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[ SF/ファンタジー ]
霧の国
チャレンジャー教授シリーズ
アーサー・コナン・ドイル 出版月: 1971年09月 平均: 2.67点 書評数: 3件

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東京創元社
1971年09月

No.3 2点 レッドキング 2022/01/16 18:43
ひねたジャリだった頃、幼稚園の友達に向かって「サンタなんていないんだぞ」とケイモウした。
怪獣マニアだったガキの頃、「怪獣なんていないんだ」としたり顔した叔父を、「あたり前じゃん」と内心軽蔑した。
高校生の夏合宿の夜、「コックリさん」始めた連中を茶化したら、「おい!そういう態度は恐ろしい現象を招くぞ!」とやられ、「え! こ、こいつらマジだ・・」って内心驚愕した。

No.2 3点 クリスティ再読 2020/11/21 23:42
チャレンジャー教授最終作。今回の探検の行き先は....心霊の世界、霧の国。ドイルは晩年スピリチュアリズムに凝ったことでも有名なのだけど、本作はそのスピリチュアリズム普及のためのパンフレットみたいな本。だから最初は猛烈に敵対するチャレンジャー教授が、最後には心霊主義の軍門に下って、それを手引きした「失われた世界」からの仲間である新聞記者のマローンと冒険家の貴族ロクストン卿、それに今回登場のチャレンジャーの娘イーニッドと一緒にハッピーエンド、という話。

第一次世界大戦でドイルの息子や縁者も多く戦死したそうで、ガチガチの愛国主義者のドイルも相当こたえたようだ。だからその「一千万の若者の死」を容認できなくて、彼らの別次元での「生」を望む気持ちと、その死が「物質主義への神の懲罰」だとする理由付けのあいだで、ドイルの考えがスピリチュアリズムに傾くのは...分からなくもないんだよ。まあだけど、こうなると本当に何でも受け入れてしまうようで、疑似科学の部類も、幽霊譚の部類も、既成教団的な宗教観念も、新宗教的な狭い意味でのスピリチュアリズムも、何か全部ごっちゃになってしまっている。批判精神をどこかに置き忘れたかのようである。それでもねドイルの心中を察すると、非難するのは忍びないので、これ以上は追求しない。

ただし、小説というのは、こういうプロパガンダに一番向いていないメディアだ、というを露呈してしまうのが、評者はヘンな意味で面白い。中盤にマローンとロクストン卿、それに国教会から破門された元聖職者が幽霊屋敷を祓う話があるのだけども、いや本当に「普通のオカルト小説」なんだよね。世の中にいくらでもある「オハナシ」に回収されてしまうわけである。作中の心霊主義の「証拠」としていろいろな実験や体験が語られるわけだけども、この「霧の国」という本が「小説である」という、まさにそのことによって、ドイルがいかに大真面目に読者を説得しようとしても、読者は「いやそれタダの小説でしょ」でフィクションとしか受け取ってもらえない......恐竜と遭遇する「失われた世界」、この世の終わりを体験する「毒ガス帯」、地球が生物であるの証明する「地球の悲鳴」などの奇想天外なサイエンス・フィクションのヒーローであるチャレンジャー教授の話だからこそ、逆にその「事実性」は絶対に信じてはもらえないのだ。ドイルがいかに真面目に取り組んだとしても(まあ、小説としても成功していないのだが)、ドイルが「有名な小説家である」という業績に裏切られて、この企ては最初から失敗するしかない....
ドイルがなぜこの逆説に気が付かないのか、それが本当に評者は不思議で仕方ない。

No.1 3点 Tetchy 2016/03/26 01:23
チャレンジャー教授シリーズである本書ではドイル自身も晩年傾倒した心霊主義を前面にテーマにした作品である。
自分の見た物しか信じなく、持論を疑おうとする人物を徹底的なまでにこき下ろすチャレンジャー教授はもちろん本書では心霊術を疑っており、頭ごなしに非難する。心霊術を肯定するドイルが真逆の人物を主人公に据えて心霊術をテーマにしたことが実に興味深い。

そしてこのシリーズの進行役である新聞記者エドワード・マローンがチャレンジャー教授に霊媒師に引き合わせ、霊の存在を信じさせようと決心してからが実に長い。142ページでマローンが決心した後、ようやくチャレンジャー教授が重い腰を挙げるのが264ページと、実に120ページが費やされる。この幕間に何が書かれているかと云えば、マローンが重ねる交霊会の模様と心霊術信者たちが当時被った警察による不当な逮捕の数々である。

(以下ネタバレ)

さてこの120ページ強の話を経てようやくチャレンジャー教授のお出ましとなるのだが、実は彼の登場こそがこの物語のクライマックスであったのだと気付かされる。つまりこの物語は頑固な科学者チャレンジャー教授が霊の存在を信じるまでのお話なのだ。
正直物語としてはこれだけの話なのだが、ドイル作品の中では文庫本にして約340ページとかなりの分量を誇る。これはドイルがいかに世間一般に交霊会を信じさせることに腐心したかを思い知らされる。つまり本書はドイルにとって心霊術布教の書だった。


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