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[ 警察小説 ] 夜と昼 87分署 |
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エド・マクベイン | 出版月: 1980年05月 | 平均: 5.50点 | 書評数: 2件 |
早川書房 1980年05月 |
早川書房 1980年05月 |
No.2 | 5点 | 雪 | 2020/01/25 11:42 |
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「はめ絵」に続く87分署シリーズ第25作で二部構成。十月のある土曜日、87分署内で起きた出来事を〈ナイトシェード(午前零時から午前六時)〉と〈デイウォッチ(それ以降)〉に分け、それぞれのシフトにおける刑事たちの一日を活写したもの。
深夜番のスティーヴ・キャレラは別件解決後やっと眠れるとパジャマに着替えたところをバーンズ警部に呼び出され、結局丸一日出ずっぱり。食料品店で張り込んでいたアンディ・パーカーが店主ともども強盗に撃たれて人手不足だったからですが、同僚アーサー・ブラウンの活躍もあり、深夜のヤマに続きこれも解決。刑事たちにとって今日の目玉事件はこれですね。警官被害を解決すると昇進だか昇給だかするらしく、いいとこはみんなあいつが持っていくんだよと、他の刑事たちから羨まれます。 ですが面白いのは第一部〈ナイトシェード〉。パジャマを着る前のキャレラとコットン・ホースが担当した劇場裏での踊り子殺しと、マイヤー・マイヤー担当の高級住宅地〈煙が丘(スモーク・ライズ)〉の盗難事件がメイン。元判事の邸宅に現れた男女の幽霊が次々宝石類を盗むというイミフな展開ですが、なぜか全編でこれが一番凝っているという訳の分からなさ。けっこう泣かせる真相なのがまた複雑なキモチを抱かせます。 それに比べると第二部はいたって普通のドキュメント。ちょっと歪な感じです。以前に読んだ「はめ絵」もしょうもなかったし、その前の「ショットガン」もどうも良くないようなので、本作で目先を変えてみたんですかね。これもシリーズ標準より出来はやや下くらいで、この時期作者はスランプだったかもしれません。 巻頭、アメリカ探偵作家クラブの諸兄に捧げた献辞でいきなりふざけてますが、内容がそれほどでもないので完全に滑ってます。ジョーク好きのマクベインにしては今回外し気味。 |
No.1 | 6点 | mini | 2010/11/01 09:58 |
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発売中の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”警察小説ファイル13”
変り種の警察小説の書評を2冊書いたから、1冊位は正攻法なのも入れとかないとね(苦笑) ”モデュラー型警察小説”という分野がある、複数の互いに無関係な事件が起こり、同時進行で捜査が進められるというスタイルだ ギデオン警視シリーズで有名なJ・J・マリック(ジョン・クリーシーの別名義)が発明したと言われているが、おそらくこの分野に最も資質が合っていたのはマクベインではあるまいか 「殺意の楔」なども2つの事件が同時進行で語られるが、「夜と昼」はこのモデュラー方式を極限まで推し進めた作だ 多数の事件が発生するが、それらは一切互いに関係は無く個別に解決されるので、複数の事件の関連結び付きを期待するような読者には全く向いていない 要するに87分署の1日24時間の警察業務の日常はこうなんですよ、というドキュメンタリーな手法だ 「夜と昼」という題名も、勤務時間の交替からきていると思う しかしねえ、マクベインという作家に案外とリアリズムな印象を受けないんだよな私には よく警察活動の実態をリアルに描く作家として紹介される事の多いマクベインだが、たしかにテンポの良さはあるが、それがリアリティに繋がっているかってえーとちょっと疑問 極論すればむしろ”メルヘン調お伽噺”っぽく感じる時すらある この作品もリアルな感動を期待するような話とは対極の、ただただテンポとリズムに酔いしれるといった趣だ |