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[ 短編集(分類不能) ]
つきまとわれて
今邑彩 出版月: 1996年09月 平均: 5.89点 書評数: 9件

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中央公論社
1996年09月

中央公論新社
2006年02月

No.9 6点 パメル 2024/03/02 19:33
前の作品に登場した人物が、次の作品に登場し関わってくるという、リレー形式の8編からなる連作短編集。
「お前が犯人だ」ある漫画家の妹が、送られてきたチョコを食べ仕込まれた毒で死んだ。二転三転する謎解き、復讐劇やその真意も破綻なくまとまっており巧さを感じる。
「帰り花」継母の死後、形見分けの場で出てきた実母のコート。実母は、このコートを着て男と駆け落ちしたはずなのに、なぜこの場にあるのか。ホラーの雰囲気漂う余韻で終わるが、短編集最後まで読むと雰囲気が変わるところが面白い。
「つきまとわれて」独身を貫く美貌の姉。上手くいきそうだったお見合いを断ると知り、妹が真意を問いただす。この人間心理は、愚かだが納得できる部分もある。見事な反転劇に騙された。
「六月の花嫁」思いがけないことから調査対象者の息子とその婚約者に出会った探偵は、一見とても幸せそうだが違和感を持つ。究極の親のエゴ。恋愛感情までコントロールできそうで怖い。
「吾子の肖像」美術館で見かけた絵の題は、吾子の肖像。母子が描かれているのにこの題はおかしくないか。題の意味を考えた男には、一つの仮説が浮かぶ。背景にあったであろう愛憎を想像すると背筋がゾッとする。ラストで仄めかせるある人物の妄執も生々しい。
「お告げ」ある日、主人公の家に女性が訪れ、「赤い絵を燃やさないと災いが起こる」と告げる。近隣住民にお告げを行っており、その内容が的中しているのだという。女の胸中を思うと、少し切ない。実際にありそうという意味で、うすら怖い。
「逢ふを待つ間に」パソコンで結婚シミュレーションゲームを始めた男。ある時、ミスで妻を死なせてしまう。ゲームなのでリプレイできるのだが。単にゲームにのめり込んだ男の話では割り切れない切なさが印象的。
「生霊」男と駆け落ちした過去を持つバーのママは、夫や子供と暮らす家に戻る夢を見たことがある。夢の中で脱いだコートは、なぜか目覚めた後に無くなっていた。第二話「帰り花」へと話がリンクするのが見事。物悲しいながら救いのある話で読後感良し。

No.8 5点 虫暮部 2023/03/02 12:39
 「帰り花」は別の短編集の某作と同じネタ。見せ方が多少違うとは言え如何なものか。
 「生霊」をこのシリーズに加えたのは失敗では。読者の立場としては、世界設定が共通なのだから、最終話でいきなり超自然現象がアリになることは無い(筈)。物理的に説明が付く前提で読み進むと、真相は簡単に判ってしまった。
 
 作中の一文を引用すると “確かに巧さは感じるものの、心に響くというほどではなかった”。自虐で書いたわけじゃなかろうが、そんな感じ。

No.7 7点 蟷螂の斧 2021/03/18 15:55
前の作品の人物が登場する異色の短編集と謳っていますが、あまり意味はないような。
①お前が犯人だ 7点 毒殺事件。二転三転後に真の動機が・・・
②帰り花 6点 母が家出した時に着ていた和服が出てきた。家にあるはずがないのに・・・
③つきまとわれて 8点 元カレから「幸せな結婚ができると思うな」という嫌がらせの手紙が・・・反転にはビックリ
④六月の花嫁 6点 贖罪?ホッとするお話でした
⑤吾子の肖像 9点 絵の題名が何故「吾子」なのか?妻子像、母子像ではないのか?衝撃的な結末!?
⑥お告げ 6点 超能力者の情報源は?
⑦逢ふを待つ間に 5点 PCの結婚ゲーム。現実よりも楽しいのかも?
⑧生霊 8点 娘の生霊が悪さ?笑い話から本格的なホラー(②の解決篇)へと話運びが巧い

No.6 5点 ボンボン 2013/05/12 22:32
ほとんど個性を出さない、キャラクターも作らない、ネタ勝負の書きぶり。単純な話かと思わせて、二転三転するので読み進めることができるが、淡々とした気分で読み終わる。
バラバラな内容の短編の一つの話の登場人物を次の話の主人公にして連鎖させる、この趣向一点で支えられている感じ。

No.5 7点 E-BANKER 2011/08/23 22:11
ノンシリーズの連作短編集。
作品中の登場人物の1人が、次の作品の主人公になるという凝った構成になってます。
①「おまえが犯人だ」=なかなか面白い。2度ひっくり返されるとさすがにうならされる。そして、ラストには更なる毒が・・・
②「帰り花」=①の登場人物が主役。出て行ったまま帰ってこない実の母親が、庭に埋められているのではないか?・・・ブルブル!
③「つきまとわれて」=②の主役の妻が今回の主役。「つきまとっている」のは本当は誰なのか? っていうこと。
④「六月の花嫁」=③の登場人物が主役。今回のプロットは分かりやすかった。途中で真相は予想がつく。
⑤「吾子の肖像」=④の登場人物が主役。ある「絵画」とその画家をめぐる謎。これも途中で予想がついた。
⑥「お告げ」=⑤の登場人物が主役。夜中に突然、お告げをしてくるマンションの住人の謎。真相はなかなか気が利いてる。でも、こんな奴、ホントに嫌だな!
⑦「逢ふを待つ間に」=⑥の登場人物が主役。ネット上の仮想家族ゲームをめぐる、ちょっとしんみりする話。こんなゲーム、本当にあるのかな?
⑧「生霊」=⑦の登場人物が主役。そして、これが何と②につながっていく・・・
以上8編。
短編らしい「切れと味わい」のある作品が多く、出来のいい短編集といっていいでしょう。
単なる「短編集」に留まらず、登場人物を共有化させるなど、読者を「ニヤリ」とさせる仕掛けもよい。
まずは、期待どおりの1冊でした。
(①~④まではなかなか面白かった。後半はやや落ちる)

No.4 6点 まさむね 2011/08/17 23:05
 反転モノ好きの私としては,結構楽しめました。非常に読みやすいですしね。
 特に「つきまとわれて」と「六月の花嫁」がおすすめです。それと最終話の「生霊」。登場人物を他の短編にも登場させて繋げる手法が綺麗に展開されてます。
 この作者の短編集は初読だったのですが,他の短編集も読みたくなりました。

No.3 6点 makomako 2011/07/31 07:46
魅力的な謎とどんでん返しと推理小説のお約束はきちんとふんだ小説であり読んでいる間は面白かったのだが、なぜか印象が後に残らない。インパクトもそれなりにあると思うのだが。

No.2 6点 シーマスター 2011/05/02 22:40
ホラーが得意でミステリにもホラーを絡めることが多い作者だが、本作はほぼノン・ホラーのミステリ短編集。(皆無ではない。ホラー度数2%ぐらい)

本作の中で1番面白いと感じたのは第1話の「お前が犯人だ」。
次が「吾子の肖像」。

最後から2番目(並び順で。面白さでは最下位)の「逢ふを待つ間に」は場違いと言ふか、この短編集に入っている意味がよくわからない。

ホラー風味より反転ミステリが好きな自分は、少し前に読んだ作者の短編集『鬼』よりこちらの方が好み。

No.1 5点 メルカトル 2011/04/28 21:47
日常のふとした事件から超常現象まで、読者の興味を惹きそうな謎を提示した短編集。
ホラー色は薄く、真っ当なミステリとしての体裁は保っている。
本書の特徴は、前の話の登場人物が次に再び登場するという、ちょっと風変わりな設定にある。
そして最後のストーリーが最初に繋がってくるという、リンクが凝っている。
それぞれの短編にオチもしっかりついていて、中には二転三転して楽しめるものもあるが、『鬼』に比べるとインパクトが薄い印象は否めない。
全体としてはまずまずと言ったところか。


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