皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
[ 短編集(分類不能) ] 盗まれて |
|||
---|---|---|---|
今邑彩 | 出版月: 1995年03月 | 平均: 5.60点 | 書評数: 5件 |
中央公論社 1995年03月 |
中央公論新社 1999年05月 |
中央公論新社 2012年01月 |
No.5 | 5点 | 虫暮部 | 2023/02/17 13:37 |
---|---|---|---|
「情けは人の……」「ゴースト・ライター」は、捻って更に捻って、それがやり過ぎでなく決め手として上手く嵌まっていると思う。因みに、カーネーションの色の意味は初めて知った。
全体的には、上手さが却って仇になったか、どうも印象が弱い。“ミステリ的には駄作でもこの人の世界に浸れて心地良い” と言える空気感みたいなものが無いので、短編集は単なるアイデアのカタログになってしまった。文体のせい、だけじゃないよな……。 |
No.4 | 5点 | E-BANKER | 2012/12/06 20:33 |
---|---|---|---|
1995年発表。ノンシリーズの作品集。
小道具として「電話」や「手紙」が登場する・・・というプロットが共通した作品が並ぶ。 ①「ひとひらの殺意」=小説家志望の兄が殺された事件。兄の友人宅へ再訪した妹は思いがけない事柄を話し始める・・・。桜の花びらが印象に残る作品。 ②「盗まれて」=これはいかにも女流作家といった風味の作品。まさに、男と女の化かしあいなのだが・・・まぁどっちもどっちだよな。作品のタイトルはちょっと小粋。 ③「情けは人の・・・」=銀座の飲み屋のバーテンダーが巻き込まれた、ある実業家の息子の誘拐事件。誘拐したつもりが実は・・・という展開。短編らしい切れ味。 ④「ゴースト・ライター」=死んだ夫は美貌の小説家で妻のゴーストライターだった。夫の死で窮地に立たされた妻に、死んだはずの夫から電話がかかる・・・それも意外な形で。からくりは程なく判明するが、ラストはちょっとオカルト。 ⑤「ポチが鳴く」=これは作者らしいブラックな味わいの作品。真相については予想がつくが、このタイトルが実に意味深。狂った人も、そのそばに居た人も、ちょっとネジがいかれてくるんだなぁ・・・ ⑥「白いカーネーション」=これはしみじみとして良い作品。実の母に裏切られたと思い込んでいた夫だが、実は・・・。やっぱり母は偉大だなぁーと思ってしまう。 ⑦「茉莉花」=“茉莉花(まりか)”という自分の名前が嫌いでペンネームをつけたある女流作家。それは、父との苦い思い出に起因していた。自分を訪ねた女性の正体に気付いたとき・・・。 ⑧「時効」=昔住んでいた函館から届いた一通の手紙。それは忘れたはずの昔の事件を思い起こさせる「カギ」となるものだった・・・。そして、函館の街で思わぬ人物と出会い、今さらながらに知る真実。 以上8編。 どの作品もなかなかのストーリーテリングだし、作者の「うまさ」は十分に発揮できていると思う。 ただ、悪く言えばやや淡白であまり印象に残らない作品という気はする。 ということで、あまり高い評価はできないし、作者のファンでなければあまり勧める気はしないかな・・・ (⑤⑧辺りが個人的には好き。あとは横一線という感じ。) |
No.3 | 6点 | まさむね | 2012/11/13 23:47 |
---|---|---|---|
今邑さんの短編は「つかみ」がウマイ,というのが個人的な印象でしたが,まさにその印象どおりの短編集。読みやすさも手伝って,途中で止められなくなるのですねぇ。決して大技が炸裂する訳ではなく,何となく先が見える展開ではあるのですが,終盤の捻り又は余韻のある結末は好きですね。マイベストは,あの分量での連続反転が綺麗だった「情けは人の…」でしょうか。 |
No.2 | 6点 | シーマスター | 2012/03/13 22:33 |
---|---|---|---|
今邑氏らしい、リーダビリティとツイストを兼ね備えた短編集。
まぁ、こういう系統の話(特に作者自身の他の短編集)を読み慣れていると大方途中で捻り先は見えてしまうが、後半の作品では家族、特に親子の情の描写においてミステリーの枠に収まらないものがある。 ところで、表題作の最後から四行目・・・『ははあ。そういうことだったのか。』・・・どういうことだったのかよく解かりませんでした。どなたか解説していただけないでしょうか。 |
No.1 | 6点 | メルカトル | 2012/02/04 22:05 |
---|---|---|---|
手紙や電話が重要な役割を果たす、短編ミステリ8編からなる作品集。
良くも悪くも、読みやすく忘れやすいという今邑女史の二大特徴を踏襲した作品ばかり。 ストーリーを読むにつれて、その展開は読めてしまうケースが多いし、オチもおおよそ想像がつくが、その先に更に一捻り二捻り効かせているところはさすがである。 全体として、それなりに面白いし一読の価値はあるのではないだろうか。 今邑女史としてはまずまずの出来だと思う。 |