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[ 警察小説 ]
10プラス1
87分署
エド・マクベイン 出版月: 1963年01月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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早川書房
1963年01月

早川書房
1979年11月

早川書房
1979年11月

No.2 6点 2019/05/30 14:48
 弾丸が一つ、さわやかな春の空気のなかを、依怙地に回転しながら黒々とした色で突進してきた。弾丸の当った一瞬、四十五歳の貿易会社副社長アンソニイ・フォレストのすべてが停止し、彼は数歩うしろへよろめいた。ぶつかった若い女が反射的に身をひくと体はあおむけに倒れ、壊れたアコーデオンのように折れくずれた。だが、これは恐るべき銃撃事件のほんの始まりにすぎなかった・・・
 レミントン・三〇八口径ライフル銃を用いた無差別殺人。次々と増え続ける犠牲者たち。現職の地方検事補が殺害されたことにより、事件は八七分署のみならず、アイソラ市警を挙げた総力戦となる。果たして謎の狙撃者の動機とは何か? そして犠牲者たちを繋ぐ糸とは?
 「たとえば、愛」に続く87分署シリーズ第17作。1963年発表。リハビリ編のあとは「警官嫌い」以上に派手な連続射殺事件。ただしピリピリした雰囲気の前回とは異なり「弾丸がどこからかやってきて○○に突きささった」みたいな、どことなくとぼけた描写で死体がどんどん転がります。犠牲者の数も倍以上で、ご丁寧に一日一殺みたいなペースです。
 事件担当のキャレラとマイヤーもマメに被害者周辺を当たりますが、彼らの特徴はバラけていてなんの関連も掴めません。そうこうするうちに最初の被害者の娘シンディ・フォレストが何故かキャレラに熱を上げ、重要な手掛かりを持参して刑事部屋を訪れるのですが、ここでポンコツ街道まっしぐらのバート・クリング刑事と鉢合わせしてしまいます。
 「殺意の楔」の悪夢が蘇り、唐突にホールドアップを始めてしまうクリング君。誤解は解けたもののシンディはぶんむくれ。ど阿呆呼ばわりされて一巻の終わり。もたもたするうちに六番目の被害者まで出てしまいます。なんかえらいこの娘に尺取ってんなと思ったら、クレアの次にクリングの恋人になるのが彼女なんですね。出会いは最悪ですけど。
 とにもかくにも被害者候補は絞られ、別口で殺害された一人を除くターゲットは残り四名。目鼻の付いたこの辺りからサスペンスも高まってきます。最後の襲撃で読者の前にようやく姿を現した犯人と、尾行に回ったマイヤー・マイヤーとのせめぎあいは緊張感アリ。
 ただ内容的にはどうかな。間違いなくシリーズ水準以上の作品ですが、ベスト10には入らないかも。以前、第40作「魔術」の書評で瀬戸川猛資さんのリストを挙げましたが、今なら本書の代わりに39作目の「毒薬」を入れたいな。読んでいくうちにまた変わるかもしれませんが。
 マクベインの既読分を後回しにしてたら、どうやらクリスティ再読さんの後追いになってしまった。この後「電話魔」も控えてるんだよなあ。

No.1 6点 クリスティ再読 2019/03/20 22:28
評者あまり87分署に思い入れがないので申し訳ないのだが、それでも最初に読んだ87が本作で、未だに書評がゼロなのが気にかかっていた。することにしよう。
とはいえシリーズ中一二を争う派手な事件である。皆さん大好き連続狙撃事件ミッシングリンク物である。会社重役・弁護士・売春婦・イタリア人果物屋...と一見関連のないターゲットが狙撃されて、型通りに被害者間の関連は?となる。87で映画というと「天国と地獄」が有名すぎて、しかもTVシリーズはともかく他の映画は目立たないので何なんだけども、本作は珍しく映画になっている。キャッチーで読者人気もまずまずみたいだが、初期の終わりくらいの作品で特にイベント性がないから、埋もれているのかな。言うまでもないが、警察小説らしさは満開である。

(ややバレ?)
一応ちゃんとした被害者間の関連はあって、そこらはトリッキーではなくてリアル。階級的流動性の高いアメリカらしい話である。振り返って見るとイタリア人果物屋がミスディレクションみたいな役割になる。


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エド・マクベイン
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