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[ 警察小説 ] ノクターン 87分署 |
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エド・マクベイン | 出版月: 2000年05月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2000年05月 |
早川書房 2004年07月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2022/09/22 15:47 |
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(ネタバレなし)
アイソラの安アパート。何者かによって、愛猫と一緒に射殺された83歳の老婦人「ミセス・ヘルダー」の死体が見つかる。スティーヴ・キャレラとコットン・ホースたち87分署の刑事たちは捜査を開始し、凶器となる拳銃の情報から関係者を訪ねて回る。一方で町では、名門校ピアーズ・アカデミーの表向きはエリート生徒、その裏では欲望や加害衝動に禁忌のない若者たち三人組が狂気の犯行を重ねていた。 1997年のアメリカ作品。ポケミス版で読了。 ポケミス巻末のシリーズリスト(中編で未書籍化の「87分署に諸人こぞりて」を一本単位でカウント)によると、87分署ものの第48番目の作品になる。 しかし評者は本当に久々に、このシリーズを読んだ。もしかしたら21世紀ではこれが初かも。 はっきり読んでるのはシリーズ第38弾『八頭の黒馬』まで(そこまでにもたぶん30番台で1、2冊ぬけている)。で、残り分はなるべく順番を追って読んでいこうと少し前までは考えていたが、気が付いたらいつまで経っても未読分を消化していない(汗)。 もともと大昔の少年時代にはポケミス(HM文庫が出る前なので、それと世界ミステリ全集しかなかった)の手に入った分から順不同でランダムに読んでいた記憶もあるし、じゃあ……と思い直して方向転換し、近くにあった未読の一冊を読んでみた。 というわけで本当に久々の再会だが、期待通りに半世紀一日のごとく(?)、基本軸はほとんど何も変わらない安定シリーズ。なつかしい情報屋ダニー・ギンプが出てくれば、ちゃんとキャレラも見まいに来てくれた時の話題をするし、その辺のシリーズファン向けのサービスには事欠かない。ホースやクリングの女性関係に新たな動きがあったのは興味を惹かれた。 ただし80年代のニューエンターテインメントブームの波を潜ったり、ライバル視(?)しているらしい後輩作家スティーヴン・キングを意識しているせいか、20世紀末の時代らしくモブの登場人物はかなり増えて細かい挿話も増量している感はある。それでもスラスラ読めるのは、いかにもこのシリーズの通常編らしい。 (翻訳者は、井上一夫。もういい加減ご高齢だったはずだが、とても達者な翻訳というか、読みやすい訳文。ただしピーター・ローレをピーター・ロールと表記してあるのは、これでいいのか?) 地味にショックだったのはポケミスで222ページ。犯罪者を追跡する描写で、キャレラもホースも「大きくて太ってる」という修辞が出てきたこと。大柄はともかく、両人とも「太ってる」イメージはなかった。 若い頃に相応の美男だった男性俳優が、気が付いたら中年になって貫録がついていた感覚か。 先述の通りにモブキャラがとにかくべらぼうに多い作品なので、名前のある登場人物だけで80人前後。ワンシーンのみのキャラクターももちろん多い。キャレラとホース以外でも87分署の顔なじみ勢が本当にちょっとずつでも顔を見せるのは、いかにも本シリーズらしい。 人気者? の88分署のオリー・ウィルクスも割とマジメに活躍。 ミステリ的には冒頭からの射殺事件にからんでちょっと意外な真相があり(老婆と猫を射殺した犯人はいろいろな意味で、残酷きわまりない拷問の末に極刑にしていいね)、その脇のサイドストーリー的な流れにも……。これはあまり書かない方がいいか? 一部の案件は、旧作にあったような、次作への持ち越し? トータルとしては佳作、の出来。 あーあと、作者マクベインがハンター名義で脚本を書いたヒッチコック映画『鳥』ネタが三回出てくる(笑)。「ヒッチコックが書いた『鳥』」という物言いを登場人物がして、別のキャラがあれはヒッチが書いたんじゃない、とツッコミを入れる繰り返しギャグだが、現実でも作者の周辺で何かあったのだろう、あるいは読者にそう思わせたいというマクベインの作戦だろう(笑)。 |