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[ ハードボイルド ]
ブラック・アイス
ハリー・ボッシュシリーズ
マイクル・コナリー 出版月: 1994年05月 平均: 7.00点 書評数: 3件

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扶桑社
1994年05月

No.3 6点 レッドキング 2024/03/17 21:25
ヒエロニムス・ボッシュシリーズ第二弾。「ブラック・アイス」・・コカインにヘロイン+1種ブレンドの「スーパー麻薬カクテル」と、「凍った道路」のダブルミーニング。カルフォルニアとメキシコ繋ぐ麻薬コネクションを巡る一匹狼刑事のハードボイルドで、闘牛アクションのオマケ付き。ミステリとしては、絵に描いた様な「あの」古典ネタだが、「あれは、今では通用しないゾ」クレームを逆手に取ったトリックであった・・使い様だな「科学的」証拠。

No.2 8点 Tetchy 2017/04/23 00:40
本書のテーマはずばり麻薬。メキシコで安価に生産される新種のドラッグ、ブラック・アイスを巡って殺害された麻薬課刑事の絡んだ事件にボッシュは挑む。

メキシコが麻薬に汚染され、警察や司法までもが麻薬マネーによって牛耳られていることは先に読んだウィンズロウの『犬の力』、『ザ・カルテル』で既に知識として織り込み済みなため、ボッシュが彼の地の捜査で苦心惨憺するのは想像がついた。

ボッシュという男は自分の人生にどんな形であれ関わった人間の死に対してどこかしら重い責任を負い、犠牲者を弔うかの如く、加害者の捜査に没頭する傾向がある。前作『ナイトホークス』ではかつての戦友のウィリアム・メドーズを殺害した犯人を執拗に追い立て、今回はたまたま自分の担当する事件の情報を得るために接触した麻薬取締班の警部が自殺に見せかけて殺害されたことで彼は仇を討たんとばかりに捜査にのめり込む。
それは多分彼がヴェトナム戦争を経験しているからだろう。昨日まで一緒に飯を食い、冗談を云い合っていた連中がその日には一瞬のうちに死体となって葬られる。一時たりとも肩を並べた相手が翌日も同じように肩を並べるとは限らない、そんな生と死が紙一重の世界を経験したからこそ、袖振り合うも多生の縁とばかりに彼は自分の身内が死んだかのように捜査にのめり込む。それが彼の流儀とばかりに。

驚くべきはこの2作目にして後の別のシリーズの主人公『リンカーン弁護士』ことミッキー・ハラーに纏わる過去が描かれていることだ。
またムーアの葬儀を行う会社はマカヴォイ・ブラザーズという。これも後に出てくるジャック・マカヴォイと何か関係があるのだろうか?シリーズをリアルタイムで読んでいたら多分このようなことには気付かなかっただろうから、シリーズが出た後で読んだ私は後のシリーズのミッシング・リンクに気付くという幸運に見舞われているとも云える。まだまだこのようなサプライズがあるだろうことは実に愉しみだ。

本書の題名となっているブラック・アイスは今回の事件のキーとなるメキシコから流入している新種の麻薬の名でもあるが、もう1つ意味がある。
ある人物から語られる“黒い氷”というエピソードなのだが、この“黒い氷”の警句が今回の事件の本質を見事に表している。

しかし今回の物語の中心となる人物2人はウィンズロウの『犬の力』、『ザ・カルテル』に登場するアート・ケラーとアダム・バレーラその物ではないか!もしかしたらウィンズロウは本書からあの2作の材を取ったのでは?とも思わされる。

ボッシュは今回もどうにか失業の危機を免れるが、さらに今後はもっと困難を極めそうな予感だ。個人の正義と組織の正義の戦いの中で彼が今後も自分の正義をどこまで貫いていけるのか。ボッシュが背負った業が重いゆえにこのシリーズが極上の物語になっているのがなんとも皮肉なのだが、それを期待してしまう私を初め、読者諸氏はなんともサディスティックな人たちの集まりだろうと今回改めて深く思った次第である。

No.1 7点 E-BANKER 2013/07/25 23:13
L.Aハリウッド署の凄腕刑事ハリー・ボッシュの魅力を堪能できるのが本シリーズ。
シリーズ初編「ナイト・ホークス」に続くシリーズ第二弾。

~モーテルで発見された麻薬課刑事ムーアの死体。殺人課のハリー・ボッシュはなぜか捜査から外され、内務監査課が出動した。状況は汚職警官の自殺。しかし検屍の結果、自殺は偽装であることが判明。興味を持ったボッシュは密かに事件の裏を探る。新しい麻薬ブラック・アイスをめぐる麻薬組織の対立の構図を知ったボッシュは、鍵を握る麻薬王ソリージョと対決すべくメキシコへ・・・。ハリウッド署のはくれ刑事ボッシュの執念の捜査があばく事件の意外な真相とは!~

前作よりも面白さが増した。
素直にそう思えたし、さすがに人気シリーズという感想。
何といっても、出てくる登場人物のすべてが魅力的だ。同僚の刑事や警察上層部は実に嫌らしく、ボッシュへの協力者たちは魅力的に、そして女性はなぜかボッシュとメイク・ラブに陥る・・・

本作は、新型麻薬をめぐる殺人事件が謎の中心だが、死体に残された“ミバエ(蠅)”から、アメリカと国境を接するメキシコの街に徐々に焦点が当たっていく。
ハリウッドですらはぐれ者のボッシュが、見知らぬメキシコの地でさらに孤独な闘いを強いられることに・・・
そして、終盤には本シリーズらしいドンデン返しが待ち受けているのだ。
このドンデン返しは、ミエミエのようで、うまくミスリードが成されているため、本格志向の読者にとっても満足できるのではないか。
とにかく、ストーリー展開のうまさは「さすが」のひとこと。

トータルでみて、突き抜けるほどの面白さや疾走感はないが、十分に評価できる作品。
シリーズは続くが、やはり続編も読んでしまうんだろうなぁ・・・
(孤高の男ハリー・ボッシュに幸あれ!)


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