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[ SF/ファンタジー ]
失われた世界
チャレンジャー教授シリーズ/別題『悪魔の棲む台地―ロスト・ワールド』
アーサー・コナン・ドイル 出版月: 1954年01月 平均: 6.40点 書評数: 5件

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No.5 6点 レッドキング 2022/01/14 00:26
今は亡きネバーランド・・断崖によって外界から隔絶された世界・・の素晴らしきお伽噺。ミステリではない・・ちょびっと記号地図トリックもある・・が、面白かったから、これまた点数大オマケ。
※ただ、「進撃の巨人」て少年漫画もそうだが、壁等によって隔絶された世界観に飛行手段が描かれてしまうと、少し緊張感が弛緩してしまう。それが飛行船であれ翼手竜であれ。(だって外界に出られるじゃん、プテロダクティルス)

No.4 7点 虫暮部 2021/09/28 11:11
 調査隊一行が、恐竜に驚いているうちは良かったが、後半はまるで侵略者である。
 しかし振り返れば前半だって大樹を切り倒したりして傍若無人。後半も見方を変えれば、身に振る火の粉を払うのに手段は選べない、と言う話か。
 基本的に作者は無邪気に書いたようで、却ってそれ故に文明批評的に考えさせられることは多く、とは言えそれはそれとして秘境冒険小説として特に生き物達の描写が素晴らしい。

No.3 6点 クリスティ再読 2020/09/25 21:44
とりあえずドイル年代順、で読んでいるので「帰還」の次は「失われた世界」になる。ホームズからチャレンジャー教授、そういう流れでドイルのヒーローを見ると、やはりドイルはキャラの「誇張」みたいなものをうまく使って造形しているという風にも感じられる。
チャレンジャー教授はホームズと比べたらずっとマンガっぽいキャラではあるけども、猿人たちの王様と瓜二つとか、ドイルが楽しんで書いてるようにも思えてニヤリ。こんな破天荒な野人のチャレンジャー教授に対して、その論敵である、冷静だが皮肉屋の科学者サマリー教授を配し、さらに理想的な冒険家でいざという時に頼りになるロクストン卿、ワトスン的なニュートラルさを持つ「わたし」。このチームのキャラ付けにドイルらしい大衆作家的な達者さをみるのがいいのだろう。「わたし」は新聞記者で、旅行中に書いた記事が届くかどうか?をいろいろ弁解してみせるのが、リアリティを醸し出すうまいギミックになっている。
話としては、舞台となるメイプル・ホワイト台地の自然が博物学的に面白い、というのがもちろんなのだが、後半猿人vsインディアンの戦争みたいな話になってしまって、評者はやや興覚めした。自然描写と恐竜の脅威で押し通してもらいたかったなあ...なんていうのは、ちょっと無理な相談だろうか。SFと冒険のバランスの問題なんだろうけども、やはりドイルなので冒険の方が比重が高いことになるんだろう、仕方ないなあ。

No.2 7点 Tetchy 2016/06/02 23:48
シャーロック・ホームズに次ぐドイルのシリーズキャラ、ジョージ・チャレンジャー教授第1作目の本書は今なお読み継がれる冒険小説だ。
未開の地アマゾンの奥地に隆々と聳え立つ台地の上に独自に発展した生態系があり、そこには絶滅したとされた恐竜が生息していた。
この現代に蘇る恐竜というモチーフは現代でもなお様々な手法で描かれているが、miniさんもおっしゃっているが今なお映画化されているクライトンの『ジュラシック・パーク』の原典が本書であると云えよう。

しかし最も特筆すべきは冒険の舞台であるメイプル・ホワイト台地の精密な描写である。あたかもジュラ紀に舞い込んだジャングルの風景を詳細に描写する様はまさに目の前に映像が浮かび上がってくるようで、しかもそれらの映像は先に述べた映画『ジュラシック・パーク』シリーズの映像で補完されるがごとくである。ジャングルの蒸し暑さと未知の世界を行く登場人物の緊張感の迫真性はとても1912年に発表された小説とは思えないくらい、リアリティを持っている。ドイルの想像力の凄さを改めて思い知らされた。

さて本書は秘境冒険小説の原型とも云える記念碑的作品であるが、実は本書でドイルが最も語りたかったのは男の成長譚ではないだろうか?
特に語り手である弱冠23歳の新聞記者エドワード・マローンが野心だけが大きな実のない男から苦難の冒険を経て他者に認められる男として帰ってくるための物語、そんな気にしてならない。

そしてまた学会で異端児として扱われているチャレンジャー教授が自説を証明するための苦難の道のりを描いた物語でもある。つまり権威として認められるには男は冒険をすべきだというのが本書の真のテーマではないだろうか?
それが特に最終章に現れている。南米で原始の時代から生息する生物のみならず独自の進化を遂げた生物の発表をするために舞台に立ったチャレンジャー教授、ジョン・ロクストン卿、サマリー教授、そしてエドワード・マローンのなんと晴れやかなことよ!困難に立ち向かい打ち勝った男の晴れ晴れとした姿こそドイルが書きたかったものではないだろうか。
そしてもはや男となったエドワード・マローンに冒険の契機となった恋人のグラディスでは役不足だったのである。だからこそドイルは最後にグラディスがマローンの帰りを待ち切れずに妙な小男と結婚したという珍妙なオチを用意したのである。男の冒険心を天秤に計るような女にはそんな小男こそがお似合いだ、というわけだ。

あくの強い面々によってなされた冒険譚。失われた世界に生きる生物の神秘よりもこれら愛すべき男たちの成長にエッセンスが込められていることに気づいたのが本書を読んで得た大きな収穫だった。

No.1 6点 mini 2016/03/16 09:59
先日に光文社古典新訳文庫からアーサー・コナン・ドイル「失われた世界」が刊行された
ノンシリーズは別にしてドイルが創造したシリーズキャラの中ではホームズの次に世界的に有名なのがチャレンジャー教授だろう
インディ・ジョーンズの元ネタみたいなキャラで、ホームズにも冒険小説的な要素が有るが、元来が伝奇ロマン的資質のドイルだけに、ある意味ホームズよりも作者らしいキャラじゃないかなぁ
今までも複数の出版社から刊行されており、別に希少価値なんてないのだが、古典新訳文庫だけに新たな翻訳上のセールスポイントがあるかってところかな

スピルバーグ監督の「ジュラシックパーク」と「ロストワールド」は一応マイクル・クライトンの原作という建前になっているが、最初から映画製作と同時進行で内容も小説に準拠する必要はないとクライトンも承知していたのだという
まぁ内容は全くの別物だが、映画版にしてもクライトンの小説版にしても、その題名の由来はドイルのこの作品なのは100%間違いないでしょう
その位有名な作品で、これまで当サイトで登録が無かったのは驚くべきで、他にもSF作品の登録は沢山有るのだからジャンル的な問題ではなさそうだ、既読の人は多いと思うんですけどね

世界遺産でもある南米ギアナ高地、周辺の低地とは隔絶された周囲が絶壁の台地の上の平原、世界最高落差の滝エンジェルフォールもこの地域に存在する
周囲の低地とは生物が簡単に行き来出来ないことから独自の生態系を保っている、もっとも昨今では観光客の増加で外部から種子が持ち込まれたりして問題になっているらしいが
この独自の生態系という要素に着目して、恐竜が生き残ったという発想の素晴らしさがドイルの勝利だろう
映画のようにDNA解析からの復元という発想の方が科学的だしリアリティがあるし今風だが、なんかセコくなった感もあるよね、冒険ロマン精神という意味では
映画で言えばさ、インディ・ジョーンズが冒険小説的なのに対して、「ジュラシック・パーク」や「ロストワールド」は冒険ロマンと言うより最初からスリラー小説的なものを目指した感が有るんだよなぁ


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