなんだが、「マザリンの宝石」が、舞台劇風の三人称小説で、ハードボイルド風の味わいがあるのが、逆に評者は面白い。いや実はこの作、「帰還」でホームズが復活する前に、オリジナル舞台劇「王冠のダイヤモンド」を書いたのがずっと埋もれていて、この着想を流用して「空家の冒険」を書いてしまった。それをまたこの時期に改めて小説に仕立て直した、という経緯があるらしい。あまり戯曲と変わっていないんじゃないかな。読んでいて舞台効果が目に見えるよう。小説の人の出入りのさせ方など、戯曲のまんま、という印象。
こういう推理もトリックもない、騙しあいに主眼を置いた暗黒街小説としてのホームズが、第一次世界大戦での「世界の崩壊」によって、ハードボイルドに転化した、と改めてコンチネンタル・オプにホームズを直結したいように感じるのだ。

(「三人ガリデブ」で負傷したワトスンを気遣うホームズに、萌える。すまん)

No.12 5点 Kingscorss 2020/10/10 18:03
ついにホームズシリーズを完読(全てハヤカワ版)。楽しませてもらいました。

さて、今作ですが、『ソア橋』など有名な傑作もあるんですが、やはり全体的には質が落ちていて、ファン含めて不評なのも頷けます… 中にはおいおい、そんなオチでいいの?と心配してしまうぐらい内容的にダメダメなやつ(這う男)や、これ、どっかで見たなぁ…あ!『冒険』のあの話の二番煎じやん!と突っ込んでしまうやつまで…

しかし、この短編集がホームズシリーズ最後なので、ファンなら関係なく必読です!

No.11 5点 八二一 2020/04/14 19:33
シャーロキアンの間でも「つまらない短篇集」として有名。
でも深町さんの新訳で読むと、「覆面の下宿人」は、愛と運命に翻弄された哀しい女の「救い」の物語となり、「ショスコム・オールド・プレース」の納骨所の描写には英国ゴシックホラーの趣すら感じた。

No.10 4点 2017/04/20 09:36
ホームズの特徴的なスタイルはほとんどなくなっている。
ちょっと形を変えただけで面白くなくなるのはなぜか。ドイルは不器用な作家だったのだろうか。

『ソア橋』はトリック重視作品だが、ただそれだけ。ホームズ物にしては単調すぎる。
数十ページの中で種々変転があるのがホームズ物の特徴なのに、それがないのはなんともさみしい限りだ。
『三人ガリデブ』はなんとか楽しめるが、また焼き直しか、と思わないでもない。

といったレベルの作品集で、残念な結果でした。
もう一度読み直せば感想は変わるかも?いやぁ変わらんかな~w

No.9 4点 ALFA 2017/04/16 14:27
さすがの聖典もここまでくると落穂ひろいのようなもの。トリックで有名な「ソア橋」もストーリー自体は単調。
歴史的価値、資料的価値を度外視すると評点は厳しくなる。
グラナダTVのドラマシリーズも、もともと原作が厳しいうえにジェレミー・ブレットの体調不良で出番を減らしたりと、残念なレベルが多い。
注目すべきは「ショスコム荘」。なんと十代のジュード・ロウが出演している。それもチョイ役ではなく、トリックに絡む大事な役どころ。ドラマの出来は原作同様のレベルだが、ジュード・ロウファンなら必見。

No.8 4点 斎藤警部 2015/08/31 19:46
「最後のあいさつ」までは大なり小なり愉しんで読んだ私ですが、「事件簿」となると流石にちょっと。。
(子供用に短篇集バラして再構成してる本だと個々の作品は気にならないんだけど)
「ソア橋」の仄かな抒情は捨て難いですけどね。。 「三人ガリデブ」なる珍妙な題名もアンフォゲッタブルではありますが。
でも推理小説好きなら一度は目を通して欲しい短篇集です。

No.7 5点 nukkam 2015/08/22 07:23
(ネタバレなしです)  1921年から1927年にかけてと、書かれた時期にばらつきのある短編10作を集めて1927年に発表されたシャーロック・ホームズシリーズ第5短編集で最後の短編集です。ホームズが語り手を務めたり三人称で書かれたりと珍しいパターンに取り組んだ作品もありますが、さすがに作品の質が低下しているのは否めません(旧作のアイデアの焼き直しもあります)。おまけに1927年と言えば本格派推理小説黄金時代に突入していて、ミステリーの女王アガサ・クリスティーを筆頭に次々と傑作・意欲作が生み出されていたのですからドイルはもはや過去の作家扱いだったでしょう。とはいえ大変有名なトリックの「ソア橋」が読めますし、「サセックスの吸血鬼」は怪奇性と解決の合理性のバランスが見事だと思います(蟷螂の斧さんのご講評によると「ソア橋」のトリックは実際の事件のトリックからの借用だそうですがほとんどの読者は本書で初めて知ったでしょう)。紆余曲折はあったけど結局ドイル(1859-1930)はホームズ物語を40年近くに渡って書いたわけで、彼あってこそミステリーがこれほどの市民権を得られたことをミステリー好き読者としてはいつまでも心の片隅に留めておきたいです。

No.6 5点 ボナンザ 2014/04/08 21:29
全体としての価値は冒険に劣るが、他の方もおっしゃるようにソア橋だけでも読む価値は無限。

No.5 6点 おっさん 2014/03/27 11:52
私的シリーズ企画「光文社文庫の日暮雅通・個人全訳で読み返すホームズ譚」、その最終回。

収録作は―― ①マザリンの宝石 ②ソア橋の難問 ③這う男 ④サセックスの吸血鬼 ⑤三人のガリデブ ⑥高名な依頼人 ⑦三破風館 ⑧白面の兵士 ⑨ライオンのたてがみ ⑩隠居した画材屋 ⑪ヴェールの下宿人 ⑫ショスコム荘

シリーズ後日談にあたる「最後の挨拶」で、事実上ホームズものの幕を引いたドイルが、それでも晩年の1921年から27年までの間に、『ストランド』誌に発表してくれた、こぼれ話の集成です。
原作の The Case-Book of Sherlock Holmes(1927)では、収録作の、雑誌発表順と単行本の掲載順に異同がありますが、この光文社文庫の<新訳シャーロック・ホームズ全集>では、編集方針として、雑誌の発表順を採用しています。

さて。
とき、まさに探偵小説の黄金時代。
「多くの人々は、昔どおりホームズに敬意を表しながらも、彼はもはや時代遅れの人物と思わないわけにはいかなかった」(ロアルド・ピアソール『シャーロック・ホームズの生れた家』)という声があります。
確かに、ミステリ短編として、作者のキャリアに光彩を添える出来なのは、実話を下敷きに、トリッキーな趣向をカッチリまとめた「ソア橋の難問」一作だけといっていいでしょうが(次点を挙げるなら、物語としてのカタルシスは乏しいものの、状況のもたらす怪奇な謎を合理的に反転させる、「サセックスの吸血鬼」かな)、まあここまでくると、作品集自体、エキシビションのようなものですからw

「三人のガリデブ」に見られる作者の“お家芸”、その再演に暖かい拍手を送り、「這う男」のごときトンデモ系や、ホームズが慣れない一人称で記述する、「白面の兵士」「ライオンのたてがみ」のような残念な代物も、“ヴァラエティ”として寛容な精神で楽しむのが吉です。

そのテの異色作のなかでは、ドイルが自作の舞台用台本を小説化した、全篇、三人称記述の「マザリンの宝石」なんか、じつは筆者は大好きだったりします。まるで『マルタの鷹』みたいw
あの“仕掛け”って、ワトスンの一人称だと成立しないんですよね。でも、人気者ワトスンを欠かすわけにはいかない、どうするか? そのへんの作者の苦心も読みどころwww

さてさて。
足かけ三年にわたり続けてきた、読み返しの旅も、これにて終了。
全体の感想は――やっぱり面白かった、の一言に尽きます。
ポオの創造した謎解き小説のフォーマットを、名探偵ヒーローの冒険譚に換骨奪胎したドイルの、ストーリーテラーとしての底力は、やはり凄い。
そんな古典を、なめらかな訳文でクイクイ読むことの喜びを堪能しました。訳者の日暮氏による解説も簡にして要を得、これは、入門用としても広く推薦できる<全集>です。

No.4 6点 2012/11/01 20:13
知名度抜群のミステリ古典と言えばやはりホームズ。何編かは子ども向け版で読んでいたのですが、本短編集12編を通して読むのは今回が初めてでした。
原題は、有名な『ソア橋』以外すべて、"The Adventure of ~" となっています。その『ソア橋』は "The Problem of Thor Bridge" ですから、後期作品中特にトリッキーな作品だけのことはあると納得の原題です。
確かに『三人ガリデブ』は二番煎じですし、平凡な話も多いし、といった不満はあります。むしろチャレンジャー教授向きと思えるのまで入っています。しかし、『白面の兵士』と『ライオンのたてがみ』をホームズ自身が執筆したという体裁にする(ホームズの言い訳が笑えます)など、語り方に変化を持たせてもいます。『マザリンの宝石』は三人称形式ですが、だからこそ可能なオチを用意しています。ワトソン手記では『サセックスの吸血鬼』、それに最後の『隠退した絵の具屋』も好きですね。

No.3 6点 蟷螂の斧 2012/01/04 16:16
(ネタばれ)収録中の「ソア橋事件」(1922)が後の名作「そして誰もいなくなった」(1939)「本陣殺人事件」(1946)に応用されている点でオリジナリティが高く、敬意を表したいと思います。短編なのであっさりしていて残念ですが、トリックの発想(機械的なものでなく真相)はマイベスト1です。

(2015.5.17編集)トリックの元ネタや先駆的作品を調べていたところ、ヨーロッパにおける”犯罪学”の創始者ハンス・グロスによる「予審判事便覧」より、実際にあった事件を参照している旨判明。よってオリジナリティについては取り消しし、再評価しました。(9点→6点に変更)

No.2 5点 Tetchy 2010/08/01 21:56
晩年のホームズの活躍が多く散りばめられてシリーズの締め括りを暗示した内容であった。
しかもあまり云いたくはないのだが、明らかにドイルはネタ切れの感があり、前に発表された短編群とアイデアが似たようなものが多い。代表的な例を挙げれば「三人ガリデブ」がそうだろう。これはほとんどまんま「赤毛連盟」である。
しかし、カーを髣髴させる機械的なトリックが印象深い「ソア橋」が入っているのも本書であるから、苦心していたとはいえ、ヴァラエティに富んだ短編集であることは間違いない。特に最後に「覆面の下宿人」のような話を持ってくる辺り、心憎い演出ではないか。

No.1 7点 E-BANKER 2010/07/31 00:34
まさにミステリー界のレジェンド的な作品集。
ただ、世間的に知られた有名作は「ソア橋」くらいで、後は今回初めて読んだ作品ばかりでした。
①「白面の騎士」=よくミステリーに登場する”ある病気”が登場。こんな昔からあったんですね。
②「マザリンの宝石」=何とホームズそっくりの人形が事件解決に一役買ってしまいます。
③「三人ガリデブ」=”ガリガリとデブ”ではありません。プロットは「赤毛連盟」と同種ですが、切れ味は劣ります。
④「ソア橋」=有名作。歴史的なトリックも今読めば「それだけ?」と思わずにはいられませんけど・・・
⑤「ライオンのたてがみ」=ワトスン視点ではなく、ホームズ自らが語り手となる珍しい作品。結構好みのプロット。
⑥「覆面の下宿人」=あまりミステリーっぽくない。
他4作の全10作品。
かなり大時代的で、21世紀の今読むと理解に苦しむ表現もあるにはありますが、意外なほどの読みやすさで、プロットにはやはり感心させられます。


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