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[ 警察小説 ] レイトショー レネイ・バラードシリーズ |
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マイクル・コナリー | 出版月: 2020年02月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
講談社 2020年02月 |
講談社 2020年02月 |
No.1 | 8点 | Tetchy | 2021/05/09 00:21 |
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コナリーの新しいシリーズの幕開けで新キャラクター、レネイ・バラードの初お目見えとなった。
ハワイ生まれのまだ独身の女性刑事はかつての上司を告発したことでその上司からハリウッド分署に飛ばされ、そして深夜勤担当になった。 また彼女は深夜勤担当に追いやられても決して腐ってはいない。寧ろ一刑事として事件を最初から最後まで追いかけたいと強く願う女性刑事だ。 そしてかつてロス市警時代のレネイの相棒ケン・チャステインは上昇志向の持ち主。ちなみに彼はボッシュシリーズの『エンジェルズ・フライト』で殉職したジョン・チャステインの息子だ。 このチャステインを筆頭にロス市警を舞台にしているだけあってハリー・ボッシュシリーズとのリンクがそこここに見られる。 『死角 オーバールック』と『ナイン・ドラゴンズ』でボッシュの上司を務めたラリー・ギャンドルがロス市警の強盗殺人課指揮官として登場し、物語の後半ではバラードが関わった事件で起こったことに対するカウンセリングを、ボッシュのカウンセラーでもあるイノーホスが受け持つ。 正直に告白すれば待ちわびたコナリーの新作ということで期待が高まったのと、新シリーズの幕開けということでの不安が入り混じった中での開巻となり、最初はボッシュシリーズで馴染んだハリウッド分署とロス市警を舞台にしながらもいつもと異なる登場人物たちに戸惑い、なかなか物語に入り込めなかったが、流石に物語の中盤に差し掛かり、レネイの追う事件の容疑者が判明し、さらに蚊帳の外に追いやられている<ダンサーズ>銃殺事件でかつての相棒チャステインが殺害されてからの疾走感はコナリーならではのリーダビリティーをもたらしてくれた。 特に物語の中盤を過ぎた頃の、男娼暴行事件の容疑者トーマス・トレントに拉致され、全裸で監禁された時の決死の抵抗は鬼気迫るものがあった。満身創痍の中、全身全霊を傾けて犯人に打ち克つ姿は身の震える思いがした。 そこからはもうレネイがボッシュでなくともそこまでにコナリーの描写も相まって逆境にも挫けない女性刑事の肖像が立ち上り、いつの間にか彼女を応援する自分がいた。少しルールを逸脱してまでも自分の欲するものを手に入れようとする、朝になれば昼勤刑事に手掛けた事件を引き継がなければならない、つまり自分の事件を最後まで全うできない宿命にある“レイトショー”の刑事レネイ・バラードのタフさは読んでて気持ちいいものを感じた。 ボッシュ同様、部下に持つと苦労させられる刑事ではあるが。 またもやコナリーは現代アメリカの警察小説のトップランナーに恥じぬ仕事をした。出すたびにベストセラーランキングに躍り出て、そして傑作を書き続けるという高いハードルを越えて見せた。それもレネイ・バラードという魅力的なヒロインを引っ提げて。 いやはやコナリーの筆は衰えるどころか魅力ある女性刑事を主人公に添えることで今まで男臭い刑事の物語に涼風を与えることに見事に成功した。 新しいシリーズキャラクターを迎える不安は最後のページを閉じる時には次作への大いなる期待に変わっていた。まだコナリーを読む喜びはしばらく続きそうだ。 |