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[ 本格/新本格 ]
時鐘館の殺人
今邑彩 出版月: 1993年12月 平均: 6.75点 書評数: 12件

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中央公論社
1993年12月

中央公論社
1998年03月

中央公論新社
2012年05月

No.12 7点 虫暮部 2023/01/06 11:22
 頭から4編は、それぞれ良く出来た作品だと思う。しかしその出来の良さ故に、却って伏線の張り方等の見当が付いてしまう。真相を全て見抜けたわけではないが、“あぁやっぱり……” の連続だった。
 「恋人よ」は、あまりにも下らないオチ、だからこそ予測出来なかった。
 表題作は楽しいね。私もあんな手紙を出してみたい。何か手頃な作品は無いものか。

No.11 6点 斎藤警部 2021/11/22 22:51
■□ 生ける屍の殺人::机上のトリック、机上の展開に机上の大反転もここまでやってくれりゃ文句なし。思い切った不可能興味で完走。企画で勝負あり。無理のあるダイイング・メッセージの必然性は。。 最後の駄目押しは、ジョークって事で。
■□ 黒白の反転::妙にあからさまなヒント連発、イコール絶対何かの隠れ蓑と疑っていたのですが。。。。思いっきり虚を突かれました。。そこは将棋でも囲碁でもなく、オセロなんですよね。。 てかこの小説、本筋の事件がダミーになっちゃってません?
■□ 隣の殺人::ほとんど数学的な、きれいにまとまり過ぎた反転からの反転返し。しかしこの終結は気分が悪い。妙な所でバッドエンドに振り切っていない所為か?(◯◯◯◯が出落ちネタバレのような気もします。。)
■□ あの子はだあれ::胸に迫る、美しきファンタジー。だがラストに現実世界の億劫さが託されているような。だからこその独特な味わい。 その盲点は、本当に盲点でしたね。。
■□ 恋人よ::サスペンス横溢だが、終わってみれば”どうってことない”感がどうにも強い。が、この終わり方、部屋が無人であるという点に、何かがTOO LATEになるかも知れない可能性を込めてあるのか、ないのか。。
■□ 時鐘館の殺人::企画勝負に圧勝の一篇。この稚気ある構成はシビレます。そのくせ小粒感がダダ漏れ(笑)。でもやっぱこの純トリッキーな物語構成と、見事にそれと両立した完成度との均衡は見逃せない。ワンポイントで”人間を描けなく”なってるのは、わざとだな。。 無邪気な楽屋落ちも、文壇入り出来た著者の嬉しさ発露のようで良し。「原雅也」には笑った。

ノベルス裏表紙「著者のことば」より
“短篇集でありながら、じつは、この中に長篇が二篇入っています。そりゃ、どういうことかって? 読めば分かります。”

裏表紙著者画像の影響もあり、平成初期ノスタルジーに胸が締め付けられる一冊でした。
遅ればせながら、平成なかばに若くして世を去った今邑彩さんのご冥福を、お祈り申し上げます。

No.10 7点 蟷螂の斧 2021/03/16 19:54
①生ける屍の殺人 7点 ユーモア系で思わずニヤリ。ラストはカーっぽい。短篇なので許せるけど長篇だったら怒る?(笑)
②黒白の反転 8点 別荘での殺人事件。ロジックでスッキリ解決。でもその後が怖い。更に元女優の過去も・・・
③隣の殺人 6点 隣室で殺人?妄想が膨らむ。ラストのオチより、妄想のオチのままの方がよかったかも
④あの子はだあれ 5点 SFチックな物語。もう一つ別の世界があるような・・・
⑤恋人よ 6点 ホラー系ユーモア 間違い電話の恐怖。単純だけど好きだなあ
⑥時鐘館の殺人 8点 構成の妙。時計のトリックは疲れるから考えない

No.9 7点 測量ボ-イ 2019/10/05 11:43
ホラ-色の強い作品もありますが、どれも粒より。
個人的なベストは「黒白の反転」かな?表題作も良いですが。
本格色の強い、よい作品を書く作者だけに、既に故人である事が
惜しいです。

No.8 7点 名探偵ジャパン 2018/05/20 21:27
全般的に楽しめました。

「生ける屍の殺人」
やはりラストに賛否が分かれるところでしょうね。私としては、あの人物があれであるとは、完全に明かさず、ぼかして書くにとどめたほうがよかったのではないかと思います。サングラスを外すところで終わるとか。「驚愕のラスト」というよりも、「それ、書いちゃうんだ」という白けのほうが勝ってしまいました。

「黒白の反転」
これは見事に騙されました。後味が悪いのですが、いわゆる「イヤミス」というもの特有の趣味の悪さは感じません。そういう要素抜きにしても、ミステリとして端正に書かれているためでしょう。

「隣の殺人」
皆さん書かれているとおり、すぐに落ちが分かってしまいます。そのくせ紙幅を結構取っているので、「早くネタを割って終わってくれ」と思いました。もっとぐっと短くまとめたら読み甲斐もあったのではなかと思います。

「あの子はだあれ」
ミステリではなくホラー的SFでしょうか。箸休め的ないい話ですね。

「恋人よ」
これもラストの評価が分かれる作品ですね。「生ける~」と同じく、はっきりと真相を書いてしまったのは白けます。「そうであってくれてよかった。あれ? でも、もしかして……」と、ぼかして終わらせてほしかったです。

「時鐘館の殺人」
表題作にして本短編集のベスト。プロローグで原稿の枚数で編集者とやりとりをしていたのが、作家あるある的なネタではなく実は伏線で、こんな形で回収してくるとは。作中作自体は普通のミステリですが、全体的な仕掛けが楽しかったです。

No.7 7点 パメル 2018/02/10 00:58
6編からなる短編集。
ガチガチの本格もの、サスペンス、ホラー、SFと様々なジャンルが楽しめる。
展開も二転三転したり、切れ味抜群揃いなのも嬉しい。
冒頭作品は山口雅也氏の、表題作は綾辻行人氏の作品を意識して書かれたのだろうが、単なるパロディに終わっておらず、作者らしい雰囲気に仕上げ緻密なパズルとして組まれており読み応えがあります。

No.6 7点 メルカトル 2017/04/26 22:53
一定水準を維持した良作揃いの短編集です。
『生ける屍の殺人』は島田荘司氏に直接依頼を受け、アンソロジー『奇想の復活』に寄せられた短編です。新本格の作家をはじめ、若手のミステリ作家の競作とあって、なかなか力の入った味のある作品に仕上がっていると思いますよ。山口雅也氏の某作品とタイトルが似ていますが、全く関係ありません。ラストは好みが分かれるかもしれませんが、個人的には許容範囲内です。
表題作は凝りに凝った構成で読ませる本格ミステリです。まるで新本格のお手本のような作風ですね。ちなみに史上初?前代未聞の「読者からの挑戦状」入りです。もしかしたらこの作品は短編でありながら、今邑女史の代表作に挙げられてもおかしくはないんじゃないでしょうか。
これは作者がアマチュア時代に書いたものが元ネタらしいですが、今邑女史も考えてみればデビュー当時は本格志向の強い作家だったんですよね。その後、ホラーやサスペンスに移行していったようですが、ご存命なら更なる傑作を読めたはずなのに、本当に残念なことです。
とにかく、一読の価値ありの短編集だと思います。色々な趣向の作品が楽しめます。

No.5 7点 まさむね 2014/12/13 22:08
今邑さんの短編集の中でも,かなり高水準ではないでしょうか。
①「生ける屍の殺人」:いかにも今邑女史らしい作品。でもラストのホラー帰着が個人的にはどうにも微妙。
②「黒白の反転」:伏線や反転を含めて綺麗に纏められた良作。そこかしこに巧さを感じます。良作。
③「隣の殺人」:オチが読みやすすぎるため,逆に何かあるのか…とすら思わせる。でも思い過ごしでしたねぇ。凡作。
④「あの子はだあれ」:SF短編として良質。余韻を残す反転も見事。
⑤「恋人よ」:20ページ程度の分量の中でしっかりと雰囲気を作っています。最後の捻りも私は結構好き。
⑥:「時鐘館の殺人」凝ったプロットです。遊び心にも溢れています。文庫版ではノベルス版にはあった箇所を大幅に削除しているとのこと。理由の一つが「実在する作家の方々を揶揄するような表現が多々あることが気になったから」とのこと。気になるなぁ。

 ⑥・②がベスト2。④と⑤も好み。①は個人的には評価しにくいが,いかにも作者らしい。③のみ凡作か。

No.4 7点 E-BANKER 2014/06/15 14:17
1993年に発表された作者の第一作品集がコレ。
タイトルからしてオマージュのような作品やややホラーよりの作品などバラエティーに富んだ構成。

①「生ける屍の殺人」=タイトルからして山口雅也氏の有名作を思わせるが、それほど似通った内容ではない(と思う)。ラストの捻りのやり方はいかにも作者らしくて、背筋に冷たい風が・・・的なやつ。
②「黒白の反転」=タイトルは作中に登場するオセロゲームからのもの。ある登場人物に関する身体的特徴が事件解決の鍵となるのだが、伏線の張り方にウマさを感じる。ラストはもう少しブラックでもよかったような・・・
③「隣の殺人」=隣の夫婦が言い争う声が聞こえ、それから片方の姿が見えなくなった・・・短編でよくお目にかかるプロット。ラストのオチは最初からミエミエなのが玉に瑕。これももう少しブラックでも良かった。
④「あの子はだあれ」=これは「ちょっといい話」的な一編。SF作家を登場人物に配し、パラレルワールドの要素も取り入れるなど作者の懐の深さが垣間見える。
⑤「恋人よ」=これはラストの2~3行がなければ完全なホラー作品だった。そういう意味ではラストで「救われた」ということになるのかもしれないが、はっきり言って「蛇足」だな。あれがなければ本作中ベストでも良かった。
⑥「時鐘館の殺人」=今邑女史がある雑誌の「犯人当て懸賞小説」を依頼されて・・・という設定の本編。懸賞小説の中身は全くパッとしないのだが、本編のプロットはそんなところにあるのではない。でも、この「仕掛け」はなかなか気付けないわ。因みに綾辻氏の某作とのつながりはほぼなし(すべての時計が狂っている、という部分が唯一のオマージュなのだろうか?)

以上6編。
それぞれ注文をつけたいところはあるのだが、全体的にみれば十分水準以上の作品集に仕上がっている。
なにより、どの作品も手抜きなく細かな「仕掛け」が施されているのが高評価につながる。
本作ではホラー風味が中途半端だったのは初期の作品だからなのか、そこはやや残念。
でも今まで読んだ氏の作品集ではベスト。
(やっぱり表題作がベストかな。⑤は前述のとおりでラストが×)

No.3 6点 makomako 2012/08/26 09:11
 作者の本格物の作品はわたしの好むところなのだが、ホラーのほうへ傾いたものは苦手。
 本作品は一作目の生ける屍の殺人はホラーに傾いている。
 短編集って一作目から読むと思うのだけど、(そうでない方もいるのかな)最初の作品でつまづくとあとはどうも気が進まなくなる。
 最後の時鐘館の殺人なんかは結構よかったのだが、たどり着くまでの作品はもう一つのように感じてしまった。
 順番が変わったら評価がもう少しあがったかも(そんな評価って当てにならないですね)。

No.2 6点 シーマスター 2012/03/26 22:46
作者の第一短編集・・・・ですよね?

本書の読了により、現在までの今邑氏の短編集を読破したのではないかと思うが、図らずも刊行順序にほぼ逆行する形で読み進めてしまったようだ。で、感じたのはこの人は初期の頃の方が口語的でユーモアに富んだ文体だったんだなあ、読み様によっては最近のものより余裕を感じさせる・・・という普通の作家の文体の変遷とは逆ではないかなぁという曲者作家ぶり。
それはともかく本書の感想をちょこっと述べさせて頂くと・・・

・「生ける屍の殺人」・・謎の提示は魅力的だが、小説としてアンフェアではないかという気もする。まぁ「らしい」話。 山口雅也氏の作品とは無関係。
・「黒白の反転」「隣の殺人」「あの子はだあれ」「恋人よ」・・・それぞれ反転モノとして読ませてくれる。(「隣の殺人」と「恋人よ」は大体見えてしまったが)
・「時鐘館の殺人」・・綾辻行人氏の作品と同じ読み方のタイトルだが内容は(時計がたくさんある館での殺人という共通項以外)無関係。今邑彩が出版社から依頼された犯人当てクイズ小説、という設定。私は(雰囲気からカスリましたが)論拠などは全く分かりませんでした。なかなか凝っているし遊び心もタップリ。
エピローグの一節(地の文)からの抜粋・・・『大体、本格物の愛読者なんて暇だけは腐るほどあるという人種が多い。・・(中略)・・読むのは学生か失業者か病人である。』


パッと思い浮かんだ個人的な彩ちゃん短編ベスト3
 ①おまえが犯人だ(「つきまとわれて」に収録)
 ②ささやく鏡(「よもつひらさか」に収録)
 ③時鐘館の殺人(本書の表題作)

No.1 7点 kanamori 2010/03/10 20:15
本格ミステリ短編集。
この人は時に凡作やホラー系の作品も書いていますが、初期の端正な本格ものは見逃すのはもったいない。
短編集ではこれが一番かな、表題作ほか「生ける屍の殺人」「黒白の反転」等どれもよかった。


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