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[ 警察小説 ] トランク・ミュージック ハリー・ボッシュシリーズ |
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マイクル・コナリー | 出版月: 1998年06月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 2件 |
扶桑社 1998年06月 |
No.2 | 8点 | Tetchy | 2017/09/01 21:41 |
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時はまだ野茂がドジャースで現役で投げていた時代。シリーズ再開の事件はハリウッドの丘で遺棄されたロールスロイスのトランクから頭を撃ち抜かれた遺体が見つかるという不穏なムードで幕を開ける。舞台はラスヴェガスに移り、カジノに纏わるマフィア犯罪の捜査へと進展していく。映画産業、カジノと復帰したボッシュが手掛ける事件は実に派手派手しい。
かつてはジュリー・エドガーを相棒としながらもほとんど一匹狼状態で捜査をしていたボッシュだが新しい上司が組んだ制度、三級刑事をリーダーとした3人1組のチームとして捜査を進めるようになる。三級刑事のボッシュはリーダーとなり、彼の部下に相棒のジュリーとビレッツが古巣から引っ張ってきたキズミン・ライダーが加わっている。またかつてある時は自分自身の過去と因縁を前作で振り払ったボッシュの、シリーズのまさに新展開に相応しい幕開けと云えよう。 私はエレノアが再びボッシュの前に現れると1作目の感想で述べたが、新しいシリーズの幕開けで合間見えるとは思わなかった。ボッシュの始まりには彼女がどうしても付きまとうらしい。そして前科者となったエレノアは当然のことながら法を取り締まる側に戻れず、ラスヴェガスでギャンブルをしながらその日を暮らしている身である。さらに彼女にはある繋がりがあり、それがために彼女との再会は少なからずボッシュを再び窮地に陥れることになる。 ボッシュが辞職の危機に置かれるのはもはやこのシリーズの定番でもあるが、その展開は実に驚くべきもの。それがゆえにこのボッシュの危機もまた引き立つわけだが、いやはやコナリーの物語構成力には毎回驚かされる。 解決してみれば最後に残るのはなんとも哀しい夫婦の物語だった。愛する者を同一にしながらもお互いが父親・母親でなく、一人の男と女であったことから生じた、頭で割り切れない感情から起こった悲劇だった。 新生ボッシュシリーズの大きな特徴はやはりチームプレイの妙味にある。これまで孤立無援、一匹狼の無頼刑事として誰も信じず、頼らずに捜査を続けていたボッシュだが、亡くなったパウンズに替わって新しい上司グレイス・ビレッツは相変わらず綱渡り的なボッシュの強引な捜査に一定の理解を示し、後押しする。またボッシュがリーダーとなったジェリー・エドガーとキズミン・ライダーのチームは個性的で有能で、尚且つ自身のキャリアを危険に晒すことになりながらもボッシュの捜査の正当性を信じ、付いていく忠義心を見せている。今までボッシュの昏い過去に根差された刑事という生き方といったような重々しさから解放された軽みというか明るみを感じさせる。それは単に久々の殺人事件捜査に携わることからくるボッシュの歓喜に根差したものだけでなく、やはり理解者を得たこと、そして仲間が出来たことに起因しているに違いない。 また忘れてならないのはアーヴィン・アーヴィング副本部長の存在だ。彼もまた警察の規範の守護者として振る舞いながらボッシュに対して理解を示し、彼をサポートする。実に味のあるバイプレイヤーぶりを本書でも発揮している。 前作で過去を清算したボッシュが結婚ということで前に一歩踏み出したのだ。つまり家庭という新たな物を生み出す方へ向かったが、どこか人格的に破綻しているボッシュとの結婚生活は波乱に満ちているだろうから油断できない。もしかしたら次作で既に2人の中は終わりに近づいているのかもしれない。長続きしない結婚かもしれないが、人生に前向きになったボッシュと困難を乗り越え、幸せを掴んだエレノアたち2人の前途を祝してこの感想を終わりたい。 |
No.1 | 6点 | E-BANKER | 2014/12/10 22:14 |
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ハリー・ボッシュ刑事シリーズの長編第五作目がコレ。
1997年発表。 「トランク・ミュージック」とは、ヤクザ物たちの殺人方法のひとつで、死体を車のトランクに詰め込む姿を指してこう呼ぶ(らしい)。 ~ハリー・ボッシュが帰ってきた! ハリウッド・ボウルを真下に望む崖下の空き地に停められたロールスロイスのトランクに男の射殺死体があった。『トランク・ミュージック』と呼ばれるマフィアの手口だ。男の名はアントニー・N・アリーソ、映画のプロデューサーだ。どうやら彼は犯罪組織の金を「洗濯する」仕事に関わっていたらしい。ボッシュは被害者が生前最後に訪れたラスヴェガスに飛ぶ。そこで彼が出会ったのは、あの「ナイト・ホークス」で別れた運命の女性エレノア・ウィッシュだった・・・~ さすがの安定感・・・そんな印象だった。 相変わらず組織に与せず、FBIや政府組織を向こうに回し、己の考えを貫こうとするボッシュ。 今回は紹介文のとおり、運命の女性エレノア・ウィッシュが登場し、彼女をめぐってにっちもさっちもいかない状況に陥ることになる。 それでもウィッシュを守り、複雑に絡み合う事件までも解決に導くのだ。 本作ではいつものLAだけではなく、LAよりも退廃した街としてラスヴェガスが登場する。 ボッシュはLAとラスヴェガスを交互に捜査しながら、事件のからくりに気付いていく。 (ラスヴェガスで登場してくる人物・・・女性も男性も、警官も民間人も実に印象的だ・・・) そして終盤は思ってもみなかった裏の構図に気付くことになる。 この辺りのドンデン返し的プロットはもはやお約束。 ただし、これまでのシリーズ作品に比べると、やや起伏に乏しかったかなという感じ。 終盤早々には事件の大筋が判明してしまい、それ以降の頁がやや冗長だった。 ボッシュのピンチも小粒だったし、分かりやすくてももう少し“手に汗握る”展開があっても良かったかなと思う。 シリーズも折り返しを迎え、次作以降の新たな展開に期待というところかな。 よって評価はちょっと辛め。 (今後、ボッシュとエレノアの関係はどうなるのか? 気になるので次作をチェックしていこう・・・) |