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[ 本格/新本格 ]
金雀枝荘の殺人
今邑彩 出版月: 1996年07月 平均: 6.65点 書評数: 17件

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講談社
1996年07月

講談社
2007年11月

中央公論新社
2013年10月

No.17 7点 虫暮部 2022/12/08 13:06
 御屋敷モノの典型で、その作り物っぽい部分も含めて好き。生き残りが少ないので犯人に意外性は全く無かったが止む無し。第六章の6で語られる秘密が単なる付け足しみたいなのは残念(言葉だけで、証拠は示されていないし)。

 ところで、ネタバレするが、序章に登場する夫妻が巻末で暗示された通りの二人だとしたら。
 登場人物の系図を完成させてみよう。彼が某の息子と言うことは、夫は妻の母の従弟に当たる。従兄妹より遠い5親等だから無問題だけど、代が違う親族同士のカップルって妖しい感じがしない? 読了後に気付いてドキドキしちゃったよ。

 「それじゃ、ぼくの――」「ひいひいおばあさんかな」

 この “かな” が、断定していないところが、絶妙な伏線?

No.16 7点 sophia 2020/07/12 17:16
あらすじを読むと大変ミステリアスで面白そうなこの作品。実際に読み始めても、不可解な惨劇のあった館で推理合戦を繰り広げるという設定に引き込まれページが進むのですが、終盤になると趣がガラリと変わり、犯人が手当たり次第に人を襲い始める展開になります。期待していたような綿密に練られた殺人劇ではなかったことで一時落胆しましたが、後日談の最終章で物語が上手くまとめられており、評価がV字回復しました。この作品の肝はハウダニットではなくホワイダニットだったのだと納得しました。ただ、先にも述べた通り犯人が終盤に豹変しすぎなので、あの人物が犯人だったという現実感は薄いです。また、隠された血縁関係は読者にはなかなか分からないので、伏線がもう少しあるとよかったです。後は霊感少女の能力をもうちょっと活かして欲しかったと思います。

No.15 6点 ミステリ初心者 2019/03/01 22:16
 ネタバレをしています。

 クローズドサークルで非常に読みやすいです。登場人物が多いですが、苦になりません。ページがすいすい進みました。さらに、幽霊?や呪いが存在するのが個性的で(あんまりありませんよね?)、いい意味で推理小説離れしたストーリー性に貢献しています。物語中、多くの人が殺されますが、読了感は非常にいいです。

 以下、好みでは無かった点。
 本格推理小説としてみた場合、"誰が殺したのか"や"どうやって殺したのか"また"なぜ殺したのか"という推理をめぐらす要素が乏しかったです。絵李沙たちを殺した犯人がどうやって出たのか?は面白かったですが、長編としてはやや弱い印象でした。

 後期の横溝作品のような趣があると思うのですがどうでしょう(詳しくありませんが)

No.14 5点 ねここねこ男爵 2018/02/26 11:11
トリックや推理ロジックは2〜3点。そのかわり動機や事件の背景が素晴らしく、トータルでこの点数。

推理部分が酷く、「実は○○は△△だったんじゃなかろうか。そうすると▼▼も●●だったかもしれない。だとすると✕✕と考えられるので〜」的な、推測の上に推測を重ねていくうえに「なんでそうなる?」というのも多いため個人的には読んでいて非常に苦痛だった。この強引な話運びには一応理由があるのだが…。前書き(?)にも近いことが書いてあるが、要は「与えられた情報からどれだけひねくれた面白い解釈をひねりだすか?」という本です。

トリックについても、密室は「密室になってるからボクは犯人じゃないよ」という感じだし、そもそも第一の殺人は密室にする必然性が無いような…。やらなくてもいいけどやってみたら出来た、と言いたいのだろうか。見立て殺人についても、理由は「犯行順の錯誤か、殺害方法選択の誤魔化し」と相場が決まっているので、ふ〜んとしか。

それから、探偵役が登場の仕方から人物描写までそのままこの時代の流行りテンプレなうえ、屋敷に居座るまでの流れが不自然極まりない。一回追い出されたのに自宅の二階に再度不法侵入(!)する男がいたら即警察呼ぶに決まってるじゃん。その不審者に一通り自己紹介から屋敷の案内までする他の登場人物たちは輪をかけて頭がおかしいとしか思えない。ぶっちゃけ内通者がいるのだが、だったら霊感少女みたく理由をつければいいわけで、「内通者がいるから不法侵入しよう」とは一体…?
霊感少女も「どうしてもあと一人登場人物が必要だった」のと「館に連れてくる理由がいる」ので仕方ないとはいえ、オバケの描写はいらんでしょ。

ただ、動機や事件の背景がとても面白く、それで救われている感じ。

No.13 7点 パメル 2016/10/20 01:05
窓は全て内側から釘が打ち込まれておりドアも内側からカギがかかっている密室状態で
七人の死体が発見される
リレー形式で殺し合いが行われたのではないかという不可解な現場状況と同時に
グリム童話の見立てにもなっている
館の雰囲気は綾辻行人の「霧越邸殺人事件」に似ていていい感じ
サスペンスにホラー色を混ぜた感じで物語は進んでいく
人物描写・揺れ動く心が丁寧に描かれている
真相は悲劇的だが後味は悪くない

No.12 6点 nukkam 2016/06/09 12:00
(ネタバレなしです) 1993年発表の本格派推理小説です。冒頭に置かれた「序章という名の終章」では幽霊視点のような描写があり、霊感豊かな(?)登場人物が何度か「出た~っ」と騒ぐなど、ホラー小説的な味付けがなされていますがあくまでも味付けに留まっておりホラー小説が苦手な私でも許容範囲でした(逆にホラー要素に期待し過ぎると物足りなく感じると思います)。作者のあとがきで、犯人はAかBか、2つの可能性だけ提示して答えは出さず、どちらを選択するかは読者の自由という無責任な探偵小説を当初は構想していたと書いていたのには驚きました。後年発表の東野圭吾の某作品の先駆になった可能性があったのですね。結局本書はきちんとした解決を迎えており東野作品ほどの知名度は得られませんでしたが、私は作者の良心的な姿勢が感じられる本書の方が好きです。謎解きも巧妙なミスディレクションに感心しました。カーター・ディクソンの「ユダの窓」(1938年)のネタバラシは勇み足だと思いますが。

No.11 7点 ボナンザ 2014/04/07 16:05
久しぶりに本格的な館ものに出会えた。館ものが好きなら読んで損はしない名作。

No.10 6点 E-BANKER 2014/03/03 22:02
1993年に発表された作者の第六長編。
最近中公文庫で再版されたが、今回は講談社のオリジナル版で読了(別に変わりがあるわけではないが・・・)。

~金雀枝(エニシダ)の花が満開に咲くころ、一年に一度彼らがこの館を訪れる。また、あの季節が巡ってきた・・・。完璧に封印された館で発見された不条理極まりない六人の死。過去にも多くの命を奪った「呪われた館」で繰り広げられる新たなる惨劇。そして戦慄の真相とは何か。息をもつかせぬ恐怖と幻想の本格ミステリー~

これはまさに「新本格」というべき作品。
1987年に発表されたエポック・メイキング的作品「十角館の殺人」を契機に、いくつも発表された「館もの」というジャンル。本作もそのなかのひとつに含まれるのだろう。

いろいろと不満な点もあるのだが、まずは「謎解き小説」としてのプロットはしっかりしている。
ロジックが不足している点も垣間見えるが、大量連続殺人と密室、そして「見立て」が有機的につながり、特に密室(館そのものの)トリックの解法はシンプルだが説得力のあるものになっている。
「見立て」については常にその「必然性」が問題になるが、今回はまぁ及第点というところかな。

冒頭に掲げられた家系図や登場人物の多さからしても、書く人が書けば相当膨大な大作になってしまいそうだが、本作は必要部分以外は削ぎ落とされていて、そういう意味では好感が持てるのだが、反面物語としては物足りなさを感じてしまう。
特に「動機」はどうかなぁ・・・
(いかにも「新本格」らしいといえば、らしいのだが・・・)

個人的にはこういう作品はストライクゾーンだし、作者の姿勢にも好感が持てる。
ただ、期待が高かっただけに、ちょっとハードルを上げすぎたかも。
いわゆる「館もの」が好きな方なら是非ご一読ください。

No.9 7点 まさむね 2013/06/09 21:38
 密室あり,見立てありの屋敷モノ…という,何とも豪勢な演出。「ネバーエンディングストーリー」というのは言い過ぎかなと思いますが,序章(終章?)の構成は好きです。序章としては一定の期待を抱かせ,終章としては十分な余韻を残してますね。時間軸が行ったり来たりしますが,決して混乱させることなく,非常に効果的に作用しています。サスペンス的要素も相まって,ほぼ一気読みでした。
 作者の代表作の一つと言えましょう。

 最後に,57歳という若さでお亡くなりになられたことが本当に惜しい。骨太の本格を書かれる女流作者としては,頭数個分抜きん出ているなぁ…,と常に感じておりました。
 今後,改めて作品を読ませていただきたいと思います。合掌。

No.8 7点 メルカトル 2013/02/07 20:23
再読です。
なるほど、あとがきを読んだ後には、もう一度序章を読みかえしてしまう。ネバー・エンディング・ストーリーは言い過ぎだが、これはなかなか面白い試みだと思う。
本格的な館ものであり、密室も必然性がありよく練られている。そして見立て殺人と、本格ミステリの美味しいところをこれでもかと詰め込まれており、これこそは隠れた名作と呼んでも差し支えないだろう。
今邑女史の作品の中でも、一、二を争う出来の良さかもしれない。
まあ、相変わらず警察がいかにも頼りないというか、ほとんど出番がないのは作品の性質上仕方ないのか。
霊感少女の存在は個人的には不要な気もするのだが、作者としては遊び心というか、雰囲気作りの一環として登場させたものとして解釈したいと思う。
とにかく全体的に重すぎず軽すぎず、丁度いい感じのさじ加減はさすがにプロの作家と言えるだろう。

No.7 7点 mozart 2012/12/12 15:20
冒頭、登場人物の家系図や一覧リストに名前がズラッと並んでいるのを見て、これはちょっとフォローするのが大変かも、と思いましたが、読み始めたらぐいぐい引き込まれて、ラスト(とそれにつながる冒頭)もそれなりに雰囲気が良く、とても楽しめました。幽霊が見えるだとか、多少、ホラーというか、ロジカルでない部分もありますが、謎が解き明かされるにあたって決定的な影響はなかったし、本格ミステリーとして許される範囲内だったと思います。

No.6 7点 蟷螂の斧 2012/02/10 21:18
館、密室、見立て殺人と本格もので、緊迫感もあり一気読みができました。序章が終章になるという構成や、見立て殺人のトリックも面白く感じました。霊感少女の登場は、ご愛敬として受け止めましょう。

No.5 6点 isurrender 2012/01/07 16:40
サスペンス色が強いのですが、密室や見立ての部分は悪くないです
ただ「ネバーエンディング」は言い過ぎなような…

No.4 7点 測量ボ-イ 2010/12/25 23:07
綾辻氏の館シリ-ズに出てきそうな話ですよね、
でも楽しめました。
本格色が強く、満足のいく一冊です。

No.3 7点 江守森江 2009/10/22 03:04
まさに館ミステリ。
但し、館をトリックではなく物語の展開に活かしている。
第四章まではハウダニットで、必然性のある見立てと密室トリックが本格ミステリしている。
第五章〜プロローグに還る部分では三段構えな真相が楽しめ、サバイバル度とフーダニットを捨て駒にしてプロローグに還りネバーエンドを成立させている。
本格ミステリ+サスペンス仕立てな恋愛小説になっていて一粒で二度美味しい。

No.2 7点 touko 2009/06/06 00:13
ホラーミステリーとの触れ込みだったのですが、ホラー部分はなくても成立している本格ミステリです。
トリック、動機、設定等、うまくかみ合っていて、スムーズに読めました。

それにしても、ホラーとしてもミステリとしてもコテコテな設定と、登場人物たちのドライさのギャップが妙に面白かったです。ドイツ人の血をひいているなんてお耽美な設定なのに、スプラッタ映画によく出てくるアホなアメリカの学生みたいで(笑)。

誰が生き残るかわかってしまうプロローグはない方がハラハラして断然よかったのになあ。

No.1 7点 シーマスター 2008/05/30 23:58
予想外に(と言っては作者に失礼だが)面白かった。

特にグリム童話に見立てた連続殺人の必然性、密室トリックとの兼ね合いには唸らされるものがある。

ただ「霊」や「霊視者」を出す必要はなかったのではないかな。そんなもの出さなくても十分ケレン味は出ているのに・・・・「霊」の最後の仕事もストーリー作りの一環であるのは分かるが・・・・・・まぁミステリをブチ壊すほどではなく許容範囲ではあるが無駄骨の気がする。

また、(この人の癖なのかもしれないが)時々過去の有名作品に言及する中で、本作では登場人物にある作品のネタをポロっと口を滑らさせているのも気になるところ。

(その辺りはともかく)この人の本は2、3冊しか読んでないけど、いずれも読みやすくて長さも手頃、構成も巧く、ミステリチックな雰囲気も程がいい・・・・・結構穴場的作家?(なんていったら本人のみならずファンにも失礼極まりないですね。m(_ _)m )


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