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[ 本格/新本格 ]
そして誰もいなくなる
今邑彩 出版月: 1993年08月 平均: 6.81点 書評数: 21件

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中央公論社
1993年08月

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2010年04月

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No.21 6点 みりん 2023/03/01 01:58
本家未読の方も楽しめると思います。

No.20 5点 虫暮部 2023/01/12 12:07
 虎の威を借る狐、と言っては決め付け過ぎか、私は、こういう形で先行作品を取り込む書き方には批判的な立場である。
 しかし、それなりに上手く使っているし、それ以外の部分でミステリとして面白いので、目を瞑ってもいいかなぁと言う気持にはなった。
 しかしが続くがしかし、演目がオリジナルの脚本でも同様の効果は上げられるんじゃないかとも思う。すると、本歌取りは作者の遊び心の安易で過剰な発露、と言うことになる。うーむ。

 毒の種類は再考すべきだった。身近にあって、イメージ的には吐き出せば済む程度だが、実は死に至る猛毒、みたいなもの。洗剤とか? 作品の雰囲気を考えると、成分を特定せず適当にぼかしてもアンフェアにはならない気がするし。

No.19 8点 sophia 2020/07/18 21:30
「卍の殺人」と同じく海外古典名作(今回は伏せる必要はなさそうですが)の本歌取りに挑戦した作品ですが、これも成功でしょう。元ネタの作品のようにクローズドサークルでもないのに部員10人も殺せるのかと思いきや、連続殺人の軸を途中でずらす手法が実に巧み。クライマックスの犯人との直接対決に入るのが残りページ数からすると早すぎるのではないかという心配もしましたが、その後にもうひとひねりが待っていました。あとがきを読むと、この方の本歌取りの手法に否定的な向きもあるようですが、これは胸を張っていい傑作であると感じました。

以下ネタバレ

測量ボーイさんへ

○○役の人物が死んだと思わせてやはり生きていたこと、最後にやはり署名付きの手紙を残して消えること、だと思います。

No.18 7点 あびびび 2020/05/28 12:26
初版から何年か経って、作者曰く、「想定外の再版」だったらしい。ミステリ好きなら、「まさかあの作品を超えることはないだろうが、少し気になる…」というタイトルである。

最初の殺人である青酸カリの有無は笑うしかないが、その後も見立て殺人は続く。被害者の危機感なしはあきれるほどだったが、落ちになり、最後のどんでん返しが終わると、なるほど、そうだったのか…と感心するしかなかつた。

No.17 7点 人並由真 2020/05/07 14:39
(なるべくネタバレないように書きますが、今回はちょっと微妙かも・汗)

 一晩でいっきに読了。さすがに最後までは……(中略)という思いも湧かないでもないが、作者の立場になってみるならば、どこでどうチェンジアップするかの構成と、仕掛けの配分に、精魂を傾けた力作なのは間違いない。

 また、一人の思惑で(中略)という面もあるが、それはそれ、かの幻影城ジェネレーション作家の某長編のごとく、大事なのは当事者のものの考え方であろう。先のレビュアーの方も言われるように、描写が甘いなという違和感が終盤で反転する快感はかなり鮮烈であった。
 一番大きな仕掛け(最初に明かされる××トリック的な部分)のみはさすがに読めたが、まあ、あれは大方の人がわかるだろうし。
 
 あえて不満を言うなら、一部の登場人物の内面描写に恣意的な作者の作為を感じる点。一人称視点なら書き手の記述のコントロールの賜物として了解できるものが、三人称の場合は作中人物の思惟を覗き込んだ際に<その流れでその事象に考えが及ばないという、かなり奇異な事態>の積み重ねが嘘っぽく見えてきて仕方がない。『DEATH NOTE』での月の自己催眠のギミックなどは、出るべくして出た作法という感もあった。

No.16 7点 ミステリ初心者 2018/12/10 17:12
 ネタバレをしています。

 すさまじい量の伏線とミスリードがあり、ページを戻して読み返すのが楽しい力作だと思いました。クリスティー作品顔負けのどんでん返しでした(詳しいわけではありませんが)。
 なんで、孤島でも無いのに、こんなに簡単に殺されまくるんだ、警察は無能か?と思っていた自分はもう騙されていたわけですね!

 どんでん返しに次ぐどんでん返しですが、問題の形式(?)はなく、真相の推理自体は不可能かと思われます。ただ、こだわらなければ、非常に楽しめる作品でした。このへんもクリスティー作品顔負けでした(詳しいわけではありませんが)。
 難癖をつけるようですが、最初の殺人で、演劇をめちゃくちゃにしたいだけなら、死ぬ可能性のある毒は入れないのではと思いました。洗剤をまぜるとか、炭酸コーラとかどうですかね? それでも、飲み込んで続行する可能性はありますが・・・
 皆川は、少女を自分の手では殺さないが、殺しを裏で幇助する? 防げた犯罪をあえて見逃す心情は良くわかりませんでした。

No.15 7点 sm556s 2018/04/19 08:47
良く考えられた作品。どんでん返しが2回ある。メインの殺人に関しては、被害者の無防備さとなにも見立て殺人にする必要があったのか、という点が若干ひっかかる。一気に読み進めることができる。

No.14 7点 パメル 2017/10/20 01:01
クリスティの名作「そして誰もいなくなった」をモチーフにした学園ミステリ。
見立て殺人にこだわりながらも、意表を突く展開に意外な真相、そしてどんでん返しも用意されている。
変な言い方だが、「そして誰もいなくなった」の内容を記憶している人ほど、作者の巧みなミスディレクションの罠に嵌ることが出来て楽しめると思う。
テンポも良くリーダビリティが高いため、ミステリ初心者におすすめしたい作品。

No.13 6点 mozart 2012/11/22 10:39
超有名作品のオマージュとしてもよくできている作品だと思います。ただ、細かい部分で色々不満があるのも確かです。いくら何でも最初の事件の動機では青酸カリは使わないだろうし、「裁かれざる犯罪」というのもややムリヤリ感が隠せない。そして何よりも、夕美に関わる最後の話が「どんでん返し」のカタルシスを薄めてしまっているのがちょっと・・・。

No.12 6点 E-BANKER 2011/12/25 21:02
1993年発表の長編作品。
タイトルのとおり、A.クリスティの歴史的名作「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品。

~名門女子高の式典の最中、演劇部による『そして誰もいなくなった』の舞台上で、服毒死する役の生徒が実際に死亡してしまう。上演は中断されたが、その後も部員たちが芝居の筋書き通りの順序と手段で殺されていく・・・。つぎのターゲットは私? 部長の江島小雪は顧問の向坂典子とともに、姿なき犯人に立ち向かうが。戦慄の本格ミステリー~

趣向としては面白いと思った。
完全な「孤島」であった本家とは異なり、本作の舞台は「女子高内」という緩い括りはあるものの、一応は開かれた空間。
そんな中で、「見立て」殺人だと被害者(候補)たちが認識していながら殺されていくという「違和感」をどのように解消するかが、本作のプロットの中心の筈。
この部分に作者の「苦心」が見受けられますね。
連続殺人に一応の解決がついてから、3度のどんでん返しがあり、強烈なインパクトを残しているのは事実。
「女子高」や「女子高生」という、(特に男性にとっては)謎の多い空間・人種が扱われているのも舞台設定の勝利。

ただ、やっぱり「違和感」が完全に解消されているとは言い難い。
特に「動機」については、どうなのかなぁ・・・
本作の場合、連続殺人の直接の「動機」や、それを間接的に支援(?)した「動機」など、関係者のさまざまな「思惑」が絡み合っているわけですが、それが度を越した「作り物感」を感じさせてるような気にさせられる。
言い換えると、最後の「どんでん返し」のための道具立て・・・という感覚が拭えないのだ。
(それがプロットと言えばそれまでだが・・・)

でもまぁ、トータルで見ればそれなりによくできた作品だとは思いますし、一読の価値は十分ありでしょう。

No.11 7点 測量ボ-イ 2011/12/10 10:36
海外の超有名作品をモチ-フにした一品。
その作品の単なる模倣ではなく、それなりの捻りがあり、
どんでん返しもイヤミなく利いています。
なかなかの作品だと思います。

(余談)
作者曰く、「原作を知らなくても99%は楽しめるが、残
りの1%はやはり原作を知る必要がある」との事。
その1%とは何でしょう?僕も心当たりのある記述はある
のですが、もう一つ自信がなくて・・・どなたか教えてく
ださい。

No.10 7点 蟷螂の斧 2011/10/29 08:42
「裁かれざる犯罪」を誰がどう裁くか?。メインの事件では捜査が遅々として進まず甘いと思いつつ読んでいましたが、ひねりのあるラストで見事解決。

No.9 7点 まさむね 2011/07/10 20:53
名作の活かし方としては,ありがちな手法とはいえ,相当に良質で効果的。中盤以降の捻りと加速感も素晴らしく,一気読みでしたね。
ただ,最終章については,makomakoさんと同じ意見で,ない方が締まるかも。

No.8 7点 makomako 2011/07/02 07:29
名作のオマージュはどこか作者の独りよがりのところが垣間見えてなかなか良いものには出会えないが、この作品はまず一定のラインはクリアーしていると思います。初めはこんな設定で大丈夫かなあと思っていたが、無理なく物語りは進行して最後のほうはお約束のどんでん返しもある。ただ個人的好みからいえば最後の話はなしのほうがすっきりとするのですが。

No.7 7点 メルカトル 2011/05/12 21:29
前半はサスペンス仕立てのわりに緊迫感が希薄で、歯応えが感じられなかった。
シナリオ通りに見立て殺人がおこなわれていて、次の犠牲者が分かっているにもかかわらず、女子高生達に危機感がなく、暢気すぎるのは読んでいて不可解さを覚える。
しかし、物語が佳境に差し掛かってからは、一変スピード感に溢れ展開がめまぐるしくなり、歯応えが出てくる。
真相も捻りがよく効いていて、ありがちな展開とは言え、読者を引き込む筆力は素晴らしいと思う。
個人的には今邑女史の最高傑作は『金雀枝荘の殺人』だと考えているが、本作はそれに比肩するほどの傑作ではないだろうか。

No.6 7点 seiryuu 2011/01/30 00:46
連続殺人はうまくいきすぎだなと思いました。
でも、自然な流れで複雑な設定をすっきり〆たのはすごいと思った。
ミスリードも巧いなあと思いました。

No.5 7点 touko 2009/11/30 22:04
「そして誰もいなくなった」を模した連続殺人を、密室状態ではなく、現代日本において再現出来ただけでも拍手。
細かいつっこみどころは多いけれど、これだけの大技を成功させたんだから許容範囲。
(ところで、この人の書く若者は、他作品でもそうだったので、アメリカのスプラッタ映画の殺され役の学生たちのように、追い詰められていてもなーんか危機感がなく、脇が甘いのが基本なのかも……笑)。
ひねりのあるラストもうまく決まっていたと思います。

本筋には全く、関係ありませんが、ブルセラだのボディコンだのと90年代初頭の風俗を扱っているわりに、女子高生の会話はじめスケバンだのジャズ喫茶だのと70年代風俗や流行語が出てくる方にも、なんでやねん! とつっこみながら読んでました(笑)。

No.4 9点 いけお 2009/11/07 01:14
不自然に感じる点もあったが、二重の結末は捻りが効いている。
夢中になる感じも含めて上手いオマージュ作品の好例。

No.3 6点 江守森江 2009/10/21 02:26
本家「そして〜」・「十角館〜」再読の流れで読んだ。
「十角館〜」のC・C物で本格ミステリ寄りアレンジに対し、この作品はC・C設定を捨て学園物&見立てアレンジ。
途中(三人目以降)の被害者達の警戒が緩いのはC・Cでなく見立ての見立てだからさほど気にならない。
※ここからネタバレ注意!
真相が二段構えで、一段目はロジカルに到達する本格ミステリだが捻りは弱い。
しかし、二段目はプロバビリティーに操りと捻った真相が待ち受ける(この真相の為に警察の警護が緩いのはご愛嬌)
「裁かれざる犯罪」という本家のテーマも踏襲している。
本家や「十角館〜」の印象が鮮明な時期に読めばより楽しめる。

No.2 6点 シーマスター 2008/04/25 21:32
かの名作を読んでいた方が楽しめるかもしれないが、未読でも普通に楽しめると思う。作者が(悪戯心から)わざとキワドイ表現をしている所もあるが、それだけにネタバレはないはず。(たぶん)

内容に関してチョコっと苦言を呈させて頂くと・・・
「見立て殺人」なんて噂が出たら、2人目までは止むを得ないにしても、本件では(見立てを採るなら)それ以後のターゲットが明白なんだから、警察や学校が(半信半疑であったとしても)非常事態として、そして何より家族が彼女達を聖火を守るが如くガードするのが普通ではないか?
実際に何人か死んでいるわけだし、如何なる理由があろうと1人で外出させたり家に残したりはしないんじゃないかと思うがね。(でも、そうしたら本作はできないけどね)

まぁ硬いことは抜きにしても、読みやすい上に小振りながら捻りも結構入っているので、余剰時間の消費には適した本と言えそう。


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