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[ 警察小説 ] 歌姫 87分署 |
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エド・マクベイン | 出版月: 2004年12月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2004年12月 |
No.1 | 6点 | 雪 | 2018/06/29 10:22 |
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シリーズ第53作。レコード会社が総力を挙げて売り出す大型新人ターマー・ヴァルパライソ。彼女のデビュー曲発表パーティーの場で起こった、船上の誘拐事件を扱います。リーダビリティーは高いですが読み終わるとアラが目立つのが難点。
87分署の誘拐物といえば「キングの身代金」ですが、あちらは犯人・被害者側双方にドラマを用意してメリハリを付けていました。この作品の犯人はFBIを手玉に取る知能犯の扱いになっていますが、盗んだ携帯電話を通話毎に使い捨てる手口が目立つだけで、後はほぼゴリ押し。当座の欲望に駆られて無軌道に計画を変更する為、彼らに翻弄されるFBIがなおさらアホに見えてしまいます。せめて冷静なボスと激情型の手下の、誘拐犯内部の対立を挟んでくれると良かったのですが。 ストーリーは犯人の暴走が引っ張る形。実行犯三人組の一人が前科持ちで、そこから芋蔓式に手繰られて終了。87分署側もそれほど有能には見えません。 もちろんそれで終わりの作品ではなくキチンと裏はあるのですが、表の事件が練られてないので、黒幕含め犯人サイドの軽薄さや愚かさばかりが目立ってしまいます。いつものモジュラー型ではなく、今回はこの事件一本勝負だけにキツい。裏の構図は十分面白いだけに色々と惜しいです。 原題 THE FRUMIOUS BANDERSNATCH はルイス・キャロルの造語で、作中訳だと"おどろしきバンダースナッチ"の意。理不尽な暴力に翻弄されるヒロインの姿を描きたかったのかもしれません。 |