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[ 警察小説 ] カリプソ 87分署 |
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エド・マクベイン | 出版月: 1981年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 1981年07月 |
早川書房 1989年07月 |
No.1 | 5点 | 雪 | 2018/07/19 23:48 |
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深夜の嵐の中のアイソラ。コンサートを終えた黒人歌手とマネージャーが襲われ、歌手は凶弾に斃れた。その僅か4時間後の87分署管轄外区域。二人を狙った謎の黒ずくめの人物は、続いてある黒人娼婦を射殺する。二つの事件はいったいどう結びつくのか?
87分署シリーズ第33弾。エド・マクベインお気に入りの作品だそうです。テーマはズバリ"監禁"。 前作「死者の夢」で精神分析を取り上げた作者ですが、この辺りから変化の兆しが現れます。ルーティーンワークに飽き足らなくなったのでしょうか、87分署に平行して心の闇を掘り下げた「ホープ弁護士シリーズ」が開始されます。 その流れを受けて、本作は真の意味での異色作となりました。普遍的な事件を取り上げ続けたシリーズの流れに逆らい、特殊な人物が生み出した異様な事件。最終章で展開される光景はほとんどホラーです。 でもそれも作者自身の変化に沿っているのですよね。この作品の延長線上にホープ弁護士シリーズの最高作であり、同時にマクベイン最高の作品の一つ「白雪と赤バラ」があります(もちろん遥かに洗練されてはいますが)。1970年代後半から80年代後半にかけてのマクベインの充実具合は素晴らしいです。文筆家として最も脂が乗ってる時期でしょう。 とは言ってもこれはこのシリーズに求めているものとは違うかなあ。いつもの蕎麦を頼んだら、何故かハヤシライスを出されたような感じですね。その分マイナス1点。ただし背筋の寒くなるような作品ではあります。 |