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[ 本格/新本格 ]
i(アイ)―鏡に消えた殺人者
貴島柊志刑事シリーズ
今邑彩 出版月: 1990年11月 平均: 6.58点 書評数: 12件

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光文社
1990年11月

光文社
1994年02月

中央公論新社
2010年12月

No.12 7点 虫暮部 2023/02/09 12:35
 これ書くとネタバレしちゃうなぁ。
 Ⅱ章に挿入された現場見取り図で、作者はちょっとミスをしている。
 死体と足跡を180度回転させると、本棚のある壁にぶつかるでしょ。ならば本棚の位置を替えて、そこから数歩先のベランダに続く窓を開けておく、と言う手がある。
 また、回転を90度にすると、隣の洋間なら窓の位置に合わせられる。但しサイズが合わないから少し切る必要がある。
 どっちにせよ不自然さは残るが、鏡よりはマシだ。
 つまり、作者はこういう揚げ足取りの余地の無い現場を設計すべきだった。

 ついでに。事件の現場と短編小説の内容がリンクしたのは、小説を読んだからではなく、あくまで偶然? うーむ。 

No.11 7点 文生 2021/08/27 21:46
女性の分身的存在をテーマにして怪奇ムードを盛り上げる手管はヘレン・マクロイの『暗い鏡の中に』を彷彿とさせますが、最後まで腰砕けになることなく着地を決めている分、本作の方が完成度が高いように思います。
また、密室などのトリックは古典的なものが多くて新味は感じられないものの、事件の異様さを際立たせるための小道具だと考えれば十分な出来だといえます。謎解きとホラー要素のバランスのとれた怪奇ミステリーの佳品です。

No.10 6点 パメル 2020/10/02 09:03
怪奇小説と本格推理小説が融合した貴島刑事シリーズ第一弾。
編集者の的場は、作家の砂村が待ち合わせ場所に現れないため、仕事場を訪れると刺殺されていた。
砂村の書きかけの短編が冒頭に挿入されており、それがホラー的な雰囲気を醸し出している。殺害現場も部屋は密室であったこと、血染めの足跡が、あたかも鏡の中に入ってしまったかのように鏡の前で消えていること、残された遺稿には鏡に怯える自伝的小説があったこと。
この怪奇的な謎をどのように手掛かりを掴み、推理し真相に近づいていくのか、そのプロセスが面白く読ませる。謎を少しづつロジカルに解明し、思いがけない真相に辿り着く。そこからさらに、動機と遺稿の謎を巡って、もう一捻り加えて異様な構図を露にし驚かされる。リーダビリティは高いし、プロットも丁寧で好印象。ただ、最後の全てがひっくり返るようなどんでん返しは、少し強引に思える。

No.9 7点 MS1960 2017/05/17 08:57
【ネタバレあり】場所の入れ替りと人の入れ替わりの2つのトリック。両方とも秀逸。但し、この2つのトリックをもっとうまく見せると驚きももっと大きくなったと思う。その意味で伏線に工夫が必要なのと、最後人の入れ替りのトリックが明らかになった時に真犯人には生きていてほしかった。関係者を一堂に集めて「・・・ですよね鈴子さん・・」と指摘すると効果的だったのではないか。とは言え、作者の本格推理作家としての質の高さが垣間見られた作品。

No.8 7点 蟷螂の斧 2014/08/14 08:47
「裏窓」殺人事件を先に読んでいてよかった。その書評でも触れたのですが、著者は「合理的な謎解き」のお好きな人は、エピローグを読む必要はありません・・・」と言っています。本作にも当てはまるということですね。オマージュ作品でありますが、そのエピローグを比較すれば本作の方が受け入れやすいと思います。「足跡」の謎は、オカルト風味をうまく融合させたトリックで感心しました。どんでん返しは、○子の逆バージョンを予想していたのですが・・・はずれました残念(苦笑)。

No.7 7点 E-BANKER 2012/03/24 00:38
警視庁捜査一課・貴島柊志シリーズの第1作。
作者らしい、オカルト風味の効いた本格ミステリー。

~作家・砂村悦子が殺された密室状態の部屋には、鏡の前で途絶える足跡の血痕が・・・遺された原稿には「鏡」にまつわる作家自身の恐怖が自伝的小説として書かれていた。鏡の中から見つめているのは、死んだはずの「アイ」(!?)。貴島刑事が鏡に消えた殺人者に挑む。傑作本格ミステリー~

うまくできてるなぁーとまずは感心。
作者の書くミステリーは、プロットが実に丁寧で好感が持てる。
本作も、「密室」や「鏡の中に消えたように見える血の足跡」など、提示された「謎」はそんなに突飛なものではないが、真相解明の段階で1つ1つのピースがうまい具合に嵌っていく快感を味わうことができる。
トリックも、アリバイと「密室」や「足跡」がきれいに連動しており、まずは十分合格点を与えたくなる。

大方の真相解明後に残された最終章がちょっと問題。
オカルト的な風味を付けたかったのだろうが、いくら○子だといっても、それはすぐに気付くんじゃないのか?
そこはちょっと強引すぎる気がしてやや首を捻ってしまった。
ただ、それを差し引いても高評価はできる佳作。
(貴島刑事の秘密は次作以降で明らかになるのかな?)

No.6 7点 まさむね 2011/11/18 23:02
 決して驚愕のトリックではないのです。
 しかし,謎の提示手法・的確な伏線・ロジカルな解明・終盤の捻り具合・全体の分量・読みやすさ・・・などなど,全体的にバランスがとれており,非常に良質な作品です。まぁ「バランス」といっても,好みや気分によって左右される抽象的なモノなのですけれども…。しかし,個人的には重要視したい項目ではあります。
 ちなみに,怪奇と本格推理とのバランス(端的にはエピローグ部分の評価)については,何とも微妙ですねぇ。ラストの一撃としては決して悪くはないと思いますが,蛇足っぽい印象も。でもなぁ,ソレがないと最後の被害者(?)の行動が理に適ってないしなぁ…ってソレ自体が理に適ってない訳だし…などと「メビウスの輪」的に考えさせられるのも,まぁ嫌いではないです。うーん,やっぱりバランスがいい作品だと思いますね。

No.5 7点 makomako 2011/05/23 18:22
出だしがあまり好きでないが途中はなかなか本格推理としてよくできていると思う。作者は怪奇と本格推理の癒合を目指したとのことだがこういった方向は嫌いではない。結構楽しく読んだので私としては評価は高いほうです。ただ最後のどんでん返しも意外性があって面白いのだが、女性の感覚なのだろうか主人公の行動がどうにも腑に落ちない。最後の数ページは怪奇趣味の結果だろうがせっかくの本格推理がなんだか消化不良の結果となってしまった。

No.4 5点 nukkam 2011/05/22 12:57
(ネタバレなしです) この作者は本格派推理小説とホラー小説を書き分けているようですが、1990年発表の貴島柊志刑事シリーズ第1作である本書は両者のジャンルミックス型です。ジャンルミックス型としては両方の特色を出すことに成功したと言えると思います。だた自分自身は本格派謎解きが大好き、ホラー・サスペンス系が苦手な読者なので、好きな作品かと問われるとこの点数評価に留まります。トリック自体は凄いとは思いませんが不可思議な謎を合理的に謎解きしているし、どんでん返しも上手いと思いますが、最後のホラー風雰囲気はやはり自分の好みに合いませんでした。私が好みの激しいかなり特異な読者なのであって、おそらくはもっと高く評価する読者が多いとは思います。

No.3 6点 STAR 2010/01/24 21:11
中学生ぐらいで読んだ作品。
書き出しに引き込まれました。幻想的な前半が後半のほうで論理的に解明されている点が良かったです。

No.2 6点 シーマスター 2009/02/07 21:54
カーちゃん張りのマジカル密室殺人には大いにソソられるが、タネを明かされると竜頭蛇尾な感も否めない。
そりゃー不可能に見える現象が成立するためには(故意にせよ偶然にせよ)必ずどこかに「綻び」というものがあるわけだが、本作の不可思議性の綻びドコロはちょっとお粗末ではないかなーと思うわけですよ。

本作は作者の長編ミステリの代表作的な作品とされているが、個人的にはエニシダ荘の方が遥かにインパクト強し。

この他の作品にも登場する貴島という探偵役の刑事・・・何となく東野作品のアノ刑事とダブるねー、ちょっとダラシない加賀って感じ。どっちが先か知らんけど。

No.1 7点 Tetchy 2007/10/14 22:20
初めて読んだ今邑作品。
可も無く不可も無く・・・と思っていたら最後の最後でああいう仕掛けがあるとは思わなかった。
まさにある先達の名作へのオマージュでした。
私はこの試みを買います。


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